産経抄産経抄 記事一覧会員向け記事

  •  メキシコといえば、麻薬の生産国であると同時に、中南米から米国への密輸ルートにあたっている。犯罪組織は縄張り争いを繰り広げ治安の悪化が止まらない。業を煮やした政府は2006年、「戦争」を宣言する。

  •  同僚には歴史小説、時代小説のファンも多い。何かお薦めの一冊は?と聞いて教えられたのが、伊東潤さん著『城をひとつ』(新潮文庫)だ。すでにお読みの方も多いと思うが、遅まきながら手に取った。戦国時代、北条…

  •  司馬遼太郎や井上靖をはじめ、元新聞記者の肩書を持つ作家は多い。『銭形平次』を生んだ野村胡堂も、創作活動を続けながら60歳まで新聞社に勤めた。胡堂によれば、昔の記者は劇評を書くにしても招待切符など使わ…

  •  森友3年加計(かけ)8年-。2年ほど前だったか、インターネット上で目にした「桃栗三年柿八年」のもじりである。安倍晋三前首相をめぐって、違法性や確かな関与の証拠を見いだすという成果もないまま、延々と続…

  •  何はともあれ、中国・内モンゴル自治区出身の文化人類学者、楊海英さんに感想を聞きたくて、電話を入れた。フランス西部のナントの歴史博物館で来春開催予定だった、モンゴル展が見送られた件についてである。「ま…

  •  一冊の歌集が異例のロングセラーを続けている。平成29年12月に角川書店から刊行された『滑走路』はすでに3万部を超え、9月には文庫にもなった。

  •  筒美京平さんはもともと、エアコンのCMソングとして曲をつくった。作詞を担当したのが、人気漫画「アンパンマン」で知られるやなせたかしさんである。

  •  南カフカス地方の旧ソ連構成国、アゼルバイジャンの首都バクーに、両目ばかりが強調された不気味なデザインの像が立っている。20世紀最高のスパイの一人といわれるリヒャルト・ゾルゲをたたえたものだ。

  •  飼い犬のお供をする朝の散歩道に、とりどりの木が植わった緑道がある。この季節は、マスク越しにふわりと鼻をくすぐる香りによく出合う。十字にほどけた金木犀(きんもくせい)の花が房をなし、辺りに漂わす秋の香…

  •  ここ数年、よく耳にするようになった言葉に「説明責任」がある。主に政府人事や政治家の言動を追及する際に使われ、説明が曖昧だったり、無回答だったりすると「疑惑は深まった」とさらに追いかけられる。日本学術…

  •  全国の繁華街でしのぎを削っている居酒屋チェーンは近年、逆風にさらされている。人手不足による人件費の高騰や原材料コストの上昇、若者の酒離れによる客数の減少である。追い打ちをかけたのが、コロナ禍だった。

  •  朝日新聞の1面コラム天声人語は昨日、初代福岡藩主、黒田長政が開いた「異見会」を紹介していた。長政は、家臣からいくら耳に痛いことを言われても腹を立てない、と誓っていた。

  •  1919年、パリで開かれた第一次世界大戦の講和会議に出席していたウィルソン米大統領は、世界中で大流行していたスペイン風邪に感染する。激しくせき込み、熱は39・4度まで上がった。主治医は当初、毒を盛ら…

  •  高田賢三さんには、取材のたびに「若気の至り」として紹介する失敗談がある。ファッションの本場パリで修業して5年、1970年に念願の店を持つことになった。

  •  分子生物学に革命を起こしたアイデアがひらめいたのは、ドライブデートの途中だった。1983年5月、米カリフォルニア州の山岳地帯はトチノキの花が強く香っていた。

  •  日本が米国と砲火を交えた先の大戦で、戦局の分かれ目となったのは昭和17年のミッドウェー海戦とされる。連合艦隊は感度良好のレーダーを持ちながら、軸となる機動部隊には一つも配備していなかったという。

  •  任命権者である菅義偉(すが・よしひで)首相が任命権を行使して、何が悪いか。毎度のことながら、左派マスコミと主流派野党の議論は逆立ちしている。政府機関「日本学術会議」が推薦した新会員候補の一部について…

  •  「出汁(だし)が煮え立った鍋の中へ、梅安は手づかみで大根を入れ、浅蜊(あさり)を入れた…煮えるそばから…出汁と共にふうふういいながら食べるのである」(『梅安最合傘』)。

  •  米国独立戦争は、税金をきっかけに始まった。元国税調査官の大村大次郎さんによると、英国の植民地時代、ほとんど税金が課せられなかった。当時は金などの鉱脈の発見はなく、貴重な香料が採れるわけでもない。無税…

