昭和天皇の87年

短命に終わった「重臣の切り札」 次期首相はこの人しかいないのか

画=千葉 真
画=千葉 真

第158回 内憂外患

 西ひかし むつみかはして 栄ゆかむ 世をこそいのれ としのはしめに(※1)

 阿部信行内閣の総辞職からほぼ半月後の昭和15年1月29日、皇居の歌会始で詠まれた昭和天皇の御製である。欧州の戦雲がアジアにも伸びようとする中、平和を祈る心が、1字1句に込められている。

 次期首相、米内光政は昭和12~14年の海相時代、英仏を敵に回す日独伊三国同盟に体を張って反対した硬骨漢だ。昭和天皇の期待は大きかっただろう。ただし、陸軍が協力的でなければ内閣はもたない。大命降下の日、昭和天皇は陸相の畑俊六を呼んで聞いた。

 「陸軍は新しい内閣に対してどういふ風な様子か」

 「陸軍は纏(まと)まつて、新しい内閣に随(つ)いて参ります」

 「それは結構だ。協力しろ」

 米内は、阿部内閣がとった米英重視の外交路線を引き継ぎ、外相に有田八郎を迎えた。近衛文麿内閣の後半以降、ともに閣僚として三国同盟を阻止してきた盟友である。だが、欧州の戦局が、米内に腕をふるうことを許さなかった。

昭和天皇の87年