正論

緊急事態への対処 明治の教訓 拓殖大学学事顧問・渡辺利夫

関西国際空港の国際線出発ロビー。新型コロナウイルス対策でチェックイン時に体温検査をする航空会社も=9日午後、関西国際空港(安元雄太撮影)
関西国際空港の国際線出発ロビー。新型コロナウイルス対策でチェックイン時に体温検査をする航空会社も=9日午後、関西国際空港(安元雄太撮影)

 新型コロナウイルスの感染がなお収まらない。日本政府の対策についてのジャーナリズムの批判も感染の拡散と同時に起き、これも収まるどころかますます厳しいものとなっている。代案を示すこともない一方的な批判で何か益するところがあるのか。わが国には国家緊急事態に関する憲法規定が不在である。

 その制約下で既存の法律を総動員し、なお残る首相権限を能(あた)う限り行使して事態に対処しようという安倍晋三氏の意思は固いのではないか。

 ≪2人のリーダー児玉と後藤≫

 ウイルスの正体がいまだ明らかになっておらず、それゆえ感染拡大のメカニズムも不鮮明な状況下において確かな代案があるとは思えない。手洗いを励行し群(クラスター)行動を控えるといった誰にも実行可能なやり方を徹底せよといった主張を繰り返すより他ない。法の不整備、検査・医療体制をこの期(ご)に嘆いてみたところで問題の解決に資することはない。