正論

江藤没後20年、令和の夏に思う 日本大学教授・先崎彰容

日本大学教授、先崎彰容氏
日本大学教授、先崎彰容氏

 酷暑が一息ついた5月29日、筆者は神奈川近代文学館にいた。現在開催中の「江藤淳展」を見るためである。今年は江藤淳没後20年の節目の年であり、筆者もいくつか江藤関連の仕事をこなしていた。最近刊行された大著『江藤淳は甦える』(新潮社)をめぐって、『週刊読書人』紙上の企画として、著者・平山周吉氏と対談したのは、その仕事の一つである。

 ≪柔らかい感性で国家論じた

 平山氏のこの著作は、江藤淳評伝の決定版である。と同時に、山川方夫や吉本隆明ら、同時代人の動きと思想を活写し、戦後史としても大変に優れたものだ。新しい実証的発見も盛りだくさんで、たとえば、慶應大生時代の江藤が自殺未遂をし、それをほのめかす文章を『なつかしい本の話』に見つけている。また愛妻家として有名な江藤の「闇」の部分、私生活にまで果敢に踏み込んだ。この大著を完成させた平山氏が協力し、企画された「江藤淳展」は迫力十分で、2時間ほどかけてようやく全てを見学することができた。