産経抄産経抄 記事一覧会員向け記事

  •  雪の上を人が歩くにつれて足跡が増える。セル画全盛期のアニメ作品では、骨の折れる表現だった。1枚のセルに必要な数の足跡を描き、カメラを回す。一コマごとに足跡を一つずつ手作業で消してゆき、最後にフィルム…

  •  もっともらしい顔で、とんでもないことを言う人がいる。集団的自衛権の行使を限定容認した安全保障関連法の成立直後の平成27年9月のことである。朝日新聞で、著名な憲法学者の長谷部恭男氏が同法を批判し、憲法…

  •  来年公開が予定されている英人気スパイ映画「007」シリーズ最新作では、黒人の女優がコードネーム「007」のスパイを演じると報道されて話題になっている。もうひとつ注目の的が、主人公のジェームズ・ボンド…

  •  宮沢賢治の有名な詩『雨ニモマケズ』は、遺品のトランクにあった手帳に鉛筆書きされていた。その一節、「ヒドリノトキハ ナミダヲナガシ」の解釈をめぐって、研究者の間で今も論争が続いている。

  •  昨年8月末、英国とフランスの間で「ホタテ戦争」が勃発した。仏北部のノルマンディー地方沖で、約40隻のフランス漁船が5隻の英国漁船を取り囲み、操業を妨害した。けが人は出なかったが、石を投げ合い、船体を…

  •  きょうは「海の日」。平成7年に制定され、途中から3連休にするため7月の第3月曜日になった。そのためか、この日の由来を忘れてしまった不心得者も論説委員室にいる。

  •  梅雨明けのコラムにふさわしい、とメモしておいた五行歌がある。〈穴蝉の/背を割って/森の/賑(にぎ)わいが/生まれた〉浜田美智子(草壁焔太編『五行歌の事典』から)。列島の南側に前線が居座る天気図を見て…

  •  社会的弱者や人権派、平和主義者の装いで身を守りつつ、実際は暴力で自分たちの主義主張を通そうとするほど、卑怯(ひきょう)な振る舞いはない。触らぬ神にたたりなしとばかりに、見て見ぬふりをするのも同じこと…

  •  イラン・イラク戦争は、1980年から8年続き、100万人を超える死者が出た。途中の84年からは、いわゆるタンカー戦争が始まる。両国が、ペルシャ湾を航行するタンカーなどに、無差別ともいえる攻撃を仕掛け…

  •  イラン革命前夜の1978年12月、混乱の最中にあったテヘランから、最悪の知らせが届いた。米コンピューター・ソフト会社EDSの幹部2人が逮捕されたというのだ。

  •  太平洋の孤島、イースター島のモアイ像は、いまだ大きな謎に包まれている。ノルウェーの人類学者、ハイエルダールは、南米の巨石文化とのつながりに注目した。

  •  97年前の今日、60歳で世を去った文豪・森鴎外は、娘を溺愛していた。長女の茉莉(まり)が幼い頃、書斎に入っていくと、仕事を中断して膝の上に乗せた。「お茉莉は上等、目も上等、鼻も上等、頬っぺも上等、性…

  •  大坂なおみ選手のまさかの初戦敗退は残念だったが、錦織圭選手は絶好調である。テニスのウィンブルドン選手権で、1セットも落とさないまま16強入りを決めた。トップ選手と当たる後半戦が、ますます楽しみである…

  •  学業であれ事業であれ、命懸けで立てた志ほど強いものはない。知られた詩の一節がある。〈学もし成らずんば死すとも還(かえ)らじ…人間(じんかん)/到(いた)る処(ところ)/青山(せいざん)有り〉。幕末の…

  •  予想された事態だとはいえ、あきれ果てる。慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的」な解決をうたった平成27年の日韓合意に基づき、韓国で設立された慰安婦財団が解散した。韓国側は日本政府に「手続きが完了したわけ…

  •  昨年1年間に韓国からは753万9000人、台湾からは475万7300人の旅行者が日本を訪れた。多くの人が、寿司(すし)や刺し身を堪能したことだろう。ただせっかく味を覚えても、帰国すれば食べられなくな…

  •  昨日の各紙は、中央官庁の幹部人事を一斉に報じていた。そのなかでも破格の扱いで伝えていたのが、文部科学省の初等中等教育局長に丸山洋司官房審議官(57)を起用する人事である。文科省担当の記者に聞くと、省…

  •  昨日の社会面に掲載された元共産党国対委員長、松本善明(ぜんめい)さんの訃報記事のなかで、なつかしい名前を見つけた。松本さんの最初の妻、絵本作家のいわさきちひろさんである。

