正論

「内モンゴル人権法」を制定せよ 文化人類学者、静岡大学教授・楊海英

トランプ米大統領=6月25日、ウィスコンシン州(AP)
トランプ米大統領=6月25日、ウィスコンシン州(AP)

 米国のトランプ大統領は6月17日、ウイグル人権法案に署名した。議会の超党派の支持を得ていた同法の成立により、ウイグル人弾圧に関与した中国当局者に制裁を科すことが可能となった。中国は新疆ウイグル自治区で100万人以上のイスラム教徒を強制収容所に閉じ込め、ウイグル語での教育を禁止し、抵抗した者を殺害するなど厳しい弾圧を続けてきた。

 ≪文化的ジェノサイド許すな≫

 新疆の陰に隠れたかたちだが、中国の内モンゴル自治区では苛烈な文化的ジェノサイドが断行されている。内モンゴルでは今秋から中学校以上の教育機関ではモンゴル語による理数系の授業がすべて停止を命じられ、代わりに中国語の使用が決定された。小学校でも3年生からモンゴル語だけでなく、中国語と英語の併用は以前から導入されてきたが、実質上は中国語一辺倒である。中国語をマスターすれば、将来の進学と就職に有利だと政府は公的なメディアを動員して宣伝する。同時に裏では「モンゴル語は立ち遅れた少数者の言語で、近代化に不向きだ」と幹部たちは説得して回っている。