正論

震災、今も続く風評被害の苦悩 作家・ジャーナリスト 門田隆将

東京電力福島第1原子力発電所=2020年12月8日、福島県大熊町(本社ヘリから、納冨康撮影)
東京電力福島第1原子力発電所=2020年12月8日、福島県大熊町(本社ヘリから、納冨康撮影)

 ≪「家族と故郷を守り抜く」≫

 多くの人生と、残された者の希望を無惨に奪った東日本大震災から10年。「あっという間だった」という人もいれば「遠い昔のような気がする」という人もいる。

 「助かったのは偶然としか思えない」あるいは「あの時“逃げよう”と声をかけてくれなかったら自分はこの世にいなかった」と、今も東北3県の太平洋岸を中心に生々しい話を伺う機会は多い。

 私は2011(平成23)年3月11日という日本の歴史に刻み込まれる日から福島第一原発事故を中心に特に福島のことをウオッチしてきた。翌年に原発内部の闘いを描いた『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発』を上梓(じょうし)したことも理由の一つだろう。