正論

RCEPのめでたさは中ぐらい 双日総合研究所チーフエコノミスト・吉崎達彦

RCEPの首脳会合がテレビ会議方式で開かれ、協定の署名式に出席した菅首相(左)と梶山経産相=11月15日午後、首相官邸(内閣広報室提供)
RCEPの首脳会合がテレビ会議方式で開かれ、協定の署名式に出席した菅首相(左)と梶山経産相=11月15日午後、首相官邸(内閣広報室提供)

 今となっては笑い話だが、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉をやっていた頃は途方もない言説が飛び交った。「米国の多国籍企業が日本の富を奪うための陰謀」「TPP参加で国民皆保険制が崩壊する」-こんなことを真顔で言う人に、どれだけ会ったことか。

 ≪またも飛び交う奇妙な論議≫

 今回、RCEP(地域的な包括的経済連携)というFTA(自由貿易協定)が成立したら、またしても奇妙な議論が飛び交っている。「中国が主導する赤い経済圏」「インドの不参加は日本外交の敗北」だとか。FTAはどうして極端な議論を招いてしまうのか。やれやれとは思うが、商社エコノミストとしての私見を述べたい。

 RCEPとは日中韓とASEAN10カ国、それに豪州とニュージーランド(NZ)からなる世界最大の自由貿易圏である。経済規模では世界の3分の1を占めるが、中身はそれほど威張れた内容ではない。紛争解決、競争、サービス、投資などのルールは弱いし、環境や労働に関する規定もない。「質の高いFTA」を目指すTPPに比べれば、めでたさも中ぐらいなりが正直なところである。