正論

利用者本位でデジタル化進めよ 政策研究大学院大学特別教授・大田弘子

政策研究大学院大学特別教授・大田弘子さん
政策研究大学院大学特別教授・大田弘子さん

 ≪新型コロナで問題が増幅≫

 「この数年で思い切った変革が実行できるかどうかが、日本の未来を左右する」と、今年の骨太方針の冒頭に書かれている。

 まったく同感である。いま日本が直面している問題は、新型コロナウイルスによるものだけではない。生産性の低さ、デジタル化の遅れ、労働市場の硬直さなど、コロナ以前から抱えていた構造的問題が増幅されて押し寄せてきている。したがって、この大きな危機を決して無駄にしてはいけない。逆に危機をテコにすれば、一気に変革することだってできる。

 しかし、その覚悟はできているのだろうか。今回の骨太方針はデジタル化に力点を置き、とくに行政のデジタル化を「一丁目一番地の最優先政策課題」とする。コロナ禍で如実にあらわれたお粗末なデジタル化の現状をみれば、このテーマ設定は妥当である。問題は、そのために何をするかだ。民間専門家を入れた「司令塔機能」を構築し、「政府全体に横串」を刺す取り組みを行うといったことは、これまで何度も耳にしてきた。今回は何が違うのだろう。