  •  月刊『Hanada』4月号では、元駐韓国大使の武藤正敏さんと作家の百田尚樹さんが「韓国大闘論」を繰り広げていた。「悪夢のような文在寅政権」をめぐってである。韓国海軍による自衛隊機へのレーダー照射や徴…

  •  最近は、冗談の一つもなかなか言えないご時世になった。こう見えて小欄もいろいろと気を使っている。平成の半ばごろまでは、ある種の髪形の人を「おい、●●(小心のため伏せ字にした)」と呼びかけていたのを悔い…

  •  おごり高ぶる人を前にすると、負けじと胸を反らせてしまう。謙虚な人の前では、こちらも自然と腰が低くなる。〈人と人との応接は、要するに鏡のようなものである〉(吉川英治『三国志』)。人情の機微だろう。

  •  「厳密なモニタリングを行い検査した結果、規制対象から外します」。欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長は、27日の安倍晋三首相との会談で述べた。東電福島第1原発事故に伴う日本産食品輸入規制を、大幅に緩…

  •  「とかく日本人は椅子に座りたがり過ぎる」。映画監督の故大島渚さんが、平成7年に雑誌に寄稿したエッセーで指摘していた。立食パーティーでさえ壁際にずらりと椅子が並んでいる、とあきれている。

  •  「梅雨が好きなわけではないが、なんとなく落ち着かない」。24日付小紙大阪版夕刊のコラムは、少雨が続く空の異変をいぶかっていた。それを打ち消すように、梅雨前線がようやく北上してきた。気象庁は昨日、九州…

  •  2008年のノーベル賞は、物理学賞と化学賞で日本人4人受賞の快挙に沸いた。実は医学・生理学賞も注目の的だった。仏パスツール研究所のリュック・モンタニエ博士の受賞で、フランスと米国の威信のかかった長年…

  •  69年前の今日、朝鮮戦争が勃発した。未明にソ連の支援を受けた10万の北朝鮮軍が38度線を突破し、総攻撃をかけた。日本の世界史の教科書にも記載されている、歴史的事実である。

  •  先の大戦で米軍に「パーフェクトゲーム」と言わしめた日本軍の作戦がある。76年前、昭和18年6月から7月にかけたちょうどいまごろ秘(ひそ)かに準備が進められた。米軍の包囲をかいくぐり、陸海軍将兵520…

  •  今は亡き落語家の笑福亭松之助さんに、高校生が弟子入りを志願した。風刺の利いた新作落語で人気を博していた、昭和49年の話という。「何でワシのとこなんかに来たんや」。尋ねる師匠に、若者はあけすけに答えた…

  •  共産党のご都合主義は過去に何度か紹介したが、分かっていても驚く。20日の参院環境委員会で、党所属議員が訴えていた。「公務員獣医師が足りないという現実もある」。公務員獣医師不足解消を目指した加計学園の…

  •  今月18日夜に放映されたNHKの「クローズアップ現代+」は、緊急地震速報で中断されてしまった。東京地検の特別執行担当に、初めて密着取材していた。別の資料によれば昭和49年の設置以来、職員は「遁刑(と…

  •  5年前、夫の瓜生(うりゅう)新兵衛との間に縁談が持ち上がったとき、剣の達人との触れ込みだった。満江が疑惑をもったのは、あの地震の夜からだ。激しい揺れで跳び起きると、黒い影が部屋を飛び出して行くのを見…

  •  高齢ドライバーの暴走による悲惨な事故をいかに防ぐか。自動車の運転に法律で年齢制限を設けるべきだ、との意見がある。ただ、小紙とFNNが行った合同世論調査では、高齢男性の約6割が反対していた。

  •  薩摩焼の陶郷である苗代川(なえしろがわ)は、鹿児島市から車で西へ40分ほどの丘陵地帯にある。十四代沈寿官(ちん・じゅかん)さんが、いつものように仕事をしていると、お手伝いさんが飛び込んできた。

  •  「恥ずかしくて、いまだにあの交番の前を通れません」。作家の山口恵以子(えいこ)さんが、「小説は夫、お酒はカレシ」の副題のついたエッセーで、「我が酔っ払い人生最大の痛恨事」を書いている。

  •  貴人の飲食物を毒味する役目は、平安期にはすでにあった。元旦に天皇が召し上がる屠蘇(とそ)を試飲するなどした、薬子(くすりこ)という未婚の女性がそれである。毒味役に「鬼」や「鬼食ひ」の異名があるのは、…

  •  「核兵器を製造も所有も使用もしない」。イランの最高指導者、ハメネイ師は13日、安倍晋三首相に語った。イランと北朝鮮が核・ミサイル開発で協力関係にあるとは、かねて指摘されてきた。イラン同様、米国からテ…

