産経抄産経抄 記事一覧会員向け記事

  •  北陸地方の記録的な大雪のニュースを見て、気になっていた。道路で立ち往生している車のタイヤにチェーンが装着されていない。昨日の社会面の記事で合点がいった。

  •  昭和史研究の第一人者である半藤一利(かずとし)さんの妻、末利子(まりこ)さんは文豪、夏目漱石の孫にあたる。戦時中、東京から新潟の長岡に疎開していた時、同級生の妹として知り合った。

  •  「雪は天から送られた手紙である」。この言葉で知られる物理学者の中谷(なかや)宇吉郎は、世界で初めて人工的に雪の結晶づくりに成功した功績で知られる。中谷は雪国での人々の暮らしにも無関心ではいられなかっ…

  •  月刊「文芸春秋」2月号では、「日韓厳冬」と題して識者による討論を掲載している。そのなかで、かつて外務省アジア局で韓国担当だった自民党の城内実(きうち・みのる)衆院議員が、現在の日韓関係をサッカーの試…

  •  同僚には学生時代に弁論部で活躍した猛者もいる。書くことと、大勢の前で話すこと、どちらが難しいか聞いてみた。答えはどちらも難しいが、難しさが異なるという。文章は読み返せるが、弁論は聞き返せない。端的に…

  •  卵からかえった雛(ひな)鳥は、初めて目にしたものを親として記憶する。それが親鳥でなく、人であっても。

  •  現在の政治、なかんずく野党のていたらくの反映ではないか。8日の日経新聞朝刊を開くと、7日の国会で行われた新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言再発令に関する政府と与野党の質疑は、取り上げられていなかっ…

  •  1860(万延元)年5月、幕府が海外に送った初めての使節は、米ワシントンに滞在していた。一行にとって見るもの聞くものすべてが驚きである。

  •  いよいよ緊急事態宣言が本日決定される。新型コロナウイルスの新たな感染者が東京都では昨日過去最多の1591人となった。宣言の対象地域となる首都圏の医療体制の逼迫(ひっぱく)を考えれば、やむを得ない措置…

  •  故三船敏郎さんは、戦後すぐに東宝撮影所の門をたたいたとき、カメラマン助手を希望していた。俳優になったのは手違いからだ。昨日訃報が届いた福本清三さんも、役者になる気はなかった。

  •  オーストラリア国歌の歌詞の一部が、今年1月1日から変わった。「我々は若く(young)て自由だ」から「我々は一つ(one)で自由だ」に改められた。

  •  正月休みは『目に見えぬ侵略』(飛鳥新社)を読み返していた。副題に「中国のオーストラリア支配計画」とある本書は、蜜月だった豪州と中国の関係が険悪となるきっかけにもなった。

  •  偏屈者の八五郎が新年の賀詞を述べにやって来た。減らず口をたたけば鬼も黙るという口達者に、家の主人が吹っ掛ける。「よく来た。フグを食おう」「食わぬ」。実は八五郎、毒にあたらないかとおびえている。

  •  「午前八時起床、直ニ身体ヲ清メ朝食ヲ畢(おわ)リテ後、家人ノ年賀ヲ受ク」。昭和5年1月1日、渋沢栄一が日記をこう書き始める。まもなく年賀の客がやって来る。午前11時には、自ら設立した第一銀行に向かう…

  •  歳時記をめくると、この時節は日記にまつわる季語が多く目に留まる。「古日記」や「日記果つ」には、行く年を惜しむ感傷がにじんで味わい深い。次の1冊が必要になるわけで、「日記買ふ」もまた季語である。

  •  『氷点』や『塩狩峠』などで知られる作家の三浦綾子さんは、77年の生涯のほとんどを出身地の北海道旭川市で過ごした。「旭川のよさは?」と聞かれるたびに、「骨までしみとおるような寒さ」と答えてきた。

  •  新型コロナウイルスの大流行に伴って、今年は感染症を扱った歴史書の増刷や復刊が相次いだ。『感染症の中国史』(飯島渉著、中公新書)もその一つである。

  •  競馬の有馬記念が終わると、一年が終わったような気がするのは抄子だけではあるまい(結果は聞かないでほしい)。それにしても今年は喪中はがきを数多くいただいたような気がする。

  •  歳末の買い出しで訪れた近所の量販店に、ケーキが並んでいた。売れ残りなのか、どれも値引きされ、売り場は混み合っている。その中で長い間、思案顔をする親子がいた。手を引く小さな男の子に「ほら、円いケーキだ…

  •  「あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、まず石を投げなさい」。イエス・キリストの誕生を祝うクリスマスの25日、こんなイエスの言葉が頭をよぎった。後援会の政治資金収支報告書の不記載問題をめぐり、国…

