正論

「震えざるもの」の探求へ向かう 文芸批評家・新保祐司

文芸批評家 新保祐司氏
文芸批評家 新保祐司氏

≪大震災から10年を経て≫

 東日本大震災の発生から10年経(た)った。平成23年3月11日、多くの日本人は、日常生活が突然断ち切られて人間が生きていることの根底にある何かを垣間見たような瞬間に襲われた。内村鑑三は、関東大震災のとき、震える世界の中で、震えざるものを求めよといったが、その「震えざるもの」について思いを巡らした人も少なくあるまい。

 私も、その衝撃の中で大震災とそれに伴う原発事故についてどうとらえたらいいのかを必死に考えようとしたことを覚えている。

 「正論」欄には大震災後、何回か執筆したが、それらを読み返してみた。1回目は、大震災発生から1カ月も経たないうちに書いたもので、見出しは「日本が変わるべき方向を示した」であった。この大震災を転機として日本が変わらなければならないという強い危機感とともに「戦後レジーム」からの脱却を願い、この文章を「事の本質としては、近代以降の日本の文明の在り方が問われているのであり、日本の文明は21世紀にどのようなものになるべきかという重い問題を日本人は突きつけられたということである」と結んだ。