  •  30年前の天安門事件の後デモのリーダーたちは、中国当局から指名手配された。彼らに手をさしのべたのが、香港の民主化活動グループである。

  •  大地震が相次ぎ、富士山が噴火、やがて日本列島が海にのみ込まれていく。昭和48年に刊行された小松左京さんの『日本沈没』は空前のベストセラーとなった。未曽有の危機にどう対処するのか。学者グループは不眠不…

  •  田辺聖子さんが作家になる前、金物問屋で働いていた話は昨日書いた。目の回るような忙しさの中、当然、男たちの口は荒くなる。自伝小説『しんこ細工の猿や雉(きじ)』に、こんな描写がある。

  •  阿部昭、井上光晴、佐藤愛子…。昭和38年下半期の芥川賞候補には、後に大活躍する作家の名前がいくつも見える。私のところに来るはずはない。高をくくっていたおせいさん、いや田辺聖子さんが『感傷旅行(センチ…

  •  将棋の十五世名人、大山康晴は「食」の武勇を誇った人でもある。タイトル戦の前夜、関係者との会食で料理を一気に平らげた。追加で頼んだステーキも胃に収め、こううそぶいている。「明日の朝はウナギだ」。

  •  「国民統合の象徴である天皇を男性に限定する合理的理由はどこにもない」。共産党の志位和夫委員長は最近、党機関紙でこう語るなど、女性・女系天皇に賛意を示している。この発言について、皇室制度を容認すること…

  •  一生のうちで違法な薬物を使ったことがある人の割合を薬物生涯経験率と呼ぶ。厚生労働省のホームページに主要先進国と比べた表が載っている。たとえば覚醒剤では日本の0・5%は、米国の4・9%、英国の10・3…

  •  「許してくれ。悪かった。お願いだから殺さないでくれ」。長男の命乞いに、父親は耳を貸さなかった。「いまじゃ、もう遅いんだよ。親を親とも思わない人間は親の手で死なせてやる」。平成4年6月、現在のさいたま…

  •  夏目漱石はロンドンに留学中、何度も下宿を変えた。大きな停車場の近くに住んでいたとき、夜中にパチ、パチという音が聞こえていた。「各列車が霧の深い時には、何かの仕掛けで、停車場間際へ来ると、爆竹の様な音…

  •  平成元年6月2日付の小紙に、中国の天体物理学者、方励之(ほう・れいし)氏のインタビュー記事が載っている。「近い将来に直接選挙、10年後くらいには、多党制度が実現するだろう」。民主化運動の指導的立場に…

  •  「8050問題」という言葉がある。80代の親が、50代の子供の生活を支えている状態を指す。背景にあるのは、子供の引きこもりの長期化だ。さらに親世代の介護が始まると、兄弟姉妹の生活も脅かされるようにな…

  •  天地創造の時代に、神は理想の国を造ろうとした。地味は豊かで、四季に恵まれ、勤勉な人々の住む日本という国を。横から天使が口をはさんだ。「他の国から不満が出ませんか」。神は思案した。「それもそうだ。では…

  •  5月31日未明、眠れぬ徒然(つれづれ)に近所の土手沿いを散策すると、黄色い花々が風に儚(はかな)げに揺れていた。「富士には月見草(つきみそう)がよく似合ふ」。作家、太宰治の言葉が反射的に頭に浮かんだ…

  •  ソ連時代の有名なジョークである。赤の広場で、「ブレジネフのバカ野郎!」と叫んだ男が、逮捕された。裁判で懲役25年の刑が言い渡される。刑期のうち5年は国家最高指導者への侮辱罪、残りの20年は国家機密漏…

  •  米ゼネラル・モーターズ(GM)とフォード、クライスラーがビッグスリーとして、世界の自動車業界に君臨していた時代の話である。フォード社長のリー・アイアコッカ氏は突然、解雇された。

  •  パキスタン北部の街を走るスクールバスが急ブレーキで止まり、若い男2人が乗り込んできた。「どの子がマララだ?」。男の声に答える間もなく、3発の銃声が響く。当時15歳のマララ・ユスフザイさんの耳には、「…

  •  雪が降りしきる、北海道のローカル線の終着駅が舞台となる。駅長の乙松(おとまつ)は、娘を亡くした日も妻を亡くした日も、列車を見送り続けてきた。浅田次郎さんの短編小説を映画化した『鉄道員(ぽっぽや)』の…

  •  新時代には、新時代にふさわしいヒーローが出現する。令和初の大相撲も日本ダービー(本当は東京優駿という)も、下馬評にもあがらなかった人と馬が優勝をさらっていった。

