昭和天皇の87年

進撃する日本軍 中国軍司令官がとった驚きの行動とは…

画=井田智康
画=井田智康

第138回 南京への道(2)

 「崩れるような敗退で、数日間で精鋭を喪失し、軍規も大きく乱れた。もし敵が大場を占領した際に、計画的に撤退したら、数十万の大軍が総崩れとなることは避けられたはずだ」

 1937(昭和12)年11月5日、日本の第10軍が上海南方に上陸し、それまで奮闘していた中国軍が一斉に退却した時のことを、中国側の将軍の一人がこう振り返る。

 上海で日本軍を食い止め、長期戦に持ち込んで欧米列国の介入を招こうとした蒋介石の戦略は、崩壊したといえるだろう。上海の後方には堅固な防御陣地があり、そこを拠点に持久戦を続けることもできたが、退却に転じた中国軍将兵の制御はきかず、あっさり放棄して遁走(とんそう)した。蒋介石は日記に、「前後を忘れて、段取りなしに、雪崩を打って敗走するなんて、悲しい極まりだ」とつづっている。

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