正論

年頭にあたり 日本における神道の行方考える 東京大学名誉教授・平川祐弘

平川祐弘氏
平川祐弘氏

 ≪元日や一系の天子不二の山≫

 日本における神道の行方について考えたい。大和島根が自然に豊かな環境であるかぎり、末永く続く、と私はひそかに考えている。神道のこころは、神道学の知識などない人々の間にも、漠然と胸のうちに秘められ、本人も知らぬ間にいきいきと息づいている。

 そんな肯定的な見方に対し、否定的な見方を口にする人もいる。「近代の神道は、ナチズムと同様に危険である」。米国人が口にしたそんな過激な見方をグルー元駐日米大使がたしなめると、一九四四年二月二日付『ニューヨーク・タイムズ』の社説でグルー氏は逆に非難された。戦時中の米国でまかり通った否定的な見方は、敗戦後、日本で流布された。