
第169回 開戦か外交か(1)
御前会議-。主要閣僚や軍部首脳らが出席し、天皇臨席のもとで開かれる最高会議である。ここで日本の命運をかけた国策が決まるが、法制上の規定はなく、天皇自身が発言することはほとんどない(※1)。決定事項について、天皇に責任が及ぶのを防ぐためだ。
ただし例外がふたつある。ひとつは本連載の序章(第1~24回)で詳述した昭和20年8月の御前会議。このとき昭和天皇は首相の求めに応じる形で、厳かに終戦の聖断を下した。
もうひとつ、昭和天皇が自らの意思で発言し、戦前の昭和史におけるクライマックスとなったのが、日米開戦か交渉継続かをめぐる16年9月6日の御前会議だ。