  •  なんとも大きな風呂敷を広げたものだ。中国の習近平国家主席は国連総会で、2060年までに二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスを実質ゼロにする目標を表明した。

  •  韓国南西部の珍島(チンド)付近で2014年4月に起きた旅客船「セウォル号」の沈没事故は、死者・行方不明者が300人を超える大惨事となった。野党の大物だった文在寅(ムン・ジェイン)氏はいち早く現地を訪…

  •  名は体を表すとはよくいったもので、翔猿(とびざる)のしこ名が本名の岩崎のままだったら、秋場所の快進撃はなかったかもしれない。106年ぶりの新入幕優勝こそ逸したが、猿のような敏捷(びんしょう)な動きと…

  •  「とても」という言葉は本来、「とても見過ごせない」などと否定を強めるものとして使われてきた。それが「すごく」の意味で使われるようになったのは、ここ100年のことだという。芥川龍之介が、大正12(19…

  •  ジャーナリストの櫻井よしこさんも7日付の小紙コラム『美しき勁(つよ)き国へ』で「記者たちの非礼ぶりは言語道断」と指摘していたが、礼儀作法やルールを軽んじる記者の姿勢が、ここ30年来ずっと気になってい…

  •  フランスを代表するシャンソン歌手、ジュリエット・グレコさんの自伝『グレコ 恋はいのち』には、日本滞在中のスナップもいくつか収められている。きちんと正座して、琴の音色に耳を傾けている姿が何ともほほえま…

  •  地球温暖化の阻止を大人たちに迫っているスウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥンベリさんは旅客機の利用を批判していた。温室効果ガスのなかでも大きな割合を占める二酸化炭素(CO2)を大量に排出するからだ…

  •  「ディズニーは中国政府に叩頭(こうとう)している」。香港の民主活動家はツイッターにこう書き込んで、ディズニーの新作映画「ムーラン」のボイコットを訴えた。一部シーンの撮影が、イスラム教徒への迫害が続く…

  •  秋の連休、遠くにも行けず、お彼岸の墓参りをしてから、司馬遼太郎氏のエッセー『余話として』(文春文庫)を読み返してみた。小説に書ききれなかったという歴史のこぼれ話が楽しい。収録されている「日本人の顔」…

  •  1956年に米ハーバード大学ロースクールに入学した500人のうち、女性は9人だった。「男性の席を奪ってまで入学した理由を話してくれ」。女子学生歓迎会で学部長が嫌みたっぷりに問いかける。

  •  世界に言語が一つしかなかった頃の話という。人々は広い平野に街を造り、巨大な塔の建設に着手した。「天まで届く塔を築き、私たちの名を残そう」と。その企てに神は眉をひそめ、地上に多くの言語をまき散らした。

  •  坊主(ぼうず)憎けりゃ袈裟(けさ)まで憎いというが、朝日新聞はそんな心境なのだろう。菅義偉内閣発足の翌17日の社説は、「『安倍改造内閣』といってもおかしくない陣容だ」と決めつけ、こう記していた。「約…

  •  《申告義務者(まうしいでをすべきひと)は、誠実(しやうぢき)に申告(まうしいで)を為(な)し、奮(ふるつ)てこの文明的国家事業(ひらけたくにのしごと)に協力(ちからをあは)せらるべし》。100年前の…

  •  花粉症ゼロ社会を目指す。「ブラック校則」をなくす。昨年の参院選では、ユニークな公約が話題になった。国民民主党が掲げたのは「孤独担当大臣の新設」である。お手本にしたのは英国だ。

  •  「熊が芸をして、カネは主人が持っていく」。元慰安婦の李容洙(イ・ヨンス)さんが、韓国のことわざを持ち出して、爆弾発言を行ったのは今年の5月上旬だった。

  •  自民党総裁選で圧勝し新総裁となった菅義偉官房長官は、毎朝欠かさずすべての全国紙に目を通す。なかでも楽しみにしているのが、読売新聞に連載中の「人生案内」だという。好きが高じてとうとう今年4月から、ビジ…

  •  映画監督のスタンリー・キューブリックは、引きこもりに近い暮らしを送ったことで知られる。社交の場と距離を置いたその人に、ある時期から身に覚えのない苦情の手紙が届き始めた。「貸した金はどうした」「映画に…

  •  「永田町にヤクザの世界が戻ってきた」。ある自民党議員は、総裁選における義理と人情、カネとポストが複雑に絡み合う各派閥の勢力争いをこう表現した。天下取りという権力闘争の中で展開される人間ドラマは、確か…

