正論

戦後75年に思う 祖国の「英雄」としての「英霊」 文芸批評家・新保祐司

昨年8月15日の全国戦没者追悼式に参列された天皇、皇后両陛下=東京・日本武道館
昨年8月15日の全国戦没者追悼式に参列された天皇、皇后両陛下=東京・日本武道館

 ≪悠久の歴史を意識する≫

 今年の8月15日は、新型コロナウイルス禍の下で迎えることになった。感染拡大予防のために、全国戦没者追悼式も規模を縮小して行われるのはやむを得ないことである。しかし、いうまでもなく、これは規模の縮小であって、追悼の質の深さは何ら変わらないものでなければならない。

 今、日本が、新型コロナウイルス禍の対応で、「現在」に意識が集中しているのはある意味で当然である。しかし、この国難の中にあっても、いや国難の中にあるが故に、歴史の悲劇の回想を深く抱き続けていることが国家の品格と日本人の精神の格調を保持するということを忘れてはならない。特に、大東亜戦争の「英霊」に思いを致すことは、この国難を単に「現在」のために耐えるのではなく、日本の悠久の歴史を意識して克服するためにも必要である。