  •  平成10年に75歳で亡くなった宇野宗佑元首相といえば、まず就任3日後に発覚した女性スキャンダルのイメージが強い。わずか69日間の短命首相でもあった。昨日の新聞を読んで、大切な事実を思い出した。

  •  昭和20年の暮れだった。連合国軍総司令部(GHQ)の通訳として東京に赴任していた日系2世のジョージ・アリヨシさんは、7歳の靴みがきの少年と知り合う。寒風が吹きすさぶなか、背筋を伸ばして懸命に働いてい…

  •  「性格的に自分は政治家に向いていない」。平成12年6月、愛知8区選出の自民党衆院議員だった久野統一郎さんは、地元の会合で突然、引退を表明する。

  •  昨日は二十四節気の冬至だった。「冬至の節はわたしのもっとも好きな日である」。作家の永井荷風は、大正10年12月に発表した随筆に書いている。

  •  男女問わず格闘技ファンは意外に多い。勝つか負けるか、自分の日常と違う一瞬に畏敬を抱き歓声を送る。そうした苛酷(かこく)な世界の舞台裏を取材してきた先輩、同僚の本が相次いで刊行されたので一気に読んだ。

  •  占星術が世の中を動かすことは珍しくない。寛和2(986)年夏である。

  •  「天下を治むるは、必ず人情に因(よ)る」。中国・戦国時代の法家思想の大成者、韓非子は述べ、民心の大切さを訴えた。やはり法家に連なる管子(かんし)も「政(まつりごと)の興る所は、民の心に従うに在り」と…

  •  いつごろから日本で広まった風習だろう。カメラを向けられると、人さし指と中指をたてるポーズをとる。「ピースサイン」である。

  •  「検察改革」を悲願とする韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は当初、日本の地検特捜部を念頭に置いていたようだ。「東京地検特捜部は政治権力の目をいっさい気にしない。政治的中立を徹底的に維持し…輝かしい…

  •  「楽聖」ベートーベンの「第九」がなぜ、年の瀬の風物詩といわれるほど盛んに演奏されるようになったのか。理由は諸説あってはっきりしない。とにかく満席が見込めるから、楽団にとって「正月の餅代稼ぎ」として欠…

  •  英国の作家、サマセット・モームとグレアム・グリーン、そして昨日訃報が届いたジョン・ル・カレさん(89)の共通点は、英国秘密情報部(MI6)出身という経歴である。ル・カレさんは1963年にスパイ小説の…

  •  〈両隣へ届け畳をむちうち〉と江戸川柳にある。いまから埃(ほこり)を立てます。ひとつよろしく。当時は隣近所に断ってから煤(すす)払い、つまり大掃除にかかるのが常識とされていた(『はじめての江戸川柳』平…

  •  「自衛隊は便利屋ではない」。陸上自衛隊出身の佐藤正久元外務副大臣が、自身のツイッターに記した言葉は重い。新型コロナウイルスの感染拡大で地域の医療現場が悲鳴を上げる中で、自衛官(看護官)による医療支援…

  •  「戦時下の女性への暴力に反対する芸術作品」。ベルリン中心部のミッテ区に設置された慰安婦像は、もともとこんな触れ込みで申請がなされていた。ところが完成してみると、やはり日本を貶(おとし)めるのが目的だ…

  •  昨日の小紙1面の「朝晴れエッセー」は多くの読者にとって、わが意を得たり、だったのではないか。作者がかつて旅行中に紛失した携帯電話を、JRの女性駅員はいやな顔ひとつせずごみをかき分けて探してくれた。

  •  90歳の天寿を全うした物理学者の有馬朗人(あきと)さんは尊敬する人物として、寺田寅彦を挙げていた。有馬さんは孫弟子にもあたる。俳人でもあった有馬さんは「珈琲の渦を見てゐる寅彦忌」という句も詠んでいる…

  •  「パパはビートルズだったの?」。ジョン・レノンさんの5歳の息子、ショーン君が映画「イエロー・サブマリン」を見て発した一言がきっかけだった。ビートルズ解散からすでに10年がたっている。

  •  浦島太郎の伝説は、全国各地に残っている。愛知県武豊町もその一つ。竜宮神社や浦島橋など“遺跡”も多い。なかでも町の自慢は、太郎が竜宮城から持ち帰って地元の知里付(ちりゅう)神社に献納したとされる玉手箱…

  •  ガソリンという言葉には何かと助けられる。明日への英気を養うときの「ガソリンを入れる」(酒を飲んで元気をつける)。気力、体力が衰えたときの「ガス欠」。温暖化に手を貸すようで気が差すものの、文筆稼業には…

