正論

いまこそ憲法9条2項の削除を 埼玉大学名誉教授・長谷川三千子

埼玉大学名誉教授で評論家の長谷川三千子氏(瀧誠四郎撮影)
埼玉大学名誉教授で評論家の長谷川三千子氏(瀧誠四郎撮影)

 今回の参議院選挙の結果、参院全体でのいわゆる「改憲勢力」が3分の2を下回ることになり、安倍晋三首相も「自民党案にとらわれず」議論を進めてゆくことを提案なさった。これは大変よいことだったと思います。実は憲法9条改正についての自民党案は万全とはいえないものだったからです。

 ≪主権の意味改めて考える≫

 どこが万全でなかったのか-一番の問題点は9条2項がそっくりそのまま残されてしまったというところにあります。実際、9条2項をそのままにして自衛隊の保持を明記するのは矛盾ではないか、という批判も最初からありました。しかし、それだけの問題ではない。9条2項は、もしそれを文言通りに遵守(じゅんしゅ)したら、わが国の主権を完全に手放してしまうことになるという、怖(おそ)ろしい条文を含んでいます。国家の主権のないところに近代成文憲法は存立することができません。9条2項は日本国憲法にとっての自殺条項ともなりうるものなのです。