
第188回 圧政(2)
昭和19年3月14日《夜、御文庫に(高松宮)宣仁親王参殿につき、皇后と共に文化映画「転換工場」等を御覧になる。終わって、茶菓を共にされる》(32巻42~43頁)
昭和天皇実録の記述はこれだけだが、内大臣の木戸幸一がつづった日記によればこの夜、宣仁親王は昭和天皇に重大な提案をした。東条英機内閣を退陣させ、元第10軍司令官の柳川平助を首相に、第2方面軍司令官の阿南惟幾を陸相にしたらどうかと話したのだ。
反東条派の急先鋒だった中野正剛が憲兵隊に拘束され、割腹自殺を遂げてからおよそ5カ月。内閣打倒の動きは、皇族にまで及んでいた。