産経抄産経抄 記事一覧会員向け記事

  •  言葉はときに甘い響きを人の胸に残し、ときに残酷な素顔をのぞかせては人を傷つける。「言葉には朝と夜とがある」。作家の寺山修司はこう記し、美しい響きを持つ朝の言葉として「希望」の2文字を賛美した。

  •  日本人が日本の特長を誇ることが、まるで恥ずかしいよくないことのように非難されるのも、戦後の悪弊だろう。麻生太郎財務相は4日の国会で、新型コロナウイルス感染症による死者が、欧米主要国に比べ日本で極端に…

  •  「2012年人類滅亡説」を覚えていらっしゃるだろうか。ハリウッド映画の「2012」では、地震や津波が世界各地を襲った。根拠とされたのは、中米で栄えた古代マヤ文明の暦である。マヤでは精密かつ複雑な暦が…

  •  アフリカ東部のルワンダで26年前に起きた大虐殺では、80万人以上が犠牲になった。少数派民族ツチが、多数派民族フツの民兵組織に襲われたのだ。暴力をエスカレートさせたのは、ラジオの放送だった。

  •  美術家のクリストさんと妻のジャンヌ・クロードさんは、第7回高松宮殿下記念世界文化賞を彫刻部門で受賞している。ただしその作品はすべて消滅させてきた。

  •  マーティン・ルーサー・キング牧師は、人種差別の撤廃を訴え続けた米国の黒人公民権運動の指導者である。「私には夢がある」の名セリフでも知られる。

  •  まあ、しゃあんめい。関西弁で言えば、しゃあない。標準語なら仕方がない。日本ダービーを制したコントレイルは、抄子のような「穴党」(高配当の馬券ばかり買って損をし続けている人々)を完黙させた。

  •  天皇の大臣任命式は歴史が古く、『徒然草』の第百一段にも描かれている。

  •  透き通った青空というキャンバスに、6筋の長い白線が描かれていく-。29日午後1時過ぎ、ふとフェイスブック(FB)を見ると、多くの人が航空自衛隊のアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」の画像を投稿…

  •  父親を殺した少年が警察に追われて、投身自殺を図る。警察は少年を裁判にかけるために、高名な外科医に手術を依頼した。もっとも実際に少年の命を救ったのは、天才外科医、ブラック・ジャックである。

  •  JR東日本やJR西日本が民間会社であることに誰も違和感を覚えない。もっとも、旧国鉄が分割・民営化に至るまでの道のりはすさまじいものだった。

  •  香港で中国の民主化支援の野外コンサートが行われたのは、1989年5月27日だった。約30万人がつめかけた。当時、香港を拠点に歌手活動をしていたテレサ・テンは、テレビの生中継を見ていて、いてもたっても…

  •  女子プロレスラーの木村花さん(22)は、なぜ若い命を散らさなければならなかったのか。インターネット上の一つのコメントに目が留まった。「心が疲労困憊(こんぱい)して、ポキッと折れてしまったのか」。

  •  ページをめくると、微妙な凹凸がある。指先でたどれば、ニャロメやケムンパス、ウナギイヌなど、ギャグ漫画でおなじみのキャラクターの形がわかるようになっている。セリフは点字で意味を読み取る。

  •  あるものに関するクイズを一つ。高価なものは金や七色の石でできており、安価なものは1円の値打ちもない。『三国志』では、賊の手に落ちないよう都の女官がこれを抱いて井戸に身を投げ、後に呉の孫堅がこれを拾っ…

  •  韓国の慰安婦支援団体といえば、いつの間にか国家的英雄視されるようになった元慰安婦の威光を背に、半ば聖域のように扱われてきた。世論を動かす影響力は大きく、「日韓外交に関して事実上の拒否権を持っている」…

  •  2年前に直木賞候補となった『傍流の記者』(新潮社)は、全国紙の社会部が舞台になっている。いわゆる「夜討ち朝駆け」やスクープ合戦など、記者の実態がリアルに描かれている。著者の本城雅人さんは、小紙とサン…

  •  <久方のアメリカ人のはじめにしベースボールは見れど飽かぬかも>。作者の正岡子規は、大の野球好きだった。幼名の升(のぼる)にちなみ「野球(のぼーる)」を雅号にしたほどだ。もっとも、ベースボールを野球と…

  •  世界保健機関(WHO)は、1948年に米国と英国の主導により設立された。もっとも、世界的な組織をめざす米国に対して、英国は敗戦国の加盟に慎重だった。冷戦期に入ると、ソ連グループと他の連合国との立場の…

