正論

日本の「国柄」とは何だろうか 東京大学名誉教授・平川祐弘

伊勢神宮を訪れる多くの参拝者がくぐる宇治橋前の大鳥居=伊勢市
伊勢神宮を訪れる多くの参拝者がくぐる宇治橋前の大鳥居=伊勢市

 サミュエル・ハンチントンは冷戦後の世界を「文明衝突」の時代と予言した。2001年9月11日、イスラム過激派が米国で同時多発テロを決行するに及んで、宗教文明史観は的中したかのごとくであった。このハーバード大教授は、世界を宗教文明圏に分類した。米国と欧州連合(EU)はキリスト教圏。中東、パキスタン、インドネシア、マレーシアはイスラム圏。ロシアやスラブ諸国はギリシャ正教圏。中国、韓国、台湾、シンガポールは儒教圏。インドはヒンズー圏などの単位に収まる。だが日本はうまく収まらず、儒教圏や仏教圏と異質だという。

 ≪舶来宗教というファッション

 実は誰しも日本の宗教文明の異質性を薄々(うすうす)感じている。大陸文化は古代から尊重された。だが仏道が伝わると、土着の信仰を自覚し、神道と呼び、聖徳太子は「和ヲ以テ貴シトナス」と神仏を共存させた。舶来宗教がもてはやされる様は『源氏物語』に顕著だが、キリシタンも当初は仏教の一派と錯覚され、デウスは大日如来、マリア様は観音様と同様に崇(あが)められた。その流行の様は、今日ホテルでキリスト教式の結婚式をあげるのと同じだ。ただしチャペルの挙式が多かろうとも、日本がキリスト教国となったわけではない。