  •  香港の民主活動家、周庭(アグネス・チョウ)さんが、香港国家安全維持法(国安法)違反の容疑で逮捕、保釈されてから1カ月たつ。周さんは日本では「民主の女神」だが、香港のネット上では「香港版ムーラン」「彼…

  •  上智大学で長年教壇に立ってきたから、卒業生によく披露宴のスピーチを頼まれた。結婚式が近づくと、2人そろって「お願いがあります」と言ってくる。「田舎から親戚のお年寄りが来ます。私たちが先生の死の哲学を…

  •  大正9年のウィンブルドン準決勝。「世界の庭球王」と呼ばれる米国のチルデンがラリー中に体勢を崩すと、相手の清水善造はあえて打ちやすいボールを送った。「やわらかなボール」として知られる「美談」は清水本人…

  •  「最近、尖閣諸島周辺で中国がやっていることは、アルゼンチンが圧力をかける手口にそっくり」「日本は中国の横暴に対して弱腰に見える。がんばってほしい」。

  •  長崎県佐世保市出身の作家、村上龍さんは子供の頃海水浴で大村湾をよく訪れていた。「長崎オランダ村」ができて、のどかな風景の中に、風車や洋館が立ち並ぶようになる。

  •  人にはそれぞれ「母語」がある。〈幼い頃に自然と身につけた最初の言語〉と手元の辞書にあり、作家の井上ひさしさんは〈お母さんや愛情をもって世話をしてくれる人たちから聞いた言葉〉(『日本語教室』)と滋味に…

  •  とりわけ白熱も過熱もしていない自民党総裁選の陰で、野党が埋没している。立憲民主党と国民民主党の合流新党も、平成29年10月の結党以来初の立民の代表選も、有権者の関心は高くない。「メディアにもしっかり…

  •  戦後50年を形づくってきた「できごと」に焦点を当てる。かつて小紙に「戦後史開封」と題した大型連載があった。「できごと」には当然、昭和34年9月26日の伊勢湾台風も含まれる。

  •  本能寺の変で織田信長が、明智光秀に討たれ、光秀は毛利攻めから取って返した羽柴秀吉に滅ぼされる。そうなれば一番の課題は、信長亡き後の織田家の家督を誰が継ぐのか、である。

  •  ニュースを聞いて、数十年ぶりに懐かしい詩を口ずさんだ。「若者よ体を鍛えておけ 美しい心がたくましい体に からくも支えられる 日がいつかは来る」。福岡市の商業施設で先月末に起きた事件である。

  •  中欧の国チェコのナンバー2にあたる上院議長が、今年1月に心筋梗塞で急死した。台湾訪問を目前に控えていた。妻は、夫が中国大使館から訪台を中止するよう脅迫されていたと暴露する。後任のビストルチル上院議長…

  •  ルールがあるからこそ、スポーツは面白い。厳格な基準に従って、アウトかセーフかをビデオやAIに頼らず、神ならぬ人間の目ですべてを判断していた頃の野球やテニスは、今よりずっと面白かった。

  •  立川談志さんが入退院を繰り返した時期に書いている。〈「健康」とは、落語を演(や)るための“手段”である。それが現在(いま)じゃ、“目的”になっちまっている〉。腹立たしい、と(梧桐書院『談志最後の根多…

  •  急に雷が激しく鳴ることを霹靂(へきれき)といい、「青天の霹靂」とは、まったく予想外の出来事を意味する。政界は、今も昔もこの言葉が大好きだ。

  •  9年前の夏といえば、明治生まれの童謡詩人、金子みすゞのブームが続いていた。東日本大震災の発生直後からACジャパンのCMで朗読された、「こだまでしょうか」という作品の影響である。

  •  旧ソ連時代の反体制作家、ソルジェニーツィンがクッキーを買おうと菓子店に入ると、男がぶつかってきた。やがてノーベル賞受賞作家は激しい胃の痛みに苦しみ、なんとか一命を取り留める。

  •  カウボーイの語源については諸説ある。アメリカの独立戦争当時には、牛泥棒の意味もあった。独立反対派のグループが農家から牛を略奪して、イギリス軍に売り渡していたからだ。

  •  サンマ料理の極め付きは塩焼きである。<火だるまの秋刀魚を妻が食はせけり>。作者の秋元不死男は、妻の下手な焼き方を嘆いているのではない。「くろぐろに焼けたサンマは、いかにもサンマらしく無骨だ…ぶっきら…

  •  まわりに阪神タイガースファンが目立つ。開幕の連敗に「今年はもう終わった」と嘆いていたのも忘れ、集まっては前日の試合を振り返り、少し元気が出てきた。少数派の横浜ベイスターズファンも加わり、互いの作戦を…