  •  「世界中が仏滅と天中殺に落とし込まれたような年」とは、山口恵以子さんの人気小説『婚活食堂4』に出てくる表現だが、その通り今年は暗かった。中国・武漢発の新型コロナウイルス感染症の大流行で、景気は落ち込…

  •  韓国の食べ物としてまず思い浮かぶキムチの英語表記は、「KIMCHI」である。もともと日本製のキムチが「KIMUCHI」として海外進出を果たしていた。本場・韓国がクレームをつけ、国際食品規格委員会(C…

  •  外務省研修所の玄関を入ると2つの銅像がある。一人は明治の名外交官、陸奥宗光である。もう一人のヘンリー・デニソンを知る人は少ないだろう。米国の外交官から外務省に移り、34年にわたって日本外交を支えた。

  •  『吾輩(わがはい)は猫である』の猫の主人、珍野苦沙弥は痘痕(あばた)面だった。「主人は折々細君に向って疱瘡(ほうそう)をせぬうちは玉のような男子であったといっている」。あばたにコンプレックスを持つ苦…

  •  <二人が睦(むつ)まじくいるためには 愚かでいるほうがいい 立派すぎないほうがいい…>。吉野弘さんの「祝婚歌」は、数えきれないほどの結婚式で読み上げられてきた。もともと自分のめいのために書いた詩だっ…

  •  仕事が手につかない、というのはいつものことだが、小欄を書くのをほっぽり出して東京競馬場に駆け出したくなった。幸か不幸かコロナ禍で入場者は抽選で約4600人に制限され、行きたくても行けなかったのだが。

  •  作者不詳の戯(ざ)れ歌をひとつ。〈春つばき夏はゑのきに秋ひさぎ/冬はひらぎに同(おなじく)はきり〉。何のことかさっぱり、という方はそれぞれの字に「木」を添えていただくと読みやすい。椿(つばき)、榎(…

  •  抄子は約7カ月前、中国外交を老獪(ろうかい)だのしたたかだのと評価する風潮に疑問を呈したが、この際もっとはっきり言おう。中国は外交下手である。24、25両日に来日して菅義偉首相や茂木敏充外相らと会談…

  •  抄子は約7カ月前、中国外交を老獪だのしたたかだのと評価する風潮に疑問を呈したが、この際もっとはっきり言おう。中国は外交下手である。24、25両日に来日して菅義偉首相や茂木敏充外相らと会談した王毅(お…

  •  サッカーに戦争を持ち込んではならない。ただし、1986年ワールドカップ(W杯)の準々決勝、アルゼンチンとイングランドの対戦には、避けられない事情があった。

  •  昭和59年夏の甲子園の大本命は、PL学園(大阪)だった。桑田真澄と清原和博の「KKコンビ」が投打の中心となり、前年夏に優勝、春の選抜でも準優勝していた。その大本命を決勝で破り、茨城県に初めて優勝旗を…

  •  作家の出久根達郎さんは50年前、東京・下町の古書店の店員をしていた。11月25日の昼頃、古書市場に出かけている主人から、電話で指示を受けた。「三島由紀夫の著書をまとめておけ」。三島の自決で世の中が騒…

  •  昭和を代表する作曲家、古関裕而(こせき・ゆうじ)をモデルにしたNHK連続テレビ小説「エール」がまもなく最終回を迎える。先週、主人公の妻の音が、一人娘の華にお見合いを勧めるシーンがあった。

  •  今月8日に行われたミャンマーの総選挙は、アウン・サン・スー・チー国家顧問が率いる与党・国民民主連盟(NLD)の圧勝となった。もっとも、スー・チー氏は国際社会からの厳しい批判にさらされている。イスラム…

  •  春の味覚であるハマグリが、このところ九十九里浜に打ち上げられている。大粒の二枚貝がごろごろした晩秋らしからぬ光景は、一説によると海水温の変化が原因だという。虫の知らせと受け止め、肌に粟(あわ)立つも…

  •  お笑いタレント、劇団ひとりならぬ「政党ひとり」というところか。所属国会議員4人のうち、福島瑞穂党首を除く3人が離党する見通しとなった社民党のことである。「党が分かれて小さくなることは残念でならない」…

  •  昨日発売された「新解さん」こと『新明解国語辞典』(三省堂)の第8版で、「忘年」を引いてみた。「年末に仲間の人が集まって、その年最後の談笑・飲食の機会をもつこと」とある。コロナ禍のせいで、今年は仲間と…

  •  英和辞典でジャパンと引くと、漆あるいは漆器と出る。16世紀後半、ヨーロッパに日本の漆器が伝えられると、人々はその美しさに驚嘆した。中国が「磁器(チャイナ)の国」であるように、日本も「漆器の国」と呼ば…

