正論

感染「ゼロ」という北朝鮮の危機 モラロジー研究所教授、麗澤大学客員教授・西岡力

 3月20日、北朝鮮西部での砲撃訓練を指導した金正恩朝鮮労働党委員長(朝鮮中央通信=共同)
 3月20日、北朝鮮西部での砲撃訓練を指導した金正恩朝鮮労働党委員長(朝鮮中央通信=共同)

 「国境地帯より平壌、新義州地域に天然病が広がり状態は大変深刻です。飢えて死ぬのか、天然病にかかって感染して死ぬのか、どちらか一つの絶望状態」。北朝鮮内部からのキリスト教団体に届いた手紙の一節だ。

 ≪なぜ感染者がいないか≫

 いまだに北朝鮮は武漢ウイルス感染者は一人もいないと言い続けているが、2月から肺炎で急死する患者が多数出ている。当局の指令で死因は「インフルエンザ」「急性肺炎」などとされ、コロナ感染ではないかなどと質問すると国家保衛省の取り締まりを受ける。肺炎で死亡した場合、遺体を病院が責任を持って火葬せよとの指令が下りていたが、死者が多いので無縁故者以外は家族に火葬させることになったという。

 最近、幹部や新興富裕層は高価な軽油を負担して火葬するが庶民は土葬を続けていた。2月からは当局が肺炎死亡者の火葬を義務づけ費用はとっていない。火葬場はもともと少なく、多数の遺体が持ち込まれて混乱が起きている。平壌でも死者が出ている。党と治安機関の幹部200人がコロナで死亡したという驚くべき情報を入手した。3月上旬にドイツ、フランス、スイスなど6カ国が大使館業務を停止して職員が退避した。