  •  福沢諭吉を乗せた咸臨丸が米国に渡った頃、日本は攘夷の風雲のただ中にあった。司令官で軍艦奉行の木村芥舟(かいしゅう)は何を思ったのか、こうもり傘を土産に買っている。帰国したとて雨傘でしのげる国難の嵐で…

  •  雑誌『月刊日本』6月号に掲載されたインタビュー記事で、国民民主党の玉木雄一郎代表がこう懺悔(ざんげ)していた。「旧民主党系の野党が国民の信頼と期待をとり戻すためには、国民に許しを求めなければなりませ…

  •  幕末の日本は、開国を迫るために「黒船」を率いてやって来たペリー提督一行をいかにもてなしたか。1854年の日米和親条約の締結をひかえて、横浜に上陸していた一行を接待したメニューが残っている。

  •  首相官邸のホームページの英語版では、安倍晋三首相の名前は、「Shinzo Abe」となっている。中国の習近平国家主席や韓国の文在寅大統領の表記のように、日本語の語順通り「姓+名」にできないのか。

  •  「全国一般風ノ向キハ定(さだま)リナシ天気ハ変リ易(やす)シ 但(ただ)シ雨天勝チ」。全国的に風向きは時に決まらず、天気は変わりやすく、雨が降りやすい。明治17(1884)年6月1日、日本で初めて天…

  •  囲碁のタイトル戦で初めての海外対局となったのは、昭和60年にソウルで行われた第9期棋聖戦の第1局である。当時の趙治勲(ちょう・ちくん)棋聖と旧知の間柄だった作家の沢木耕太郎さんも、誘われて同行してい…

  •  オーストラリアにとって、最大の貿易相手国である中国は、なくてはならない存在である。全人口の5・6%に当たる約120万人もの中華系豪州人を抱えてもいる。その一方で近年、大変な脅威であることも分かってき…

  •  永井荷風は昭和23年元日の日記に、こう書き留めている。「晴。来訪者なし。終日家にあり」。数え年で古希を迎え、胸のつかえがあったとみえる。朱書きで自作の歌を添えていた。〈七十になりしあしたのさびしさを…

  •  「きょうも、5人いますよ」。立憲民主党の「安定的な皇位継承を考える会」の16日の第12回会合で、山尾志桜里事務局長が記者に向かい声を上げた。同日付の小紙朝刊が、15日開催の同会会合について「出席者5…

  •  昭和49年の夏、阿部牧郎(まきお)さんは直木賞に落選した。6年前に初めて候補にあがって以来、7度目である。「惚(ほ)れた女に男がいた。あきらめる以外にない」。そんな心境だった(『大阪迷走記』)。

  •  「トラ大臣」と呼ばれた泉山三六は、若い頃から酒癖が悪かった。三井銀行の若手行員時代、職務質問に腹を立てて警察官を殴り飛ばし、留置場で夜を明かしたこともある。

  •  昭和19年11月から翌年の8月15日まで、米軍のB29爆撃機は、日本の64都市を焼き尽くした。大阪府堺市では、7月9日から10日にかけての空襲で、1370人が亡くなっている。

  •  昨年9月、台風21号の影響で、関西国際空港には数千人の旅行客が取り残されていた。すると中国の駐大阪総領事館がバスを派遣して、中国人観光客を優先的に救出した。中国のネット上にこんな情報が流れ、中国メデ…

  •  リレーといえば学校の運動会の花形だったが、最近は、抜かれたらいじめられるなどと選手になるのを嫌がる子供も多いという。立候補制やクラス全員参加で平等に走るなどリレーも様変わりしているようだ。

  •  『三国志』で武名が高い蜀(しょく)の関羽は、「財神」として現代の中国人に祭られている。つまり商売や金儲(もう)けの神様である。正しい行いをして富を得たい-との庶民の願いに、公平無私の人として描かれた…

  •  高校生の頃、まだ存命中だった祖父が、何を思ったのか『日本国憲法』という本を買って土産にくれた。大きな文字で条文が書かれているだけだったが、せっかくなので改めて読んでみた。すると前文から引っかかった。…

  •  「牛乳をコップでひといきにのんでしまうとはじめてシャク放だ。食卓イスからおろされて、サークルの中へ移転だ」「はじめこれに入れられたとき、ずいぶんイヤーンで抵抗したんだけれど、パパもママも出勤の用意で…

  •  大阪市立美術館で12日まで開催中の「フェルメール展」の入館者は昨日、50万人を超えた。東京開催分とあわせるとすでに約120万人が鑑賞したことになる。

  •  「麻雀は、戦争である。キミ自身の興亡が、それにかかっているのである」。連休中に読み返していた作家、色川武大(たけひろ)さんのエッセーにあった一節である。

  •  数学者の藤原正彦さんは、大学院時代の指導教官から厳命されたそうだ。「フェルマーだけはやるな。数学人生終わりだよ」(『世にも美しい数学入門』ちくまプリマー新書)。

