正論

バイデン政権の対中政策に思う 防衛大学校教授・神谷万丈

大統領専用機に乗り込むバイデン米大統領=2月15日、メリーランド州ヘイガーズタウン(ロイター)
大統領専用機に乗り込むバイデン米大統領=2月15日、メリーランド州ヘイガーズタウン(ロイター)

 バイデン米政権の発足から3週間余。その対中政策の初動は、日本を安心させるものだった。

 新大統領は選挙戦中から、中国には是々非々で臨むとしていた。国際秩序、安全保障、経済、人権等に関する中国の挑戦には立ち向かい、自由・民主主義的な価値を共有する諸国との連携を強化するが、トランプ時代のような全面対決は避け、気候変動等中国の力が必要な分野では協力も模索するとの路線だ。経済的に右肩上がりの世界第2の大国の影響力を考慮すれば、うなずける態度ではある。

 ≪容易でない対抗と協調≫

 だが、中国への対抗と協調のバランスをとるのは容易ではない。対中協力の望ましさが強調され過ぎれば足もとにつけこまれ、中国に対抗すべき時にも政策の切っ先が鈍ってしまうのではないか。日本の外交専門家にはそうした不安も少なくなかった。大統領就任前のバイデン氏が、安倍・トランプ時代の対中対抗姿勢を象徴した「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」よりも「安全で繁栄したインド太平洋」という表現を好むようにみえたことも、自由でも開かれてもいない中国への忖度(そんたく)ではないかとの疑念を惹起(じゃっき)した。