  •  海外旅行に飽き足らなくなった日本人の間で、月旅行のブームが始まっていた。筒井康隆さんの短編小説『農協月へ行く』は、こんな設定である。

  •  喫茶店で向かい合って座っていると、不意に「あなたがだんだん遠くなる」と言って、そのまま気を失ってしまうことが何度もあった。没後10年になる歌人の河野(かわの)裕子さんの女子大生時代のエピソードである…

  •  上方歌舞伎の再興に尽くし88歳で亡くなった人間国宝、坂田藤十郎さんは、子供の頃、「実は歌舞伎にあまり興味がなかった」と意外なエピソードを明かしている。平成25年の新歌舞伎座(東京)開場に際し、本紙「…

  •  時の権力者を匿名の文書で当てこする文化は、昔からあった。風刺の効いた狂歌などを詠み、道に落としておく。これを「落書(らくしょ)」と呼んだ。寛政の改革で知られる松平定信は、落書でおもちゃにされた一人で…

  •  米大統領選をめぐり、トランプ大統領が勝った4年前と同じような受け身の言説が目立つ。トランプ氏は選挙戦の不正を訴えて訴訟攻勢に出ており、まだ正式決着はみていない段階だが、いわく「バイデン氏就任で日本は…

  •  東北地方の山間で昔から行われてきた狩猟には、熊犬と呼ばれる猟犬が欠かせない。戸川幸夫さんの動物小説『熊犬物語』によると、気が強いだけでは務まらない。

  •  参勤交代は江戸幕府が諸大名に課した義務の一つだった。原則として1年ごとに、江戸と国元を行き来させる。天保12(1841)年には、現在の愛知県豊橋市を治めていた三河吉田藩の若殿様が、初めてのお国入りを…

  •  米大統領選で当選を確実にした民主党候補、バイデン前副大統領(77)は、選挙戦終盤の10月初旬、ペンシルベニア州ゲティズバーグを演説の場に選んだ。南北戦争の激戦地であり、第16代大統領リンカーンが歴史…

  •  昭和56年に放映された名作ドラマ「北の国から」にこんなシーンがあった。主人公の五郎の一家は、東京から北海道の富良野に移り住んで初めての冬を迎える。「寒くてやってられませんよ」。

  •  秋篠宮殿下の愛車は黄色のフォルクスワーゲンだった。夏の静養で軽井沢をお訪ねになったときは、ホテルからテニスコートまで運転して通われた。危なげないハンドルさばきは、報道陣の間で評判だったという。

  •  漫画と映画で記録的な快進撃を見せる『鬼滅の刃』は、一大社会現象である。「『全集中の呼吸』で答弁させていただく」。菅義偉首相が国会で作中の言葉を用いて気合を示せば、主人公たちの宿敵のセリフを引いて首相…

  •  米国の正式国名「ユナイテッド・ステーツ・オブ・アメリカ」はなぜ、「アメリカ合州国」ではなく、「合衆国」と翻訳されたのか。もともと合衆国は日本製の訳語ではなく、清朝末期の中国で生まれた言葉だった。衆人…

  •  「どうか皆さん、アイゼンハワー将軍が自らに託された大きな仕事を成し遂げるのに必要な支持を与えていただきたい。私は彼を支持することを誓います」。作家の井上一馬さんが編んだ『後世に伝える言葉』から引いた…

  •  「世界一貧しい大統領」として日本でも広く知られる南米ウルグアイのホセ・ムヒカ元大統領は先月、政界引退を発表した。大統領在任中、世界で初めて大麻(マリフアナ)の生産から販売までをすべて認めた決定でも注…

  •  映画「夫婦善哉(めおとぜんざい)」は、森繁久弥さんの代表作の一つに数えられる。主人公の柳吉は、化粧問屋の若旦那である。妻子があるのに芸者に入れ揚げ勘当される。

  •  映画「007」のジェームズ・ボンド役にショーン・コネリーさんが抜擢(ばってき)された時、原作者のイアン・フレミングは不満だった。確かに身長188センチのたくましい体に恵まれ、男ぶりは申し分ない。

  •  学問の心得がある者は、寺子屋で子供たちに読み書きを教えた。手先の器用な者は花札の絵を描き、金魚やコオロギを育てては町人に売る者もいた。これらは全て、江戸時代の下級武士が精を出した内職だという。

  •  国内の新型コロナウイルス感染者(陽性反応者)数が29日、累計で10万人を超えた。一見、膨大な数字に思えるが、フランスでは同日だけでその半数に迫る4万7千人超の感染者が出た。累計感染者数も、人口は日本…

