日本国憲法第1条には、天皇は「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」と記される。これを「象徴天皇制」だと誰かが言い出し、いつの間にやらこの物言いが定着してしまったのだが、少々奇妙である。この条文をあえてそのように表現するのには“天皇はただの象徴に過ぎない”と言いたげな底意が感じられる。
≪「制度」は左翼の造語である≫
それに「天皇制」などごく普通の人までが平気で使っているが、これはもっと奇妙なことである。天皇制とは、天皇を「存在」としてではなく「制度」とすることにより、これを廃絶・打倒すべき対象だと考える左翼の造語である。1919年にモスクワで創設され43年まで存続した各国共産主義政党の国際的統一組織がコミンテルンである。32年のこの大会で「日本における情勢と日本共産党の任務に関するテーゼ」(32年テーゼ)が発表され、その中で日本の革命の第一任務が天皇制打倒とされたのである。ジャーナリズムや市井の人間が天皇制などという言葉を事もなげに口にするのに、私は嫌悪の情を催す。