  •  作家の向田邦子さんは子供の頃、宴席から酔って帰った父によく起こされた。手をつけなかった口取り肴(ざかな)や二の膳の折詰を広げ、父は「さあ、お上がり」と促す。夢とうつつの境で箸を行き来させる子供たちを…

  •  唐突に作家、池波正太郎さんの代表作の一つ『剣客商売』で、主人公の秋山小兵衛が説いたセリフが頭に浮かんだ。「人の世は、みんな、勘ちがいで成り立っているものなのじゃよ」。4月29日付の韓国紙、中央日報の…

  •  「遠慮のかたまり」という言葉は関西で生まれたらしい。たとえば、お土産に箱入りのまんじゅうをいただいたとする。最後に残った一つに手を出しづらい状態を指す。他人に対して控えめに振る舞う。「遠慮」の説明と…

  •  富士山の名前の由来は諸説ある。その一つが「不死の山」。『竹取物語』で、かぐや姫が帝(みかど)に「不老不死の秘薬」を残して月に帰る。悲しみにくれる帝が、山頂で秘薬を焼いたという。

  •  作家の山本周五郎が、昭和32年の暮れに発表したエッセーでぼやいていた。どうしてこんな寒い季節に「おおみそか」と「新年」を隔てる木戸を設けたのか、と。

  •  平成の終わりにあたり、何か感動的な話や気の利いた文句を書こうとパソコンの前に座ったが、何も浮かんでこない。記者としてお恥ずかしい限りだが、平常運転で出発進行するとしよう。

  •  先日90歳近い父親から「おまえが小さい頃は苦労かけた」と言われ当惑した。食うに困った記憶なく戦中から戦後の自分の体験と重なったか。そういえば実家は3世代同居で狭く、物置2階を改造し寝起きしていた小さ…

  •  世の中は、暦通りに休める人と休めない人でできている。〈元日を稼ぐ因果の芸渡世〉。俳優の小沢昭一さんがひねった句に、共感の一票を入れる人は多かろう。小欄もその口である。大型連休が始まったきのう、本稿の…

  •  オバマ米政権の副大統領だった民主党のバイデン氏が25日、来年の大統領選への出馬を表明した。党の指名候補争いでは最有力と目されている。折しも日本時間27日には、安倍晋三首相とトランプ大統領との10回目…

  •  「空気からパンを作る」という言葉がある。空気中の窒素から、農作に欠かせない肥料の原料となるアンモニアを合成することを意味する。1898年、英科学者のクルックスによる大英学術協会での演説が、「20世紀…

  •  平成3年に82歳で亡くなった新劇俳優の中村伸郎(のぶお)さんは、若い頃から外車を乗り回してきた。ある日、代表を務める劇団の稽古を終えた女優の岸田今日子さんに声をかけた。「これからNHKなんだろ、送っ…

  •  スリランカの初代大統領、ジュニウス・リチャード・ジャヤワルデネ氏は、国民から親しみを込めて「ジェー・アール」と呼ばれていた。日本にやってきたスリランカ人が、JRを大統領のイニシャルと勘違いしたとの笑…

  •  バスの運転手といえば、小学生の男の子にとって、スポーツ選手と並ぶあこがれの職業である。坂井昭彦さんもその一人だった。中学校や高校の教員を経て、46歳で幼い頃からの夢をかなえて転職する。

  •  海洋冒険家、堀江謙一さんの単独・無寄港世界一周の航海は、わずか8日で挫折する。昭和47年11月、ヨットのマストが破損して、漂流中に救助された。

  •  駅の窓口に長い行列ができる時期は決まっている。定期券が入り用になる年度初めと、6カ月定期の切れる秋である。首都圏の鉄道会社が「定期券を早めに買うアーリーさん、直前に買うギリギリスさん」と呼びかけた標…

  •  貧すれば鈍する、という言い方は国民民主党にはそぐわないかもしれない。何しろ「約100億円のカネとスタッフ、地方組織がある」(立憲民主党衆院会派所属の岡田克也元副総理)という裕福な党なのだから。ただ、…

  •  評論家の石平さんが昨日の小紙に、中国で起きている「日本で花見するブーム」について書いていた。石平さん自身、桜には目がない。ある花の名所で、一心にシャッターを切る姿をお見かけしたことがある。

  •  名探偵ホームズの生みの親、コナン・ドイルは、実は歴史小説家として世に出たかった。それほど思い入れがなかった証拠に、作品のなかで一度ホームズを殺している。

  •  『パリは燃えているか』。ルネ・クレマン監督の往年の映画は、ヒトラーの実際の言葉が、タイトルになっている。占領下に置くパリの死守をナチス・ドイツ軍の司令官に命じていた。

