病巣 ゴーン事件(上)

難航した中東捜査 「父は認知症」シラ切る代理店 還流報告に「ありがとう」

 日産自動車のビジネスジェット機で羽田空港に到着した前会長、カルロス・ゴーン(65)が逮捕され、世界に衝撃を与えた「ゴーン・ショック」から10日余りたった昨年12月頭。同じビジネスジェット機が、日産の関係者と弁護士ら数人を乗せ、ひそかに日本を飛び立った。

 向かったのは中東オマーンの首都、マスカット。ペルシャ湾沿いに続く褐色の大地に降り立ったスーツ姿の男たちは、現地の日産販売代理店、スハイル・バハワン自動車(SBA)をアポイントなしで訪問した。

 「CEOリザーブという予備費から中東各国へ不透明な資金の流れがある」

 東京地検特捜部が「中東ルート」へ捜査の矛先を向けたのは最初の逮捕の直前だった。ゴーンはSBAオーナーのスハイル・バハワンから「カルロス」とファーストネームで呼ばれるほどの蜜月関係で、SBAの経理担当幹部とも親しかった。そのSBAに日産から計約35億円が流れていた。

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