  •  佐藤栄作元首相のあだ名は、「政界の団十郎」だった。歌舞伎界の最高位、市川団十郎のお家芸といえば、「にらみ」である。口数の少ない佐藤氏が団十郎ばりの大目玉で射すくめると、議員や官僚は震え上がったという…

  •  全日本空輸(ANA)の創業者は、朝日新聞の社長も務めた美土路昌一(みどろ・ますいち)である。敗戦後、GHQは日本のすべての航空事業を禁止した。美土路は、失業したパイロットや航空整備士を救済するための…

  •  森に生きる動物たちにとって、秋になって地面に落ちたドングリ(ブナ、ミズナラなどの実)は大切なごちそうである。その一部は巣穴や土の中に蓄えられて冬の間の食料となるが、食べ残しも出る。それが翌春に発芽し…

  •  「どうして『こうのとりのゆりかご』(赤ちゃんポスト)をつくったのか」。熊本市の慈恵病院理事長、蓮田太二(はすだたいじ)さんは何度も同じ質問を受けてきた。きっかけとなったのは、ドイツで視察した「ベビー…

  •  駅売りの新聞が見出しで売っているように、映画もタイトルがすべて。どんなに中身が良くても表紙が悪けりゃ誰も見てくれない。若かりし頃、見出しをつける整理部に配属され、面白くない顔をしていたのだろう。旧知…

  •  ある職業の訓練内容という。水深20メートルの海底にある居住施設に、1週間ほど滞在する。海中の作業では、ヘルメットが割れて海水が入ってきたときの対処法や、非常用酸素の使い方などを学ぶ。どんなトラブルに…

  •  「政府には(会員候補6人の)任命拒否の理由を説明する責任がある」。18日の小紙朝刊で政府機関、日本学術会議の大西隆元会長が主張していた。任命権者である菅義偉(すが・よしひで)首相のチェックや干渉はけ…

  •  「夜間に遊べる場所が少ない」。ラグビーワールドカップ(W杯)の観戦のために昨年日本を訪れた外国人観光客が口にした不満の一つである。ニューヨークを代表する観光スポットであるブロードウェーを例に挙げると…

  •  東京電力福島第1原子力発電所の事故以来、放射線の被曝(ひばく)をめぐる多くの風評が、飛び交ってきた。とりわけ周辺住民の不安をかき立てたのが、胎児への影響である。この風評を真っ向から否定したのが、日本…

  •  探偵のアニエは、IT(情報技術)を駆使して復讐(ふくしゅう)を請け負っている。香港のミステリー作家、陳浩基(ちん・こうき)さんの新著『網内人(もうないじん)』(文芸春秋)の主人公である。

  •  メキシコといえば、麻薬の生産国であると同時に、中南米から米国への密輸ルートにあたっている。犯罪組織は縄張り争いを繰り広げ治安の悪化が止まらない。業を煮やした政府は2006年、「戦争」を宣言する。

  •  同僚には歴史小説、時代小説のファンも多い。何かお薦めの一冊は?と聞いて教えられたのが、伊東潤さん著『城をひとつ』(新潮文庫)だ。すでにお読みの方も多いと思うが、遅まきながら手に取った。戦国時代、北条…

  •  司馬遼太郎や井上靖をはじめ、元新聞記者の肩書を持つ作家は多い。『銭形平次』を生んだ野村胡堂も、創作活動を続けながら60歳まで新聞社に勤めた。胡堂によれば、昔の記者は劇評を書くにしても招待切符など使わ…

  •  森友3年加計(かけ)8年-。2年ほど前だったか、インターネット上で目にした「桃栗三年柿八年」のもじりである。安倍晋三前首相をめぐって、違法性や確かな関与の証拠を見いだすという成果もないまま、延々と続…

  •  何はともあれ、中国・内モンゴル自治区出身の文化人類学者、楊海英さんに感想を聞きたくて、電話を入れた。フランス西部のナントの歴史博物館で来春開催予定だった、モンゴル展が見送られた件についてである。「ま…

  •  一冊の歌集が異例のロングセラーを続けている。平成29年12月に角川書店から刊行された『滑走路』はすでに3万部を超え、9月には文庫にもなった。

  •  筒美京平さんはもともと、エアコンのCMソングとして曲をつくった。作詞を担当したのが、人気漫画「アンパンマン」で知られるやなせたかしさんである。

  •  南カフカス地方の旧ソ連構成国、アゼルバイジャンの首都バクーに、両目ばかりが強調された不気味なデザインの像が立っている。20世紀最高のスパイの一人といわれるリヒャルト・ゾルゲをたたえたものだ。

  •  飼い犬のお供をする朝の散歩道に、とりどりの木が植わった緑道がある。この季節は、マスク越しにふわりと鼻をくすぐる香りによく出合う。十字にほどけた金木犀(きんもくせい)の花が房をなし、辺りに漂わす秋の香…

