正論

指導者に欠くべからざる「資質」 社会学者・関西大学東京センター長・竹内洋

社会学者 関西大学東京センター長 竹内洋
社会学者 関西大学東京センター長 竹内洋

 今年2月の東京大学入試(文系国語)に教育格差の問題がとりあげられた。問題文は学校教育を媒介に階層が再生産される事に思いをはせなければならないという文から始まる。不平等のもとになる教育格差は家庭の経済的条件や文化的条件によるところが大きい。にもかかわらず、当人の才能や努力不足という自己責任によると不平等正当化の論理になってしまうからくりを説いたものである。

 ≪東大入試で問う「教育格差」≫

 もっともで大事な指摘であるが敗戦直後の時代を生きてきた私のような高齢者には、このような内容の文章が東大入試に選ばれたことのほうに少し驚いた。近年の東大受験生は私立の名門中高一貫校の出身が多く、家庭の所得も高いから、経済資本や文化資本が乏しい家庭出身者のハンディキャップが見えにくいからではないだろうか。そうだからこそ受験生に教育格差などの不平等問題を考えてほしいと出題されたのだろう。