正論

露改憲と平和条約締結の「疑似餌」 青学・新潟県立大学名誉教授 袴田茂樹

3日、モスクワ郊外の公邸でテレビ会議に出席するロシアのプーチン大統領(ロシア大統領府提供・タス=共同)
3日、モスクワ郊外の公邸でテレビ会議に出席するロシアのプーチン大統領(ロシア大統領府提供・タス=共同)

  ロシアは改憲で、プーチン大統領の長期政権を可能とし、愛国主義高揚策も強めた。新憲法で日本に直接関わるのは「領土の割譲禁止」と「国境画定作業」の条文である。今年2月、大統領は改憲作業班との会見の際、以下の修正案を述べた。「領土の割譲に関して私は割譲禁止提案に完全に同意する。ただ一つ問題は、それが、外務省が今後行う国境画定の作業を妨げない表現にすることだ。そのような作業は多くの国々と、特に旧ソ連の国々と行われている」

 ≪歴史の独断的歪曲許すな≫

 では北方領土問題の解決は、露領土の割譲なのか、それとも国境画定なのか。サハリン州は領土割譲禁止に該当と理解して、早速国後島に改憲記念碑を建てた。一方国境画定は、露側が国境の未画定を認めることだ。実は大統領自身、2005年までは4島の帰属が決まっていない、すなわち国境が決まっていないことを認めていた。したがって彼は日本首相と署名したイルクーツク声明(01年)や日露行動計画(03年)で、「4島の帰属問題を解決して平和条約を締結する」とした東京宣言(1993年)に同意した。

 しかし、2005年9月に突然彼は「第二次世界大戦の結果南クリル(北方四島)は露領となり、国際法的にも承認済みだ。これについて議論はしない」と強硬に宣言した。明らかに歴史の独断的な歪曲(わいきょく)だ。露側は、東京宣言は両国国会の批准を経ていないので法的拘束力がないと言い逃れる。しかし大統領は同宣言が元々批准を要しない合意と認めた上で、重要な合意だと署名したはずだ。ラブロフ外相が今日も「日本が第二次世界大戦の結果を認めることが、平和条約交渉の前提」と言うのも、大統領の言の忠実な復唱だ。大統領自身、一切の前提条件なしの(領土問題と関係ない)平和条約締結を安倍晋三首相に提案した。