昭和天皇の87年

「天子様に理屈を述べるでない」 主戦論を捨てた東条英機だが…

画=筑紫直弘
画=筑紫直弘

第172回 白紙還元の御諚(2)

 昭和16年10月17日に参内した陸相の東条英機は、まさか自分に大命降下があるとは思っていなかった。陸軍省軍務局でも、参内せよとの昭和天皇の「御召し」は中国からの撤兵に同意しないことへの「御叱り」だろうと思い、駐兵の必要性を記した上奏文を用意したほどだ。

 もっとも、それを読んだ東条は「天子様がコウだといわれるならば自分はそれまでである。ハイといって引き退ります」と最敬礼の真似をし、「天子様に理屈を述べるでない」と上奏文をはねつけた。昭和天皇に対する東条の、忠節ぶりがうかがえよう。