  •  男子ゴルフのタイガー・ウッズ選手が稼ぎ出した、とんでもない金額が明らかになったのは、2009年10月である。史上初めてスポーツ選手として生涯収入が、10億ドル(約890億円)を超えた。前年には全米オ…

  •  アナログ的な思考に慣れた身には、若者の使う略語がいい頭の体操になる。最近のCMで膝を打ったのは「ギガ死」だった。スマートフォンで動画などを見過ぎたため、通信速度制限で画面が止まる不都合を指す。

  •  周囲の迷惑など気に留めず、似たようなことを繰り返す懲りない人がいる。小欄は6日、立憲民主党最高顧問、菅直人元首相がブログなどで他党に口出ししていることを紹介した。国民民主党に解党と、個々の判断での政…

  •  桜田義孝氏は、もともと不思議な言葉遣いをする人だった。たとえば、五輪相に就任したばかりの昨年11月、小紙のインタビューでのやりとりである。2020年東京五輪・パラリンピックにどう臨むか。この質問に「…

  •  なんとも納得しがたい判決である。愛知県内で平成29年、当時19歳の実の娘と性交したとして、準強制性交罪に問われた父親に対し、名古屋地裁岡崎支部は無罪の判決を言い渡した。

  •  明治100年ブームに沸いた昭和43年、作家の城山三郎さんは小紙への寄稿で嘆いていた。「明治100年の50年分ぐらいは、この人の力でつくられたようにも思えるのだが、一向にその名が出ない」。

  •  「先生が泣きながら『次世代の土台になった。これくらいの苦労、また次も乗り越えられるよ』とおっしゃってくれた」。今年2月に亡くなった堺屋太一さんの葬儀で、元大阪市長の橋下徹さんは涙ながらに弔辞を読んだ…

  •  評判になっていると聞いて、久しぶりに生物の教科書を開いた。同僚の長辻象平記者が先月、連載記事で紹介した『生物・生命科学大図鑑』である。遺伝学の章でこんな記述を見つけた。

  •  入学式シーズン、近所の私立中高一貫校の前を通ると、チラシを配る列があった。保護者のような顔をして受け取ると、スマートフォンを使った学習システムの案内が目立つ。無料通信アプリのLINEなどを通じ、添削…

  •  「因果はめぐる小車(おぐるま)」という。立憲民主党最高顧問である菅直人元首相は3日のブログ「混迷の続く国民民主党」で、同党解党と、個々の議員の判断での政治理念の近い政党への参加について、上から目線で…

  •  「おはよう、フェルプス君」。テープレコーダーに録音された当局からの指令はリーダーへの呼びかけで始まる。特殊な能力を持つスパイがチームを組んで、極秘任務を遂行する。

  •  米国の首都ワシントンでは先月末から、全米桜祭りが始まり、桜並木も見頃を迎えている。苗木はもともと日本から贈られ、長年日米友好の象徴となってきた事実はよく知られてきた。ただ、実現までには多くのハードル…

  •  焼き肉店を切り盛りしながら、3人の子供を育て上げた。50歳を過ぎて在日韓国人のオモニは、文字の読み書きから学び始めた。かつての不良少女は今、美容師をめざす。不登校が続いた少女は、ようやく自分の居場所…

  •  「日本最古の歌集であるだけでなく、ほとんどの日本文学研究者の意見では日本最高の歌集である」。今年2月に世を去ったドナルド・キーンさんは、『万葉集』をこうたたえていた(『日本文学の歴史』)。

  •  昨夜遅く、ついに新元号が、わかった。「いろいろと苦労しているようだから、これくらい教えてあげよう」と、取材で懇意になったある人が、そっと機密情報を漏らしてくれたのだ。さっそく、読者のみなさんにお知ら…

  •  女優の檀ふみさんは、甥(おい)が中学生だった頃に英語の家庭教師を引き受けた。ある日の授業で問題を出してみた。「エレガントは何の意味?」。甥は考え込んでいる。「私の姿を、日本語で上手に表すとしたら?」…

  •  これが漫才ならば「いいかげんにしろ」と、最後に相方を抑える場面だろう。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は28日、大統領府に日本企業関係者らを招き、日韓関係の悪化を懸念する日本側に言い放った。「経…

  •  ペンタゴン(五角形)の通称で知られる米国防総省の一角に「ネット・アセスメント(総合戦略評価)局」がある。スタッフはわずか20人ほど。

  •  戦国時代の名将、上杉謙信は最大のライバルだった武田信玄と14年もの間戦い続けた。信玄の死の報告を受けると、「敵の中の最も善き者」を失ったことに慟哭(どうこく)したという。