  •  経営コンサルタントの大前研一さんに、青年時代の思い出話がある。米国の名門、マサチューセッツ工科大学(MIT)への留学中という。教授の質問に答えが浮かばず、「図書館で調べてきます」と席を立った。すかさ…

  •  「『帰ってきた民主党』と言ったが、全く違う」。立憲民主党の福山哲郎幹事長は19日の記者会見で、国民民主党との合流新党について、日本維新の会の松井一郎代表が揶揄(やゆ)した言葉に猛反発した。とはいえ、…

  •  2000年の米大統領選は、史上類がない激戦となった。親子2代の大統領をめざす共和党のブッシュ氏と民主党の副大統領だったゴア氏の闘いは、最後のフロリダ州の投票結果にゆだねられた。得票の再集計と法廷闘争…

  •  「だれが中国を養うのか?」。米国の思想家、レスター・ブラウン氏が1994年に発表した論文は、国際社会に大きな反響を呼んだ。中国の人口が増加する一方、工業化に伴い耕地面積は減少する。

  •  デスバレー(死の谷)とは、何とも恐ろしい名前を付けたものだ。米カリフォルニア州の砂漠地帯にある長野県とほぼ同じ大きさの国立公園である。「さらば死の谷よ」。かつてこの谷に迷い込んだ人が、命からがら脱出…

  •  女優の岸恵子さんが、78歳のおばあさんに出会ったのは、ポーランドからリトアニアに向かう列車の中だった。おしゃべりに忙しい女性たちのなかで、長老格だった。

  •  終戦の日から数日して灯火管制が解かれ、夜の街は一斉に光を取り戻した。戦火におびえ疲れ切った国民にとっては、安息の訪れを約束する街明かりと映ったろう。皮肉なことに、人々は蝉しぐれや紅葉の季節を経て、敗…

  •  終戦の日を前に、またもやこの言葉を聞くとは思わなかった。「一兵卒の立場だが、期待に沿うよう努力する」。国民民主党の小沢一郎衆院議員は13日、立憲民主党の枝野幸男代表と会談し、両党の「合流新党」への協…

  •  香川県三豊(みとよ)市で今年100歳を迎えた政本道一さんは、陸軍の衛生兵として出征した。ニューギニアの病院に運ばれてくる兵士は、「目玉の飛び出た人、手の無い人、頭の砕けた人など、人間の形を保っていな…

  •  米ニュージャージー州の小学校での出来事である。12歳の少年が黒板に「ポテト」の綴(つづ)りを「potato」と正しく書いた。ところが訪問中のクエール副大統領が「e」を付け加えて“訂正”した。折しも1…

  •  小学生のころから、日本のアニメやアイドルグループの歌に親しんできた。高校生になると、2014年の香港の民主化運動「雨傘運動」に参加して、「民主の女神」と呼ばれるようになる。

  •  オランダの船隊がインド洋に浮かぶ無人島に上陸したのは、1598年である。当時の皇太子マウリッツにちなんで名づけられた。モーリシャスとは、その英語表記である。

  •  著者の英文学者、外山滋比古(とやま・しげひこ)さんは、先月末に96歳で亡くなった。追悼の言葉とともに書店に平積みされていた『思考の整理学』(ちくま文庫)は、なんと累計250万部を突破している。

  •  「水をください」とうめく少年の脇を、青年は耳を塞いで通り過ぎた。手持ちの水はあげられない。閃光(せんこう)に倒れた瀕死(ひんし)の兄に飲ませるため-青年は後に、そう振り返っている。長崎で被爆した歌人…

  •  「(新聞は)そろって性悪でもないし、それほど深いたくらみを抱いているわけでもない」。米国の著名なジャーナリスト、リップマンは100年近く前の1922年刊行の著書『世論』でこう説いている。斯界(しかい…

  •  コロナ禍は、福島第1原発事故後の「低線量被ばく問題」と重なる部分がある。東京大学病院准教授の中川恵一さんが、日経新聞のコラムで指摘していた。放射性物質による影響は、予想以上に軽微だった。一方で避難生…

  •  こんな珍妙な出来事をほとんどの新聞はまだ取り上げていない。4日の記者会見での河野太郎防衛相と東京新聞記者とのかみ合わないやりとりである。

  •  上皇さまが譲位の意向を示された際、参考にすべき先行例の一つとなったのが、スペイン王室である。2014年にフアン・カルロス1世が生前退位して、フェリペ6世が王位を継承した。とはいえ日本の皇室とは、まっ…

  •  平成29年の春場所千秋楽。横綱稀勢の里は、横綱日馬富士との取組で肩を強打して左腕がほとんど使えない状態だった。単独トップの大関照ノ富士が、圧倒的に有利である。