  •  中国文学者、井波律子さんの訃報が届いた。コラムのネタに困るたびに手に取ったのが、井波さんの著作である。中国の長い歴史は、英雄から大悪人まで多彩な人物を生み出してきた。井波さんは、彼らが残したエピソー…

  •  NHKに厳しい目は向けても、大河ドラマと朝ドラは楽しみという方は多いだろう。「麒麟がくる」と「エール」の一時休止が発表された。“中止”かと早合点した同僚、上司からは「濃姫(帰蝶)役の女優は気に入って…

  •  左手にはめた腕時計を、鏡の向こうの自分は右手にはめている。鏡に映った自分の姿が、左右逆さまに見えるのはなぜか。実は、知らず知らずのうちに行う視点の切り替えが、見え方にかかわっているのだという。

  •  検察官の定年を延長する検察庁法改正案をめぐる論議がかまびすしい。いわく「検察官の中立性、三権分立を損なう」(立憲民主党の枝野幸男代表)、「検察の中立性、独立性を著しく害する」(国民民主党の玉木雄一郎…

  •  作家の田辺聖子さんが91歳で亡くなったのは、昨年6月だった。当時のコラムで、田辺さんが残した箴言(しんげん)をいくつか紹介した。改めて田辺さんの言葉を集めた本を開くと、新型コロナウイルスに振り回され…

  •  自宅でゆっくり活字を追う人が増えたからだろうか。雑誌『正論』のバックナンバー、とりわけ「歴史戦2冊セット」の売れ行きがいいそうだ。韓国で始まった泥仕合が、その歴史戦に影響を与えるかもしれない。

  •  中学生の頃、高木彬光(あきみつ)さんの小説『検事霧島三郎』を読んで、検事にあこがれた。現在のお気に入りは、『検事の本懐』をはじめとする、柚月裕子(ゆづきゆうこ)さんの「佐方貞人(さかたさだと)シリー…

  •  4年前の東京都知事選で圧勝した小池百合子知事が掲げていた公約が、7つのゼロである。その一つが「満員電車ゼロ」だった。実現するためのアイデアとして話題になったのが、2階建て車両の導入である。

  •  大正中期に日本でも猛威を振るったスペイン風邪は、多くの著名人を巻き込んだ。歌人の与謝野晶子もその一人である。11人いた子供のうちの1人が小学校で感染して、家族全員に広がった。

  •  「六歌仙」の一人、在原業平に手紙が届いた。「急用」と称した母からの便りである。封を切ると文章はなく、そこには歌一首のみが書かれていた。〈老いぬればさらぬ別れのありといへば/いよいよ見まくほしき君かな…

  •  政府や安倍さん(晋三首相)批判のためのデマや偏向報道はやめませんか-。危機管理血液内科医の中村幸嗣さんは8日、自身のブログで呼び掛けた。それによると心臓外科医の渋谷泰介さんが7日に、テレビ朝日番組に…

  •  今月12日に生誕200年を迎えるフローレンス・ナイチンゲールといえば、日本では「白衣の天使」のイメージが強い。看護師として名声を得たのは19世紀半ば、クリミア戦争に従軍してからだ。英軍の野戦病院で献…

  •  今月14日は「種痘記念日」である。1796年のこの日に、英国の医学者、エドワード・ジェンナーが行った実験に由来する。当時、死亡率の高い天然痘は悪魔の病気として恐れられていた。ただし酪農の従事者だけは…

  •  本日は「こどもの日」、「端午の節句」である。数日前からスーパーで、この時期盛りを迎える菖蒲(しょうぶ)を見かけるようになった。風呂に入れて菖蒲湯にするためだ。

  •  連続ドラマなどで感動を呼ぶ回を「神回」というのだそう。再放送だが「傑作選」との宣伝文句についまたチャンネルを合わせてしまった。フジテレビ系番組だからではない。長澤まさみさん扮(ふん)する天才詐欺師が…

  •  巨人監督時代の長嶋茂雄さんが、何人かの米大リーグ監督と対談した。監督業の心得とは-。長嶋さんの問いに1人が答えた。先発する9人のうち「監督に従う者は3人、態度未定が3人、反抗する者が3人だ」。

  •  持病の潰瘍性大腸炎の悪化で、安倍晋三首相が第1次政権を手放したのは平成19年9月のことである。安倍首相は、その2年余り後に認可された新薬アサコールが画期的に効き、病は寛解(消失)状態となって復活を果…

