さまよう彼女たち

コロナ禍で死を選んだ 今は誰かを救いたい

自殺未遂の経験から、カウンセラーと利用者を結ぶサービスを始めた橋本なずなさん=大阪府守口市(南雲都撮影)
自殺未遂の経験から、カウンセラーと利用者を結ぶサービスを始めた橋本なずなさん=大阪府守口市(南雲都撮影)

 収束の兆しが見えない新型コロナウイルス禍で社会全体が疲弊する中、女性を取り巻く環境の厳しさが露呈している。失業、生活困窮、DV被害、そして自殺-。さまざまなデータから見えるのは、厳しい状況に追い込まれた女性が増えているという現実だ。

 昨年度平均の非正規労働者数は、男性が前年比32万人減だったのに対し、女性は倍以上の65万人も減った。また、昨年自ら命を絶った女性は前年度比935人増の7026人。一方、男性は23人減だった。これまで、不況時の自殺は中高年男性に多いという傾向だったが、状況は一変している。

 政府の有識者研究会は4月末にまとめた報告書で、コロナ禍は女性にとりわけ大きな影響を与えていると指摘。自殺者対策やDV相談など、緊急性の高い施策を早急に進める方針だ。

 今、コロナ禍で日本社会の構造的な問題が改めて浮き彫りになっている。厳しい状況に追い込まれる人々をどう守り、支え、ともに生きていくか。さまざまな状況にある女性の実情を取り上げ、解決策を探ります。

■助かった命 憎かった

 帰宅した恋人を見て、突発的にベルトをベランダの物干しざおにかけて頭を入れ、台から足を外した。

 昨年7月、大阪府守口市の自宅で自殺を図った橋本なずなさん(21)。搬送先の病院で意識が戻ったとき、体は拘束バンドで固定されていた。「数分遅ければ命を落としていた」。医師にそう言われても、助かった命が憎かった。

 気分が高揚する「躁(そう)」と、落ち込む「鬱(うつ)」状態を繰り返す双極性障害(躁鬱病)を患う。一時回復に向かったが、新型コロナによる緊急事態宣言発令中の昨年5月、症状が悪化した。勤務先のスポーツジムが業務停止となり、月収は数万円程度に。恋人や母親の経済的援助を受けて食いつなぐ日々。「私さえいなくなれば、みんな楽になるのに」と自宅に引きこもり、「社会から必要とされていない」と感じていた。

 トラウマもよみがえった。小学5年生のとき、母親の交際相手から受けた性的虐待の記憶だ。思い出すたび、過呼吸と吐き気に襲われた。

■「別人格の自分」の存在

 孤独感の中、ついに複数の人格が現れる解離性障害も発症した。日が沈み、自宅に一人でいると、「攻撃的でわがままを爆発させたような人格」が現れる。その間の記憶はほぼないが、意識が戻れば壁に深く入った傷や割れた皿といった形跡に、別人格の自分の存在を感じてきた。