  •  「静かに孤独な時間を過ごすことは、人としての強さにもつながると思うのです」。コロナ禍により萎縮を迫られる日々をどう乗り切るか。今年3月、小紙の記者が福島市在住の詩人、和合亮一さんにインタビューして、…

  •  寺内貫太郎は目方が人の倍もある石材店の主人、山盛りのざるを前に言う。

  •  台湾の李登輝元総統は日本にとって、「日台関係の礎を築いた」(安倍晋三首相)特別な存在だった。それとともに、中国と国内親中派の普段は目立たない策動を可視化する探照灯の役割も果たしていた。李氏が退任後、…

  •  世界では毎日、15億人あまりの人々が食事道具として箸を使っているそうだ。伝説によれば、最初に箸を常用したのは、中国最古の王朝、夏(か)の開祖とされる禹(う)だった。食事を早く済まそうと、小枝を折って…

  •  松尾芭蕉が山形県大石田町を訪れたのは、元禄2(1689)年の夏である。当地で詠んだ句は、「五月雨(さみだれ)を集めて涼し最上川」。『おくのほそ道』を編纂(へんさん)する際に「涼し」を「早し」に置き換…

  •  ドラマ『半沢直樹』(TBS系)の第2部が今月から始まった。平成25年に放映された第1部は、「倍返し」の流行語を生むなど人気を呼んだ。とりわけ反響の大きかったのは最終回、半沢の宿敵である大和田による土…

  •  作家で医師の久坂部羊(くさかべ・よう)さんのエッセー『ブラック・ジャックは遠かった』(新潮文庫)は、大阪大学での医学生時代を描いている。ブラック・ジャックとはもちろん、異端の天才外科医を主人公とする…

  •  ダラダラしているうちに4連休が終わってしまった、とお嘆きになっている皆さんも多いのではなかろうか。帝都の女帝サマに「不要不急の外出は控えるように」と命じられ、しぶしぶ従った忠良な都民である抄子もその…

  •  作家の遠藤周作は、言葉に対する美的感覚の鋭い人だった。「ぶざま」「死にざま」という言葉は許しても、「生きざま」が大手を振ることに不快感を隠そうとしなかった。「そんな言葉は美しくないからだ」と。

  •  「新たな専制国家」。ポンペオ米国務長官は23日の演説で中国をこう呼び、習近平国家主席を名指しで非難した。「破綻した全体主義思想を心から信じている」。自由主義陣営が団結し、不倶戴天(ふぐたいてん)の敵…

  •  日の丸をモチーフにした衣装を身に着けたダンサーは、ブラジルの日系移民を表現していた。リオデジャネイロ五輪の開会式が行われた2016年8月5日の夜である。

  •  「一九九九年七の月、空より来るだろう、恐怖の大王が、アンゴルモアの大王を甦(よみがえ)らせる…」。16世紀のフランスの占星術師、ノストラダムスの『予言書』にある有名な四行詩である。宗教研究家の竹下節…

  •  「東北(おくすけ)と関西(にしまえ)では、学生が自分の下駄(げた)ひとつ探すにも風儀が違っている。オクスケは黙って、じっと見て探している…ニシマエの特にせっかちな人と来ると、ろくに探しても見ないで『…

  •  「ヘッヘッヘ…うなとなぞは、あたくしまた久しくあれにはお目にかかりません…ぜひお供を」。たいこもちの一八がウナギをおごってもらうつもりが、反対に勘定を押し付けられる。落語の『鰻(うなぎ)の幇間(たい…

  •  同僚には推理小説(ミステリー)のファンが多い。仕事柄、謎を解く魅力は忘れ難くても、現実には解けない謎が多いからだろうか。そんな同僚から「これは本当に面白い」と薦められた。

  •  「ひふみん」こと将棋の加藤一二三九段が昔日の対局で長考した。序盤も序盤の6手目である。何をそんなに。相手は首を傾(かし)げた。加藤九段、後に真面目な顔で語ったという。「気力が充実するのを待っていた」…

  •  新型コロナウイルス感染拡大に関して、菅義偉(すが・よしひで)官房長官が11日の講演で用いた「東京問題」との言葉は、社会に瞬く間に浸透した。政府が観光支援事業「Go To トラベル」から、東京都発着の…

  •  本日の紙面は将棋の高校生棋士、藤井聡太新棋聖(17)のニュースで持ち切りであろう。なにしろ史上最年少でのタイトル獲得である。ただコラムではあえて「最高齢」を話題にしたい。

