正論

破局へと自らを導く英国政治 京都大学大学院教授・中西寛

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京都大学大学院の中西寛教授

京都大学大学院の中西寛教授

 ≪四分五裂して方向性を失った≫

 3月29日に予定されている英国の欧州連合(EU)離脱問題は、混迷を極めている。1月15日、英議会はメイ首相がEUと合意した離脱協定を歴史的大差で否決した。離脱協定は、来年末までの離脱移行期間を定めたものだが、アイルランド国境管理問題のために規定された「安全策」への批判が強かったためだ。

 しかしこの大敗北にもかかわらず、その直後に野党・労働党から提出された不信任案も大差で否決され、メイ首相は信任された。労働党に政権を渡したくない与党・保守党が結束したためである。この経緯が示しているのは、四分五裂して方向性を失った英国政治の姿である。