  •  ここ数年、よく耳にするようになった言葉に「説明責任」がある。主に政府人事や政治家の言動を追及する際に使われ、説明が曖昧だったり、無回答だったりすると「疑惑は深まった」とさらに追いかけられる。日本学術…

  •  全国の繁華街でしのぎを削っている居酒屋チェーンは近年、逆風にさらされている。人手不足による人件費の高騰や原材料コストの上昇、若者の酒離れによる客数の減少である。追い打ちをかけたのが、コロナ禍だった。

  •  朝日新聞の1面コラム天声人語は昨日、初代福岡藩主、黒田長政が開いた「異見会」を紹介していた。長政は、家臣からいくら耳に痛いことを言われても腹を立てない、と誓っていた。

  •  1919年、パリで開かれた第一次世界大戦の講和会議に出席していたウィルソン米大統領は、世界中で大流行していたスペイン風邪に感染する。激しくせき込み、熱は39・4度まで上がった。主治医は当初、毒を盛ら…

  •  高田賢三さんには、取材のたびに「若気の至り」として紹介する失敗談がある。ファッションの本場パリで修業して5年、1970年に念願の店を持つことになった。

  •  分子生物学に革命を起こしたアイデアがひらめいたのは、ドライブデートの途中だった。1983年5月、米カリフォルニア州の山岳地帯はトチノキの花が強く香っていた。

  •  日本が米国と砲火を交えた先の大戦で、戦局の分かれ目となったのは昭和17年のミッドウェー海戦とされる。連合艦隊は感度良好のレーダーを持ちながら、軸となる機動部隊には一つも配備していなかったという。

  •  任命権者である菅義偉(すが・よしひで)首相が任命権を行使して、何が悪いか。毎度のことながら、左派マスコミと主流派野党の議論は逆立ちしている。政府機関「日本学術会議」が推薦した新会員候補の一部について…

  •  「出汁(だし)が煮え立った鍋の中へ、梅安は手づかみで大根を入れ、浅蜊(あさり)を入れた…煮えるそばから…出汁と共にふうふういいながら食べるのである」(『梅安最合傘』)。

  •  米国独立戦争は、税金をきっかけに始まった。元国税調査官の大村大次郎さんによると、英国の植民地時代、ほとんど税金が課せられなかった。当時は金などの鉱脈の発見はなく、貴重な香料が採れるわけでもない。無税…

  •  なんとも大きな風呂敷を広げたものだ。中国の習近平国家主席は国連総会で、2060年までに二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスを実質ゼロにする目標を表明した。

  •  韓国南西部の珍島(チンド)付近で2014年4月に起きた旅客船「セウォル号」の沈没事故は、死者・行方不明者が300人を超える大惨事となった。野党の大物だった文在寅(ムン・ジェイン)氏はいち早く現地を訪…

  •  名は体を表すとはよくいったもので、翔猿(とびざる)のしこ名が本名の岩崎のままだったら、秋場所の快進撃はなかったかもしれない。106年ぶりの新入幕優勝こそ逸したが、猿のような敏捷(びんしょう)な動きと…

  •  「とても」という言葉は本来、「とても見過ごせない」などと否定を強めるものとして使われてきた。それが「すごく」の意味で使われるようになったのは、ここ100年のことだという。芥川龍之介が、大正12(19…

  •  ジャーナリストの櫻井よしこさんも7日付の小紙コラム『美しき勁(つよ)き国へ』で「記者たちの非礼ぶりは言語道断」と指摘していたが、礼儀作法やルールを軽んじる記者の姿勢が、ここ30年来ずっと気になってい…

  •  フランスを代表するシャンソン歌手、ジュリエット・グレコさんの自伝『グレコ 恋はいのち』には、日本滞在中のスナップもいくつか収められている。きちんと正座して、琴の音色に耳を傾けている姿が何ともほほえま…

  •  地球温暖化の阻止を大人たちに迫っているスウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥンベリさんは旅客機の利用を批判していた。温室効果ガスのなかでも大きな割合を占める二酸化炭素(CO2)を大量に排出するからだ…

  •  「ディズニーは中国政府に叩頭(こうとう)している」。香港の民主活動家はツイッターにこう書き込んで、ディズニーの新作映画「ムーラン」のボイコットを訴えた。一部シーンの撮影が、イスラム教徒への迫害が続く…

  •  秋の連休、遠くにも行けず、お彼岸の墓参りをしてから、司馬遼太郎氏のエッセー『余話として』(文春文庫)を読み返してみた。小説に書ききれなかったという歴史のこぼれ話が楽しい。収録されている「日本人の顔」…

