正論

年頭にあたり 後藤新平、政治指導者の「原像」 拓殖大学学事顧問・渡辺利夫

 後藤新平という一代の政治家がいる。内務省衛生局長、台湾総督府民政長官、満鉄総裁、内務大臣、外務大臣、東京市長、再度の内務大臣を経て宰相にもう少しで手が届くまでにいたる。

 しかし、後藤の長い政治人生における「青春」は台湾総督府民政長官の8年余の時代であった。総督府を辞し初代満鉄総裁に就任して以降の後藤の文章には、台湾時代には輝いていた光彩が失せ、政治的地位は着々と上昇していく一方で軍部や官僚や閣僚に対する不平不満、愚痴めいた話が次第にふえてくる。日露戦争勝利の頃から築きあげられた既得権益に高い志操の後藤の建議のことごとくが退けられてしまったのである。