吉野彰氏のノーベル化学賞受賞に、心からの祝意を表したい。
化学は日本の「お家芸」。特に2000年の白川英樹氏の受賞に始まる化学分野の「ノーベル賞受賞ラッシュ」には目を見張るものがある。だが、今回のメディアの反応は、これまでのもろ手を挙げて万歳、とはどうも違う。国民の間に流れる空気も熱量が低い。
≪受賞者からの悲観の声≫
もちろん、ノートパソコンやスマートフォンなど身の回りのあらゆるIT機器に搭載されているリチウムイオン電池実用化の鍵になる技術を日本人が開発したことを、誰もが誇らしく感じている。実用化に至るまでのご苦労に思いを馳(は)せ、感動する人々も多い。だが、日本人の多くが「風」が変わりつつあることを感じている。そう遠くない将来、日本がノーベル賞を取れる日がこなくなるだろう、という「黄昏(たそがれ)」感だ。