絞め落としても続いた制御不能の体罰 柔道部顧問の逸脱

 「指導」と「体罰」。何度処分を受けても、教師でいるうちは、その区別がつけられなかった。兵庫県宝塚市立長尾中学校で昨年9月、顧問を務めていた柔道部の部員2人に骨折などの重軽傷を負わせたとして、傷害罪に問われた元教諭の上野宝博(たかひろ)被告(50)=懲戒免職。柔道技で失神させたうえ、平手打ちで起こしてまで技をかけるという壮絶な暴力に及びながら、今年1月21日の公判で被告の口から語られたのは、「指導」という言葉だった。

「バトルするぞ」

 神戸地裁の101号法廷に姿を見せた上野被告。スーツ姿でもがっちりとした体格であることが分かるが、丸めた背中は少し弱々しく見えた。

 ヤバすぎる暴力教師-。ネットで言われるような人物像と、少なくとも法廷の外見は一致しない。証人として出廷した妻は「事件を聞いて驚いた。普段はにこにこして温厚な優しい人。想像できず信じられない」と語り、「離婚は考えていない。夫は優しい人」と繰り返した。

 法廷では、そんな上野被告が豹変(ひょうへん)する様子が検察側によって明らかにされていく。きっかけは1個のアイスクリームだった。