外国人の医療に関する情報を提供しているNPO法人「AMDA国際医療情報センター」(東京都新宿区・小林米幸理事長)の電話が鳴った。東アジア出身の在留外国人男性が、焦ったような口調でこう話した。
「保険証を貸した人が入院してしまい、保険証を返してくれない。でも自分が病気になり、入院する必要がある。どうすればよいのか」
職員が「それは犯罪ですよ」と伝えると、男性は「そうですか」と言って電話を切った。平成26年には、神戸市で不法滞在のアジア人女性が妹の国民健康保険証を使い、2年以上にわたり総額1000万円以上のHIV(エイズウイルス)治療を受けていたことが発覚した。
医療費は国保などに加入すれば原則3割負担となり、非加入なら全額自己負担となる。保険証の「使い回し」は古くからあり、外国人に限った問題ではない。ただ、外国人は現行の技能実習制度でも29年だけで約7000人が失踪している。保険証は写真添付がなく、自分で現住所を書き込めるものもあり、失踪者が仲間内で「使い回し」をすることも想定される。