  •  「暗黒街の帝王」と恐れられたアル・カポネは、禁酒法下のシカゴで密造酒の製造を取り仕切り、巨万の富を築いていた。禁酒法違反や殺人の容疑では逮捕が難しい。米財務省の捜査官、エリオット・ネスは大きな壁にぶ…

  •  囲碁界は、来月に史上最年少の10歳でプロ入りする仲邑菫(なかむら・すみれ)さんの話題で持ちきりだ。小欄は、昨年プロデビューしたやはり女流棋士の加藤千笑(ちえ)初段(17)にも注目している。男性棋士と…

  •  「庭でふきのとうを二つばかり見つけたので、干しわかめの雑炊にふきのとうを散らして、いかの塩辛で食べる」「お米を倹約して、小麦粉とそば粉でホットケーキ。会社の人にもらったサッカリンを入れて焼いてみた」…

  •  イチロー選手が渡米から11シーズン余り在籍したマリナーズを去り、ヤンキースへ移籍したのは2012年夏だった。10年連続200安打の記録を残した球団の顔が定位置の約束もない名門になぜ渡るのか。米球界の…

  •  「監督は絶対無理です。人望がない、本当に。それぐらいの判断能力は備えている」。現役引退を表明した米大リーグ、マリナーズのイチロー選手は21日深夜に始まった記者会見で強調した。不謹慎かもしれないが、平…

  •  流線形や球形の奇抜な建築物が並ぶ、未来都市の印象だという。石油やウランなどの豊富な天然資源に恵まれた中央アジアの経済大国カザフスタンの首都、アスタナである。

  •  アドルフ・ヒトラーがドイツの首相に指名された1933年、米英両国で一枚の写真が話題になっていた。被写体は、赤ん坊時代のヒトラーである。あざ笑うように分厚い唇をゆがめ、額には脂ぎったもじゃもじゃの髪が…

  •  電子部品メーカー、東京電子工業を一代で築き上げたワンマン社長、石原修の急死で物語は始まる。長年側近として仕えてきた副社長の宮本正樹が、昇格するのが順当であり、本人も野心がないわけではない。

  •  明治初年に日本に赴任していた清の外交官のなかに、黄遵憲(こう・じゅんけん)という詩人がいた。東京で初めて見た桜の花のあでやかさに感激していた。同時に、日本人が桜に抱く思いの強さに驚いている。

  •  横山秀夫さんの6年ぶりの新作『ノースライト』(新潮社)が話題になっている。警察小説で知られる著者が今度は建築家を主人公にした。題名は、北からの柔らかな光だ。それを取り込み設計した「Y邸」から、施主一…

  •  「叱る」という字の旁(つくり)をなす「七」は鋭い刃で切ることを意味する。つまり口舌の刃(やいば)で相手に傷をつけること。さりとて一刀両断では相手の立つ瀬がないし、多言を弄して切り刻んでも恨みを残す。…

  •  朝から、ついカップ麺を食べてしまう。NHKの連続テレビ小説「まんぷく」のせいである。即席ラーメンを生み出した夫婦を描くこのドラマを見たばかりに、数年ぶりにチキンラーメンにも手が伸びた。同商品の平成3…

  •  大阪ダブル選の構図が固まった。大阪都構想の実現を目指して、入れ替わり出馬する松井一郎大阪府知事と吉村洋文大阪市長に対して、府知事選に元副知事の小西禎一(ただかず)氏が、市長選には元大阪市議の柳本顕(…

  •  2017年は、航空機の歴史のなかで輝かしい年となった。ジェット旅客機の死亡事故がゼロとなったからだ。残念ながら、昨年に続いて今年もまたゼロとはならない。

  •  平成11年に74歳で亡くなった喜劇役者、三木のり平さんの本名は、田沼則子だった。「のりこ」ではなく、「ただし」と読む。「男に『子』がつくのはおかしい」。母親の言い分に、父親は耳を貸さなかった。

  •  マンモスといえば、マンモス大学やマンモス団地のように、「巨大な」という意味で使われる。実際は、現在のアフリカゾウより少し小さかったらしい。全身を毛で覆われ、鋭い牙を持ち、北半球に広く生息していた。約…

  •  米国現代史の最大の謎といえるのが、1963年に起きたジョン・F・ケネディ大統領の暗殺である。犯人として逮捕されたオズワルドは、事件の2日後に殺される。

  •  昨年の平昌五輪では、銅メダルを獲得した女子カーリング日本代表選手の「もぐもぐタイム」が、話題になった。まもなく、意外な事実が明らかになる。休憩中に選手が口にしていた韓国のイチゴのルーツは日本だった。

