正論

「西方世界」の資格問われる韓国 東洋学園大学教授・櫻田淳

東洋学園大学教授 櫻田淳氏
東洋学園大学教授 櫻田淳氏

 日本政府は、フッ化水素などの戦略物資3品目に関して、輸出管理に際しての「韓国優遇の停止」措置を発動した。NHK世論調査によれば、この措置発動を「不適切」と評する層は9%で一割に満たない。それは、日韓確執の現状を踏まえる限り不思議でもないけれども、此度(このたび)の措置発動の意味には、認識を深める必要があろう。

 ≪『格下(かくした)』が『格上(かくうえ)』に楯突く≫

 平野聡東京大学教授の『「反日」中国の文明史』(ちくま新書)には、「中国文明の大前提は、万物をつなぐ『天理』としての上下秩序にある」と記される。清朝成立以後、この「上下秩序」意識に本家以上に凝り固まっていたのが、朝鮮王朝であった。往時の朝鮮王朝の認識では、夷狄(いてき)が築いた清朝よりも自らこそが中華の「礼」を体現する存在であり、その故にこそ、「朝鮮-中華・格上/日本-野蛮・格下」という図式は自明であった。平野教授によれば、現在では江戸期における日朝交流の一風景として語られる朝鮮通信使の往来も、「朝鮮からすれば、格上国が野蛮国に《文明》の恩恵を施す」演出に他ならなかった。明治以降、現在に至るまで、国際社会における「権勢」や「威信」において、日本が一貫して朝鮮半島の「上座」に位置してきた事実は、「日本は本来、格下であるはずなのに、現実には、そうではないのか…」という朝鮮半島独特の「恨(ハン)」の心理を沈殿させた。