正論

欧米に広がる抗議デモを考える 名古屋市立大学教授・松本佐保

英ブリストルで、引き倒されるエドワード・コルストンの銅像=7日(Keir・Gravil/ロイター)
英ブリストルで、引き倒されるエドワード・コルストンの銅像=7日(Keir・Gravil/ロイター)

 米ミネアポリス近郊で5月下旬、黒人のジョージ・フロイドさんが白人警察官に首を押さえ付けられ死亡した事件を発端に、全米や欧州でも暴動や反人種差別デモが広がった。SNS(会員制交流サイト)などでは著名人らが人種差別撤廃をキーワードに書き込み、若い世代にも世界各地で人種差別に反対する動きが拡大した。

 米国では黒人差別の歴史が建国以来ある。1960年代、キング牧師による公民権運動に代表される全米黒人地位向上協会による活動も行われてきたが、いまだ差別は存在し、警官による黒人への虐待行為が度々問題になる。

 トランプ大統領も警察改革の大統領令に署名するなど、懐柔策に乗り出した。

 ≪人種問題の複雑さ理解を≫

 筆者は米国の人種問題の専門家ではないが、戦前の北米や英連邦での日系等アジア系人種問題についての論文、またトランプ政権下での宗教・人種問題の論文を書いている。メディアの多くは白人対黒人(プラス有色人種)と書きがちだが、人種問題は複雑でアジア系やラティーノ(ヒスパニック)等を入れないと理解できない。