正論

震災10年、後世に手渡す言葉は 日本大学教授・先崎彰容

先崎彰容 日本大学教授
先崎彰容 日本大学教授

 あの日から5年ほどの間、「あの出来事」が念頭を離れることはなかった。具体的な日常の片隅に、常に棘(とげ)のように存在し、時折、小さな痛みを感じさせる。決して忘れることを許さない、それが福島県いわき市で経験した「私の東日本大震災」である。

 ≪福島・いわきの経験から≫

 例えば、被災翌年の大学入試センター試験は、地元の強い意向もあり、原発立地地域至近の浜通りの高校で予定通り行われた。南相馬市原町地区は、いわき市から行く場合、直線的に北上するのは不可能である。震災以降、連日ニュース映像で流された放射線量の強弱をあらわす同心円状を迂回(うかい)するように、私たちは4時間半、バスに揺られて現地高校に足を運んだ。