  •  獣の一族と鳥の一族が戦争を始めた。「私は全身に毛が生えているから獣です」「私は羽があるから鳥です」。イソップ物語では、コウモリは獣と鳥両方にいい顔をしようとする。コウモリはれっきとした哺乳類である。

  •  レオナルド・ダビンチが残した「レスター手稿」と呼ばれるノートは、世界一高価な本として知られる。やはり世界一の富豪であるビル・ゲイツさんが1994年に約30億円で手に入れた。

  •  桜の花の舞い散る中で入学式が行われるのは日本の伝統、というわけではないらしい。欧米の教育制度を導入した明治のはじめ、9月入学が主流だった。

  •  月刊『Hanada』の編集長、花田紀凱(かずよし)さんも在宅勤務を余儀なくされている。雑誌編集者の仕事は、人との「濃厚接触」なしには成り立たない。時間が余った花田さんは、「1年1作家シリーズ」を再開…

  •  見慣れて違和感を覚えなくなってきた。テレビでもはや当たり前になった、タレントやコメンテーターのリモート出演である。背景には技術の進化があるのかもしれない。多少、音声が遅れることもあるが、ほぼ、無理な…

  •  家でぶらぶらしていると、いや、もとい。在宅勤務にいそしんでいると、ついつい再放送ばかりのテレビを見てしまう。「これが本当のテレワークだ」とつぶやいても、誰も聞いてはくれないが、たまにはためになる番組…

  •  人の死を表す言葉には、多くの婉曲(えんきょく)な言い回しがある。「逝去する」「他界する」「永眠する」「瞑目(めいもく)する」…。病気であれ、災害であれ、事件や事故であれ、新聞記者という仕事柄、人の死…

  •  中国外交について、老獪(ろうかい)だのしたたかだのと高く評価する人がいるのが、ずっと疑問だった。共産党一党独裁の国だから上意下達が徹底しているだけで、実は柔軟性に乏しく墓穴を掘ることも多いのではない…

  •  新聞の紙面は連日、新型コロナウイルス関連のニュースで埋まっている。例外の一つが昨日の都内版の記事だった。昨年、都内で起きた住宅火災の死者は83人に上る。そのうち4割超がたばこの不始末が原因だった。寝…

  •  千葉県鴨川市の公園に、ある医師の弔魂碑が建っている。全国にコレラが蔓延(まんえん)した明治10(1877)年に、この地で殉職した沼野玄昌(ぬまの・げんしょう)である。西洋医学を習得した玄昌は政府から…

  •  通産官僚だった故堺屋太一さんが生まれて初めて書いた小説は、100万部を超えるベストセラーとなった。『油断!』というタイトルもよかった。中東からの石油の輸入がもし途絶えたら、どうなるか。文字通り、油が…

  •  今年1月から2月にかけて開催されたテニスの四大タイトルの一つ、全豪オープンの男子シングルスに優勝したのは、セルビア出身のノバク・ジョコビッチ(32)だった。獲得した優勝賞金は、日本円にして約3億円で…

  •  幕末の思想家、吉田松陰の行動力には、かぶとを脱ぐ。20歳のときに九州に遊学したのを皮切りに、日本全国をひたすら歩き回った。行程をあわせると、1万3千キロにも及ぶ。旅の先々で、学者に教えを請い、多くの…

  •  英単語のつづりには、表記されていても声に出さない文字がある。「knife(ナイフ)」や「knock(ノック)」の頭につく「k」が、代表例としてよく知られている。これを「黙字」と呼ぶそうである。

  •  子曰(のたまわ)く、過ちては改むるにはばかることなかれ。中国・武漢市当局は17日、新型コロナウイルス感染による死者と感染者数を訂正し、これまでの発表より死者は1290人、感染者は325人多かったと明…

  •  酒でも飲まなきゃやってられない。終戦直後の日本には、そんな気分が蔓延(まんえん)していた。といっても、アルコールの絶対量が足りない。闇市には怪しげな密造酒が出回っていた。

  •  日本のプロ野球は、シーズン打率4割を達成した選手をまだ一人も出していない。かつて米大リーグは、4割を超える強打者を何人も輩出してきた。

  •  日本科学未来館の次期館長に決まった浅川智恵子さん(61)が失明したのは、中学2年の時だった。プールでの事故が原因である。

  •  先週82歳で亡くなった映画監督、大林宣彦さんの遺作となった「海辺の映画館-キネマの玉手箱」は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、公開が延期となっている。20年ぶりに故郷の広島県尾道市で撮影された…

