
第182回 運命の海戦(4)
先の大戦における主要な戦闘を振り返るとき、陸軍からは名将と呼べる司令官が何人か出たが、海軍からは意外に少ない。だが、この人は文句なしに名将であろう。
第2航空戦隊司令官、山口多聞である。
海軍兵学校に最年少で入学して次席で卒業し、海軍大学校は首席で卒業した英才中の英才だ。しかもガリ勉タイプではなく、部下から「人殺し多聞丸」とあだ名されるほどの闘将であった。
昭和17年6月4日のミッドウェー海戦。空母飛龍の艦橋に立つ山口は、切歯扼腕(せっしやくわん)したに違いない。頭上を米軍機が飛び交い、波状的に雷撃、爆撃をしかけてくるのに、わが方の攻撃機は1機も飛び立てないでいたからだ。