正論

教育政策と失われた経済成長 神戸大学特命教授・西村和雄

東京・霞が関の文部科学省
東京・霞が関の文部科学省

 平成30(2018)年のノーベル経済学賞は、ニューヨーク大学のポール・ローマー教授に与えられた。ローマー教授は、1986年に発表した論文で、技術の進歩が、研究開発投資や教育投資を選択することで決まり、持続的な成長が可能になるという新しい経済成長理論を提示した。

 ≪「人的資本」への投資重要

 IT(情報技術)産業に先導されたアメリカ経済が、高いGDP(国内総生産)成長率を維持しているのは、ローマー教授の理論通りのようでさえある。

 経済学では、労働者を、その知識や能力を含めて「人的資本」とよぶ。人的資本の考え方は、アダム・スミスの国富論にも登場するが、シカゴ学派の経済学者によってさらに発展させられた。