  •  時間は、ただ一つの方角へと流れている。「人生は後ろ向きにしか理解できないが、前を向いてしか生きられない」。デンマークの哲学者、キルケゴールの警句だという。あの日、あの時、あの場所で-と振り返ることは…

  •  本当の失望が訪れたときは、金王朝はおしまいだろう。トランプ米大統領は6日、北朝鮮が廃棄を約束したミサイル発射場の再建を進めているとの情報について「もしそうなら、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委…

  •  「PM2・5」が、日本で注目されるようになったのは、平成25年からだ。北京を含む中国各地で大気汚染が悪化して、死者も出た。直径2・5マイクロメートル以下の微小粒子状物質は、呼吸器疾患を誘発するとされ…

  •  かつて「日産の救世主」ともてはやされた前会長、カルロス・ゴーン被告(64)の功績は、業績のV字回復にとどまらない。多くのファンが待望していた名車の復活も成し遂げた。

  •  曹洞宗の開祖、道元は23歳のとき、宋の国に留学する。まだ港に停泊中の船に老いた僧が、日本のしいたけを買いにやってきた。禅寺で食事をつくる役職である典座(てんぞ)だった。

  •  駅前のスーパーの駐車場を利用するたびに気になっていた。「カラス侵入禁止」と書いてある張り紙である。冗談としか思えなかったが、最近ようやく謎が解けた。

  •  アフリカに生息する鳥の一種、クロオウチュウは信用を逆手に取るのがうまいと聞く。他の鳥や動物が獲物に群がるのを見張り、敵が近づくと高声で鳴いて危険を知らせる。たまに嘘の警告で鳥たちを追い払い、獲物を失…

  •  韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領がお膳立てしたトランプ米大統領と金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長とのお見合いは今回、不首尾に終わった。文氏が米朝それぞれにささやいた甘い仲人口は、双方の…

  •  「曲学阿世(きょくがくあせい)」という四字熟語がある。サンフランシスコ平和条約の締結に際して、吉田茂首相が南原(なんばら)繁東大総長を非難する際に使われた。中国前漢の武帝の時代に、袁固生(えんこせい…

  •  韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権が、「建国の起点」と位置づける「三・一独立運動」の100周年記念日が明日に迫った。日本統治下の朝鮮で1919年3月1日、京城(現ソウル)に集まった人々が独立を宣言し…

  •  「私は『かわいそうに』と言われることが一番嫌いです」。児童養護施設に暮らす女子高校生が、愛読している作家、有川浩(ひろ)さんに手紙を書いた。世の中に私たちのことを正しく知ってもらいたい。

  •  日本文学者のドナルド・キーンさんは、「東北に対する私の偏見」と題した講演を行ったことがある。日本に興味を持ち始めたころ、寒くて暗い印象を持っていたという。偏見を取り去ってくれたのが、松尾芭蕉の『奥の…

  •  トランプ米大統領も狙っているノーベル平和賞は、とても無理だとあきらめたのか、物理学賞を本気で狙っているのだろう。あの鳩山由紀夫元首相が、北海道で起きた最大震度6弱の地震を「人災だ」と断定した。

  •  その道の名人達者は、世界の見え方が凡下とまるで異なるらしい。

  •  現在、北朝鮮による日本人拉致問題の解決の大きな妨げとなっているのは、韓国なのではないか。国際社会による対北制裁に穴をあけ、北の非核化と拉致被害者解放の決断を遅らせ、意欲を失わせるような言動を重ねてい…

  •  アレルギーという言葉は20世紀のはじめ、オーストリアで生まれた。かつて日本では、原因がわからない病気は何でもアレルギーと呼んでいた。

  •  昭和50年5月に初来日したエリザベス英女王は、なかなかの日本通だった。歌舞伎の「黒子」の知識があり、楽焼の茶碗(ちゃわん)を手に取れば、即座に「ろくろ」と日本語を口にした。

  •  ノーベル賞のなかでも、平和賞だけはなぜこの人がと、しばしば疑問の声が上がる。「核なき世界に向けた構想と努力」を理由に、2009年に受賞したオバマ前米大統領もその一人である。米メディアは保守、リベラル…

  •  「嘘というものはな、釣り針に似ている」。宮部みゆきさんの時代小説『桜ほうさら』で、主人公が父親の訓話を思い出す場面がある。釣り針には、魚の口に引っかかったら容易に外れぬように、返しがついている。「そ…

  •  学徒出陣で召集された若者の多くが、『万葉集』を携えていた。京都帝国大学文学部を繰り上げ卒業して海軍航空隊に入隊した、直木孝次郎さんもその一人である。