第186回 暗転(4)
「ドイツと日本の戦力を完全に除去しないかぎり、世界に平和が訪れることはない」「戦力の除去というのは、無条件降伏を意味する」
1943(昭和18)年1月24日、モロッコのカサブランカで行われた米英首脳会談後の記者会見で、ルーズベルトが発した声明である。ルーズベルトは記者団に、こうも言った。
「カサブランカ会談を無条件降伏会談と呼んでほしい」
会見に同席したチャーチルは仰天した。そこまで発表するとは思わなかったからだ。日独に公然と「無条件降伏」を突きつければ、死に物狂いで抵抗され、膨大な犠牲と破壊を伴う戦争がますます長引くに違いない。随員の回想によれば、チャーチルは内心、怒り心頭に発していたという。