  •  1956年に米ハーバード大学ロースクールに入学した500人のうち、女性は9人だった。「男性の席を奪ってまで入学した理由を話してくれ」。女子学生歓迎会で学部長が嫌みたっぷりに問いかける。

  •  世界に言語が一つしかなかった頃の話という。人々は広い平野に街を造り、巨大な塔の建設に着手した。「天まで届く塔を築き、私たちの名を残そう」と。その企てに神は眉をひそめ、地上に多くの言語をまき散らした。

  •  坊主(ぼうず)憎けりゃ袈裟(けさ)まで憎いというが、朝日新聞はそんな心境なのだろう。菅義偉内閣発足の翌17日の社説は、「『安倍改造内閣』といってもおかしくない陣容だ」と決めつけ、こう記していた。「約…

  •  《申告義務者(まうしいでをすべきひと)は、誠実(しやうぢき)に申告(まうしいで)を為(な)し、奮(ふるつ)てこの文明的国家事業(ひらけたくにのしごと)に協力(ちからをあは)せらるべし》。100年前の…

  •  花粉症ゼロ社会を目指す。「ブラック校則」をなくす。昨年の参院選では、ユニークな公約が話題になった。国民民主党が掲げたのは「孤独担当大臣の新設」である。お手本にしたのは英国だ。

  •  「熊が芸をして、カネは主人が持っていく」。元慰安婦の李容洙(イ・ヨンス)さんが、韓国のことわざを持ち出して、爆弾発言を行ったのは今年の5月上旬だった。

  •  自民党総裁選で圧勝し新総裁となった菅義偉官房長官は、毎朝欠かさずすべての全国紙に目を通す。なかでも楽しみにしているのが、読売新聞に連載中の「人生案内」だという。好きが高じてとうとう今年4月から、ビジ…

  •  映画監督のスタンリー・キューブリックは、引きこもりに近い暮らしを送ったことで知られる。社交の場と距離を置いたその人に、ある時期から身に覚えのない苦情の手紙が届き始めた。「貸した金はどうした」「映画に…

  •  「永田町にヤクザの世界が戻ってきた」。ある自民党議員は、総裁選における義理と人情、カネとポストが複雑に絡み合う各派閥の勢力争いをこう表現した。天下取りという権力闘争の中で展開される人間ドラマは、確か…

  •  香港の民主活動家、周庭(アグネス・チョウ)さんが、香港国家安全維持法(国安法)違反の容疑で逮捕、保釈されてから1カ月たつ。周さんは日本では「民主の女神」だが、香港のネット上では「香港版ムーラン」「彼…

  •  上智大学で長年教壇に立ってきたから、卒業生によく披露宴のスピーチを頼まれた。結婚式が近づくと、2人そろって「お願いがあります」と言ってくる。「田舎から親戚のお年寄りが来ます。私たちが先生の死の哲学を…

  •  大正9年のウィンブルドン準決勝。「世界の庭球王」と呼ばれる米国のチルデンがラリー中に体勢を崩すと、相手の清水善造はあえて打ちやすいボールを送った。「やわらかなボール」として知られる「美談」は清水本人…

  •  「最近、尖閣諸島周辺で中国がやっていることは、アルゼンチンが圧力をかける手口にそっくり」「日本は中国の横暴に対して弱腰に見える。がんばってほしい」。

  •  長崎県佐世保市出身の作家、村上龍さんは子供の頃海水浴で大村湾をよく訪れていた。「長崎オランダ村」ができて、のどかな風景の中に、風車や洋館が立ち並ぶようになる。

  •  人にはそれぞれ「母語」がある。〈幼い頃に自然と身につけた最初の言語〉と手元の辞書にあり、作家の井上ひさしさんは〈お母さんや愛情をもって世話をしてくれる人たちから聞いた言葉〉(『日本語教室』)と滋味に…

  •  とりわけ白熱も過熱もしていない自民党総裁選の陰で、野党が埋没している。立憲民主党と国民民主党の合流新党も、平成29年10月の結党以来初の立民の代表選も、有権者の関心は高くない。「メディアにもしっかり…

  •  戦後50年を形づくってきた「できごと」に焦点を当てる。かつて小紙に「戦後史開封」と題した大型連載があった。「できごと」には当然、昭和34年9月26日の伊勢湾台風も含まれる。

  •  本能寺の変で織田信長が、明智光秀に討たれ、光秀は毛利攻めから取って返した羽柴秀吉に滅ぼされる。そうなれば一番の課題は、信長亡き後の織田家の家督を誰が継ぐのか、である。

  •  ニュースを聞いて、数十年ぶりに懐かしい詩を口ずさんだ。「若者よ体を鍛えておけ 美しい心がたくましい体に からくも支えられる 日がいつかは来る」。福岡市の商業施設で先月末に起きた事件である。