  •  同じ車両に乗り合わせた人が隣で急に咳込んだ。気遣うより先にさっと場所を移ったものの、後味の悪さはぬぐえない。緊急事態宣言の出た都下で、電車に揺られる以上はお互いさまである。筆者のくさくさした気分は、…

  •  新型コロナウイルスの感染拡大は、国権の最高機関であり立法機関である国会の機能すら麻痺(まひ)させかねない。憲法56条は「総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない」と定め…

  •  真珠湾攻撃の後、強制収容所に送られた日系米国人は12万人に及ぶ。ハワイ出身の故ダニエル・イノウエ氏は、「敵国人」の汚名をそそぐために、陸軍に志願して欧州戦線で右腕を失う。戦後は下院、上院議員として政…

  •  安倍晋三首相が発令した緊急事態宣言に、海外のメディアは手厳しい。フランス紙フィガロは「現実には見せかけだけ」と決めつける。ロンドンに本社を置くロイター通信は「遅すぎる」と評した。

  •  昭和62年に73歳で亡くなった作家の富士正晴は、「竹林の隠者」と呼ばれていた。大阪府茨木市の小高い丘陵にある竹林の中に住み、ほとんどそこから出ることはなかった。近くのたばこ店に1、2度行ったきりとい…

  •  落語家の林家こん平さんの体に異変が起きたのは、人気番組「笑点」の生放送の直前だった。目まいがしてろれつが回らない。出演をなんとか終えて緊急入院した。

  •  日本の田舎暮らしにあこがれていたC・W・ニコルさんが、長野県信濃町に移住したのは昭和55年である。やがてバブル経済が始まった。天然林が次々に伐採され、産業廃棄物の不法投棄も横行するようになる。

  •  愛情や友情は数の世界にも成り立つらしい。例えば220という数である。

  •  新型コロナウイルスの感染者が、世界全体で100万人を超えた。死者も5万人以上に上るが、収束・終息の見通しは立たない。われわれは今、間違いなく歴史に残る災禍のただ中にいる。にもかかわらず国会の危機意識…

  •  日本人が外出時にマスクをするようになったのは、1910年代に世界中で猛威をふるったスペイン風邪がきっかけである。政府が予防のために着用を呼び掛けたからだ。実は欧米でも奨励されていた。

  •  よりによってこんな時に、と思わないでもない。全世界で急拡大が続く新型コロナウイルスだけでも手いっぱいだというのに、富士山の心配まで加わるとは。政府の中央防災会議作業部会が、先月末に公表した報告書のこ…

  •  新型コロナウイルスの感染者数増加の勢いが、世界中で止まらない。そのなかで、発生源の中国と海を隔てて向かい合っている台湾が、なんとか抑え込みに成功している。その台湾がなぜ、世界保健機関(WHO)に加盟…

  •  お笑いのプロフェッショナルは、実生活では寡黙な人が多い。平成元年にインタビューした志村けんさんも、例外ではなかった。

  •  長い夜を抜けると雪国であった。朝の底が白くなった。本当は、拙宅のある多摩地方で雪が積もりだしたのは夜が明けてからだいぶ経(た)ってのことだが、文豪の名文を拝借したくなるほどの降りっぷりであった。

  •  将棋の実力制第四代名人の升田幸三が、十四世名人の木村義雄と指した。一手の緩みで窮地に立った升田は、盤面でなく木村の息遣いに目を凝らしたという。「息を吐こうとした瞬間に、バシッと駒を打つ。すると木村さ…

  •  新型コロナウイルス克服後の世界情勢は、これまでとは一変していることだろう。「中国のメッキがはがれたのは大きい。しかも被害は、自分たちにも及ぶのだと欧州諸国も理解した」。外務省幹部が指摘するように、中…

  •  国内の労働者の3分の1が失業していた。F・ルーズベルトはそんな大恐慌の最中、米国の大統領に就任した。最初の仕事は、全国の銀行の「休業宣言」である。「友人のみなさん」。1週間後、大統領はラジオを通して…

  •  何度も書いてきたことだが、「従軍慰安婦」は戦後の造語である。慰安婦が従軍記者のように、直接軍の管理下にあったかのような誤解を与えてきた。このいかがわしい呼称が、中学校の歴史教科書で使われるようになっ…

  •  東京都世田谷区にある「駒沢オリンピック公園」は、昭和39(1964)年の東京五輪の第2会場の跡地にできた。「東洋の魔女」と呼ばれたバレーボール女子日本代表チームが、金メダルを獲得した舞台でもある。

