陶器や木工家具などの日用品の中に美を見いだし、その企画・デザインから販売までを統括する「民芸プロデューサー」を自任した医師、吉田璋也(しょうや)=1898~1972年。その吉田が設計した鳥取市の旧医院などが国の登録文化財に内定した。白壁土蔵造りの外観でありながら建物内はバロック風階段や東洋風、スペイン風の建具など、世界の建築文化が融合した独特の造り。医院の向かいには民芸の展示施設で、すでに登録文化財となっている鳥取民芸美術館もあり、吉田が造り上げた「美の王国」一帯が国の認定を受けることになる。
世界の建築文化が融合
「吉田璋也は道路を隔てた場所にあった仮診療所から1日に何度も建築中の医院に出向き、細部にわたって職人に指示をした」。建築が専門で吉田の業績に詳しい同市文化財団理事長の木谷清人さんは、吉田の建築にかけた情熱を語る。耳鼻咽喉科の医師だった吉田が医院と自宅をJR鳥取駅にほど近い同市瓦町に新築したのは昭和27年。市の中心部約160ヘクタール、5200戸以上を焼いた同年4月の鳥取大火で元の医院が焼失したことから夏ごろに着工し、その年のうちに完成したという。
木造2階建てながら隣接する民家より屋根がかなり高いのは、床下階と屋根裏階を備えた実質4階建ての造りだからだ。京町家のような虫籠(むしこ)窓に白く塗った連子格子、しっくいの壁に切妻の屋根は純和風。しかし、建物内に足を踏み入れると雰囲気は一変する。