  •  16世紀末のロンドンは、ペストが大流行していた。映画「恋におちたシェイクスピア」は、12週間にわたる劇場閉鎖が解除された場面から始まる。

  •  1950年6月25日、北朝鮮の奇襲で朝鮮戦争は始まった。虚をつかれた韓国軍は、ひたすら敗走を続ける。ついには、釜山を要として南北120キロ、東西150キロの地域に立てこもった。いわゆる「釜山円陣」の…

  •  歌壇の大御所である岡井隆さんは、かつて寺山修司さんや塚本邦雄さんらとともに「前衛短歌運動の旗手」と呼ばれていた。前衛短歌は、写実を旨としてきた伝統的な短歌に対して、虚構を持ち込み政治や社会をも大胆に…

  •  雨や風のあるなしは、農村や漁村の暮らし向きを左右した。例えば、三重県には「節の西風、雨でそろ」のことわざがある。「節」は田植えの時期で、その頃に吹く西風は雨をもたらす使者として喜ばれたという。

  •  ジャーナリストの櫻井よしこさんが「異形の大国」と呼ぶ中国に、日本はどう向き合うべきか。8日は自民党外交部会が中国の習近平国家主席の国賓来日中止を求める対中非難決議を、10日には超党派の保守系議員によ…

  •  東京都大田区の1DKのマンションの一室は、出口がソファでふさがれ密室状態だった。3歳の梯稀華(かけはし・のあ)ちゃんは、脱水症状と飢えによって死亡したとみられる。意識が薄れるなかで、脳裏に浮かんだの…

  •  音楽をかけて軽口をたたきながら手術を行う。主人公のジャックは、陽気なエリート外科医だが、患者の気持ちに寄り添うタイプではない。ある日、声帯のがんを宣告され、自分の病院で治療を受けることになる。

  •  利根川の堤防の法面(のりめん)には、春になると黄色い菜の花が見事に咲き誇る。実は治水という面からいえば、大変な厄介者だという。

  •  小池百合子東京都知事(67)の名前が世間に知られるようになるのは、24歳の時である。エジプト大統領夫人の来日が決まり、そのエスコート役に決まったのだ。日本人女性として、初めてカイロ大卒業を果たした、…

  •  肥後熊本藩の初代藩主、加藤清正といえば、朝鮮半島でのトラ退治で知られ、勇猛果敢な武将のイメージが強い。もっとも、肥後に入国してからは、熊本城の築城のほか、領内各地の河川改修や新田開発に情熱を傾けた。…

  •  日清戦争に敗れた中国清朝は、下関条約の中で日本への台湾割譲を約した。その際、交渉の全権を担った李鴻章がこう言い捨てたとされる。「台湾は、鳥語らず、花香らず…瘴癘(しょうれい)(疫病)の地。割くも可な…

  •  民主主義国と、そうでない国との二極化が進行している。「世界がばらばらになっている間隙(かんげき)を縫って、中国が影響力を拡大している」。外務省幹部が語るように、新型コロナウイルス感染症の発生源である…

  •  「ヤー・チャイカ」。ラジオを通じて世界中に流れた。声の主は、世界初の女性宇宙飛行士、ワレンチナ・テレシコワさんである。ソ連の宇宙船、ボストーク6号は、1963年6月16日に打ち上げられた。

  •  養子先の家業を大いに盛り上げ、49歳で隠居して江戸に出た。伊能忠敬(ただたか)が第二の人生で挑んだのは、日本地図の作製である。55歳から17年にわたって全国を測量行脚して、約440種類のいわゆる伊能…

  •  英国統治時代の香港総督は代々外交官出身者が任命されてきた。ところが中国への返還を5年後に控えた1992年、英国はまったく違うタイプの人物を「最後の総督」に選んだ。

  •  作家の向田邦子さんが「勝負服」と題したエッセーを書いている。勝負服とは、競馬の騎手がレースで着用するものだ。締め切りが迫ると猛烈なスピードで原稿をこなす向田さんは、自らを騎手になぞらえていた。

  •  季節柄仕方ないとはいえ、鬱陶しい日々が続く。ことに今年は、いつもの曇り空が、より灰色にみえる。こういうときこそテレワークの出番である。と、書きたいところだが、家に閉じこもっていては一行も書けないのが…

  •  トイレットペーパーのロールを手で押して、形を三角に変えてみる。3分の1回転する度、手にはロールから心地よい振動が伝わってくる。元の形と比べて、紙の使用量は三角形の方が約3割も少なかったという。

  •  マスコミがしばしば使う言い回しに、「~となりそうだ」「~が予想される」の類いがある。事態の推移に関する見通しを示すものだが、自戒を込めていえば臆測や願望にすぎない場合も多い。6日付小欄で取り上げた麻…

  •  「こんにちは」。22歳で中国から来日した時、聞き取れた唯一の日本語だった。それから21年後の平成20年、楊逸(ヤン・イー)さんは芥川賞を受賞する。中国人として、いや日本語を母語としない作家で初めての…

