正論・令和の8月に思う

国家の基本問題から逃げ回るな 杏林大学名誉教授・田久保忠衛

 ≪戦後を一言で表現すれば

杏林大学名誉教授、田久保忠衛氏
杏林大学名誉教授、田久保忠衛氏

 機が熟するには時間がかかる。経済大国・軽武装を正当化するために「吉田ドクトリン」などとの人を迷わせる遁辞(とんじ)をつくり出して逃げ回ってきただけの話ではないか。戦後75年を一言で表現すれば米国の庇護(ひご)の下でアジア大陸、半島の感情を傷つけまいとひたすら神経を使ってきた日本の外交・防衛政策だった。政府関係者が訳知り顔に「戦後日本がやってきたことを見てほしい」などと威張っているのを見聞きするたびに、とんでもない思い上がりか偽善だと不愉快な気がする。

 「吉田ドクトリン」と共存しているのが、外務省高官が公言したことのある「ハンディキャップ国家」論だ。日本にはどうしてもできない軍事上の分野があるので、そのハンディキャップはおカネその他のサービスで御勘弁願いたいとの思考だ。いずれも日本国憲法に根差している。しかし、アジア大陸と朝鮮半島にとって都合のいい日本の「戦後レジーム」に対して、米国から強い拒否反応が示された。日米同盟の片務性に異を唱えたのはトランプ大統領だが、これを単に大統領だけの発言と解釈してはいけない。時代は大きく曲がろうとしている。