  •  中欧の国チェコのナンバー2にあたる上院議長が、今年1月に心筋梗塞で急死した。台湾訪問を目前に控えていた。妻は、夫が中国大使館から訪台を中止するよう脅迫されていたと暴露する。後任のビストルチル上院議長…

  •  ルールがあるからこそ、スポーツは面白い。厳格な基準に従って、アウトかセーフかをビデオやAIに頼らず、神ならぬ人間の目ですべてを判断していた頃の野球やテニスは、今よりずっと面白かった。

  •  立川談志さんが入退院を繰り返した時期に書いている。〈「健康」とは、落語を演(や)るための“手段”である。それが現在(いま)じゃ、“目的”になっちまっている〉。腹立たしい、と(梧桐書院『談志最後の根多…

  •  急に雷が激しく鳴ることを霹靂(へきれき)といい、「青天の霹靂」とは、まったく予想外の出来事を意味する。政界は、今も昔もこの言葉が大好きだ。

  •  9年前の夏といえば、明治生まれの童謡詩人、金子みすゞのブームが続いていた。東日本大震災の発生直後からACジャパンのCMで朗読された、「こだまでしょうか」という作品の影響である。

  •  旧ソ連時代の反体制作家、ソルジェニーツィンがクッキーを買おうと菓子店に入ると、男がぶつかってきた。やがてノーベル賞受賞作家は激しい胃の痛みに苦しみ、なんとか一命を取り留める。

  •  カウボーイの語源については諸説ある。アメリカの独立戦争当時には、牛泥棒の意味もあった。独立反対派のグループが農家から牛を略奪して、イギリス軍に売り渡していたからだ。

  •  サンマ料理の極め付きは塩焼きである。<火だるまの秋刀魚を妻が食はせけり>。作者の秋元不死男は、妻の下手な焼き方を嘆いているのではない。「くろぐろに焼けたサンマは、いかにもサンマらしく無骨だ…ぶっきら…

  •  まわりに阪神タイガースファンが目立つ。開幕の連敗に「今年はもう終わった」と嘆いていたのも忘れ、集まっては前日の試合を振り返り、少し元気が出てきた。少数派の横浜ベイスターズファンも加わり、互いの作戦を…

  •  経営コンサルタントの大前研一さんに、青年時代の思い出話がある。米国の名門、マサチューセッツ工科大学(MIT)への留学中という。教授の質問に答えが浮かばず、「図書館で調べてきます」と席を立った。すかさ…

  •  「『帰ってきた民主党』と言ったが、全く違う」。立憲民主党の福山哲郎幹事長は19日の記者会見で、国民民主党との合流新党について、日本維新の会の松井一郎代表が揶揄(やゆ)した言葉に猛反発した。とはいえ、…

  •  2000年の米大統領選は、史上類がない激戦となった。親子2代の大統領をめざす共和党のブッシュ氏と民主党の副大統領だったゴア氏の闘いは、最後のフロリダ州の投票結果にゆだねられた。得票の再集計と法廷闘争…

  •  「だれが中国を養うのか?」。米国の思想家、レスター・ブラウン氏が1994年に発表した論文は、国際社会に大きな反響を呼んだ。中国の人口が増加する一方、工業化に伴い耕地面積は減少する。

  •  デスバレー(死の谷)とは、何とも恐ろしい名前を付けたものだ。米カリフォルニア州の砂漠地帯にある長野県とほぼ同じ大きさの国立公園である。「さらば死の谷よ」。かつてこの谷に迷い込んだ人が、命からがら脱出…

  •  女優の岸恵子さんが、78歳のおばあさんに出会ったのは、ポーランドからリトアニアに向かう列車の中だった。おしゃべりに忙しい女性たちのなかで、長老格だった。

  •  終戦の日から数日して灯火管制が解かれ、夜の街は一斉に光を取り戻した。戦火におびえ疲れ切った国民にとっては、安息の訪れを約束する街明かりと映ったろう。皮肉なことに、人々は蝉しぐれや紅葉の季節を経て、敗…

  •  終戦の日を前に、またもやこの言葉を聞くとは思わなかった。「一兵卒の立場だが、期待に沿うよう努力する」。国民民主党の小沢一郎衆院議員は13日、立憲民主党の枝野幸男代表と会談し、両党の「合流新党」への協…

  •  香川県三豊(みとよ)市で今年100歳を迎えた政本道一さんは、陸軍の衛生兵として出征した。ニューギニアの病院に運ばれてくる兵士は、「目玉の飛び出た人、手の無い人、頭の砕けた人など、人間の形を保っていな…