  •  何でも望みをかなえよう。神様が申し出たらどうするか。トランプ米大統領だったら、迷うことなく秋の大統領選での再選を願うだろう。ギリシャ神話のミダス王は、欲にかられてとんでもない褒美を所望した。手の触れ…

  •  ホンダの創業者、本田宗一郎さんが、モータースポーツの最高峰であるF1レースへの参戦を発表したのは、昭和39(1964)年だった。当時のホンダはすでに二輪のレースでは、圧倒的な強さを誇っていた。ただ四…

  •  巻き寿司やバッテラ、マグロの握り…。大皿に盛られた寿司のカラー写真は、いかにも食欲を誘われる。「諸君は孤立され最早(もはや)援護補給の道はない。食料は大方なくなり、日々に餓死の運命に合ふのみである……

  •  書店の参考書コーナーをのぞくと、旺文社の大学受験雑誌「蛍雪時代」が並んでいた。7月号の特集は「合格する人 落ちる人の特徴」というストレートな見出しが目を引き、思わず購入してしまった。

  •  復員した健太郎は、投手としてプロ入りを目指している。入団テストの登板日に、鳴り物を持ち込み応援してもいいか。そう願い出る友人たちを、健太郎はやんわりと制した。「球場は静かな方がいいんです」。井上ひさ…

  •  公選法違反(買収)容疑で前法相夫妻が東京地検特捜部に逮捕されたことで、またぞろ安倍晋三首相の任命責任を問う声が出ているが、抄子はこの宮内庁による人選の方が解せない。兵庫県立大の五百旗頭(いおきべ)真…

  •  昭和の名棋士、藤沢秀行さんといえば、酒、ギャンブル、女性関係なんでもござれの豪快な生き方で知られた。囲碁を通じて政界にも交友関係を広げていた。なかでも親しかったのが、ロッキード事件で田中角栄元首相の…

  •  北朝鮮のいら立ちは一体どこへ向かうのだろう。開城(ケソン)にある南北共同連絡事務所を爆破して、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領による宥和(ゆうわ)政策を踏みにじった。経済協力の象徴だった開城工業…

  •  「竹槍(たけやり)では間に合はぬ 飛行機だ、海洋航空機だ」。昭和19年2月23日の毎日新聞1面に、こんな見出しの記事が載った。筆者は海軍省担当記者の新名丈夫(しんみょう・たけお)である。

  •  米南部の主要都市アトランタは、かつて南北戦争の激戦地となった。マーガレット・ミッチェルによる世界的ベストセラー『風と共に去りぬ』の舞台としても知られる。1939年に公開されたビビアン・リー主演の映画…

  •  神田明神下のけちな長屋に住む岡っ引き-といえば銭形平次である。四文銭を投げつけ、悪人を成敗する捕物帳シリーズは長短383編に及ぶ。その第1作『金色の処女(おとめ)』で平次が放った記念すべき第1投は、…

  •  「人は身体の内でも、外でも、共生と葛藤を繰り返しながら生きている」。作家、上橋菜穂子さんは獣が媒介する謎の感染症との戦いを描いた医療ファンタジー小説『鹿の王』のあとがきに、こう書いている。感染症は根…

  •  織田信長は人生の節目で梅雨に助けられてきた。桶狭間の戦いでは、豪雨に乗じて今川義元を倒した。長篠の一戦で武田勝頼の軍勢を打ち砕いたのは、梅雨の中休みだった。

  •  アルツハイマー病やパーキンソン病など、発見者の名前がついた病気は少なくない。全身の血管に炎症が起こり、主に乳幼児に発生する川崎病もその一つである。もっとも、川崎市の病気との誤解はなかなか解けなかった…

  •  「プッタネスカ」というイタリア料理がある。アンチョビーやオリーブの実などが入ったトマトソースのスパゲティだ。日本語にすると「娼婦(しょうふ)風」。ナポリの娼婦が客をもてなすために作っていた。日本の感…

  •  人類は感染症との戦いの歴史を生きてきた。新型コロナウイルスの大流行で改めて思い知る。東アフリカや中東でのバッタ大発生のニュースを聞くと、「バッタとの戦いの歴史」と言い換えたくなる。

  •  将棋界における数々の「史上初」の記録や「天才」の称号は、ヒューリック杯棋聖戦五番勝負に挑む藤井聡太七段(17)の専売特許ではない。待ち構える渡辺明棋聖(36)もまた、小学生時代から天才の呼び声が高か…

