正論

感染症と共生する知恵の蓄積を 元文化庁長官・近藤誠一

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、マスク姿で通勤・通学するする女性たち=JR大阪駅前
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、マスク姿で通勤・通学するする女性たち=JR大阪駅前

 新型コロナウイルスは我々に、立ち止まって地球と文明について考える機会を与えてくれた。

 地球は生態系の働きにより生命体を維持してきた。中心をなすのが食物連鎖と物質循環である。生物は環境に適合しつつ、種ごと適度な個体数を調整し食物連鎖に組み込まれることで相互に支え合い生命を保ってきた。生態系には均衡を維持しようとする力が働く。

 また環境から植物に取り込まれた物質が食物連鎖で動物たちに移動し、やがて元の環境に戻ることで生命の循環が果たされてきた。ここで大きな役割を果たすのがウイルスなどの微生物である。単に腐敗や分解という機能によってだけではない。父親の遺伝形質をもつ哺乳類の胎児を母体の拒絶反応から守る役割も果たしている。

 ≪制御できるとの思い込み≫

 他方20万年ほど前に生まれたホモ・サピエンスは、この地球世界と異なる独自の世界を創った。国家という概念を創り出し、また農業革命によって食料の増産を可能にして富の増大をもたらした。