昭和天皇の87年

衝撃の近衛上奏文 「最悪の事態は共産革命なり」

画=井田智康
画=井田智康

第192回 天機奉伺(2)

 昭和20年2月14日《(昭和天皇は)午前十時二十分より一時間にわたり、御文庫において元内閣総理大臣公爵近衛文麿に謁を賜う。近衛は自ら起草し、元駐英大使吉田茂と協議の上完成した上奏文に基づき奏上する》(昭和天皇実録33巻31頁)

 昭和天皇が「和平の第一着手」として行った重臣らへの意見聴取。誰もが早期終戦を口に出せない中で、近衛の上奏文は異彩を放った。

 冒頭、「戦局ノ見透シニツキ考フルニ、最悪ナル事態ハ遺憾ナガラ最早必至ナリ」と敗戦を明記。その上で、最も憂慮すべき事態は敗戦よりも「共産革命ナリ」と言い切ったのだ。理由として、ソ連が戦争に乗じ、欧州で共産主義を浸透させていること、日本でも国民生活の窮乏により、共産革命の条件が整いつつあることを指摘し、こう訴えた。

 「勝利ノ見込ナキ戦争ヲ之以上継続スルコトハ全ク共産党ノ手ニ乗ルモノト云フベク、従ツテ国体護持ノ立場ヨリスレバ、一日モ速ニ戦争終結ノ方途ヲ講ズベキモノナリト確信ス」