
第154回 大草原の激戦(2)
1939(昭和14)年8月20日、満州とモンゴルの国境地帯、ノモンハンの大地が揺れた。無数の砲弾が突き刺さり、砂塵を巻き上げ、土石の雨を降らせた。ソ連第一集団軍司令官、ゲオルギー・ジューコフ(※1)が指揮をとる、一大攻勢がはじまったのだ。
圧倒的火力を有する5万7千人のソ連軍が、砲弾の欠乏しかけた2万人弱の関東軍に襲いかかる。同日、早くも関東軍陣地の最左翼を守る満州国軍部隊が突破され、ソ連の装甲車部隊が背後に深く進入。不意を突かれた主力の関東軍第23師団は、いきなり全滅の危機に直面した。
空からは約300機のソ連機が猛爆撃を繰り返す。ノモンハン事件の初期、空中戦は日本機の圧勝だったが、ジューコフはスペイン内戦を戦ったベテランパイロットを続々と投入、制空権を奪っていた。