  •  言葉はときに甘い響きを人の胸に残し、ときに残酷な素顔をのぞかせては人を傷つける。「言葉には朝と夜とがある」。作家の寺山修司はこう記し、美しい響きを持つ朝の言葉として「希望」の2文字を賛美した。

  •  日本人が日本の特長を誇ることが、まるで恥ずかしいよくないことのように非難されるのも、戦後の悪弊だろう。麻生太郎財務相は4日の国会で、新型コロナウイルス感染症による死者が、欧米主要国に比べ日本で極端に…

  •  「2012年人類滅亡説」を覚えていらっしゃるだろうか。ハリウッド映画の「2012」では、地震や津波が世界各地を襲った。根拠とされたのは、中米で栄えた古代マヤ文明の暦である。マヤでは精密かつ複雑な暦が…

  •  アフリカ東部のルワンダで26年前に起きた大虐殺では、80万人以上が犠牲になった。少数派民族ツチが、多数派民族フツの民兵組織に襲われたのだ。暴力をエスカレートさせたのは、ラジオの放送だった。

  •  美術家のクリストさんと妻のジャンヌ・クロードさんは、第7回高松宮殿下記念世界文化賞を彫刻部門で受賞している。ただしその作品はすべて消滅させてきた。

  •  マーティン・ルーサー・キング牧師は、人種差別の撤廃を訴え続けた米国の黒人公民権運動の指導者である。「私には夢がある」の名セリフでも知られる。

  •  まあ、しゃあんめい。関西弁で言えば、しゃあない。標準語なら仕方がない。日本ダービーを制したコントレイルは、抄子のような「穴党」(高配当の馬券ばかり買って損をし続けている人々)を完黙させた。

  •  天皇の大臣任命式は歴史が古く、『徒然草』の第百一段にも描かれている。

  •  透き通った青空というキャンバスに、6筋の長い白線が描かれていく-。29日午後1時過ぎ、ふとフェイスブック(FB)を見ると、多くの人が航空自衛隊のアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」の画像を投稿…

  •  父親を殺した少年が警察に追われて、投身自殺を図る。警察は少年を裁判にかけるために、高名な外科医に手術を依頼した。もっとも実際に少年の命を救ったのは、天才外科医、ブラック・ジャックである。

  •  JR東日本やJR西日本が民間会社であることに誰も違和感を覚えない。もっとも、旧国鉄が分割・民営化に至るまでの道のりはすさまじいものだった。

  •  香港で中国の民主化支援の野外コンサートが行われたのは、1989年5月27日だった。約30万人がつめかけた。当時、香港を拠点に歌手活動をしていたテレサ・テンは、テレビの生中継を見ていて、いてもたっても…

  •  女子プロレスラーの木村花さん(22)は、なぜ若い命を散らさなければならなかったのか。インターネット上の一つのコメントに目が留まった。「心が疲労困憊(こんぱい)して、ポキッと折れてしまったのか」。

  •  ページをめくると、微妙な凹凸がある。指先でたどれば、ニャロメやケムンパス、ウナギイヌなど、ギャグ漫画でおなじみのキャラクターの形がわかるようになっている。セリフは点字で意味を読み取る。

  •  あるものに関するクイズを一つ。高価なものは金や七色の石でできており、安価なものは1円の値打ちもない。『三国志』では、賊の手に落ちないよう都の女官がこれを抱いて井戸に身を投げ、後に呉の孫堅がこれを拾っ…

  •  韓国の慰安婦支援団体といえば、いつの間にか国家的英雄視されるようになった元慰安婦の威光を背に、半ば聖域のように扱われてきた。世論を動かす影響力は大きく、「日韓外交に関して事実上の拒否権を持っている」…

  •  2年前に直木賞候補となった『傍流の記者』(新潮社)は、全国紙の社会部が舞台になっている。いわゆる「夜討ち朝駆け」やスクープ合戦など、記者の実態がリアルに描かれている。著者の本城雅人さんは、小紙とサン…

  •  <久方のアメリカ人のはじめにしベースボールは見れど飽かぬかも>。作者の正岡子規は、大の野球好きだった。幼名の升(のぼる)にちなみ「野球(のぼーる)」を雅号にしたほどだ。もっとも、ベースボールを野球と…

  •  世界保健機関(WHO)は、1948年に米国と英国の主導により設立された。もっとも、世界的な組織をめざす米国に対して、英国は敗戦国の加盟に慎重だった。冷戦期に入ると、ソ連グループと他の連合国との立場の…

  •  中国文学者、井波律子さんの訃報が届いた。コラムのネタに困るたびに手に取ったのが、井波さんの著作である。中国の長い歴史は、英雄から大悪人まで多彩な人物を生み出してきた。井波さんは、彼らが残したエピソー…