正論

トランプ氏退陣と保守思想の変容 京都大学名誉教授・佐伯啓思

米フロリダ州の空港に到着したトランプ前大統領=1月20日(ロイター)
米フロリダ州の空港に到着したトランプ前大統領=1月20日(ロイター)

 ≪4年前の「登場」の意味≫

 アメリカ大統領がトランプ氏からバイデン氏に代わったことで、一見したところ、いわゆる保守からリベラルへと思想の軸が移動するかのように見えるが、事態はそれほど簡単ではない。そもそも4年前のトランプ大統領の登場とは、思想的に見ればどのような意味を持っていたのであろうか。良く言えば実に個性的、悪く言えば何ともハチャメチャな人物を大統領に押し上げたその思想的な背景は何だったのだろうか。

 そのような疑問は4年前から浮かんでは消えていたのだが、最近、井上弘貴氏(神戸大准教授)の『アメリカ保守主義の思想史』を読んで、私が断片的に持っていた知識がひとつの線としてつながり多くのことを学んだ。同書も参考にしながら、保守思想の今日的意味について考えてみたい。