
衛生は国家の基本であり、人間の死生を分かつものである。人生の究極的な目的は生理的円満を手にすることにある。生理的円満を可能にするものがすなわち衛生であり、そもそも国家存立の理由はこれが「衛生団体」であるからだと後藤新平はいう。
≪個々を超えた「公共ノ力」≫
後藤によれば、人間とは生理的円満を得ようと生を紡ぐ存在である。しかし、この円満は個々の人間の力では充足できない。個々の人間の力を超えた、個々の人間を生存させる「公共ノ力」、公共的秩序の形成力が不可欠だと後藤は述べる。公共的秩序の形成力こそが「最上権」であり、これをもつものが「衛生団体」、つまりは国家なのだ、というのが後藤の主張である。後藤新平の国家起源説でもある。