  •  男女間の性の深淵を描き続けた作家、吉行淳之介さんの全集(新潮社)の最終巻に、人生のパートナーだった女優の宮城まり子さんに送った13通の手紙が収録されている。書かれたのは、昭和34年11月から翌年1月…

  •  新型コロナウイルスの発生地となった中国湖北省武漢市にある武漢大学は、桜の名所として知られる。キャンパス内の約千本の桜は、もともと1930年代に武漢を占領した旧日本軍により持ち込まれたのが始まりだ。

  •  人が3人寄れば社会が生まれ、人の口が3つ寄れば評判が立つ。「品」という字はよくできている。「しな」と読んでいろいろな物を、「ひん」と読んで物の等級や人柄を表す。物の値打ちも人柄の尊卑も決めるのは他人…

  •  政府は皇位継承順位1位の秋篠宮さまが、自らの立皇嗣(りっこうし)を国の内外に宣明される「立皇嗣の礼」の招待者を減らし、賓客と食事をともにする「宮中饗宴(きょうえん)の儀」は中止することを決めた。肺炎…

  •  地下鉄日比谷線で爆発事故があり、けが人が多数いるらしい。25年前の朝、東京消防庁から聖路加国際病院に入った最初の一報である。まもなく目の痛みや吐き気を訴える患者が、後から後から押し寄せてくる。

  •  黒を白と言いくるめる中国政府の論法に、国際社会は何度も悩まされてきた。さすがにこれは、無理筋というものだ。中国外務省の報道官は先週、新型コロナウイルスについて、「米軍が武漢市に持ち込んだかもしれない…

  •  関西電力の初代社長、太田垣士郎の名を高からしめたのは、黒部川第4発電所、通称黒四の建設である。戦後の関西の電力不足を解決する切り札となった。

  •  「障害者は死んだ方がいい」「ナチス・ドイツの考え方と同じだ」。相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で、職員だった植松聖被告は同僚とこんな会話をかわしたという。植松被告が入所者の男女19人を刺…

  •  ものの数え方はおもしろい。同じ花でも、花びらは「片(へん)」という単位を使って一片、二片と数え、花が開けばおなじみの「輪(りん)」と数える。〈梅一輪一りんほどのあたゝかさ〉。芭蕉門下の人、服部嵐雪の…

  •  路上や書店など至るところで、人々が新型コロナウイルスについてささやき合うのを耳にする。同僚からは「先週末、久しぶりにカミュの『ペスト』を読み返した」と聞いた。中世欧州で人口の3分の1以上の命を奪った…

  •  甲子園の土を最初に持ち帰ったのは誰か。その一人とされるのは、プロ野球巨人の監督として9連覇を成し遂げた川上哲治さんである。昭和12年夏の大会の決勝で敗れた熊本工業のエースだった。グラウンドの土を靴下…

  •  舞台には田舎道に木が一本立っているだけ。2人の浮浪者がゴドーという人物をひたすら待っている。ゴドーの正体は最後まで明かされない。

  •  「『ごめんね』っていうと 『ごめんね』っていう。」東日本大震災をきっかけにして、童謡詩人、金子みすゞの作品のファンになった人も少なくないだろう。9年前の発生直後から、多くの企業がテレビのCMを取りや…

  •  感染の拡大が続く新型コロナウイルスとよく比較されるのは、2002年に中国・広東省で発生し、全世界で700人以上の死者を出した重症急性呼吸器症候群(SARS)である。中国当局による情報隠蔽(いんぺい)…

  •  NHKは嫌いだが、相撲は大好きという身勝手な先輩、同僚が多く、場所中の平日は夕方になるとテレビ前に人が増える。新型コロナウイルス感染防止のため、異例の無観客開催となった大阪・春場所初日の日曜、「テレ…

  •  俗に〈虎の口より人の口恐ろし〉という。こと為政者にとっては、根も葉もない噂であれ、世の中に立つ悪評の市ほど怖いものはない。国の体制によっては「情報」として伝播(でんぱ)する事実でさえ、深刻な脅威にな…

  •  「みんなで力を合わせ、この危機を乗り越えようと論説で書いたところはありますか」。ジャーナリストの櫻井よしこさんは4日のBSフジ番組で、新型コロナウイルス報道の在り方に疑問を投げかけた。全国の小中高校…

  •  バーニー・サンダース米上院議員(78)が、1997年に出した自伝の題名は、『アメリカ下院のはぐれ者(アウトサイダー)』である。81年に行われた東部バーモント州の最大都市バーリントンの市長選が、政治家…

  •  東日本大震災の発生から数日たったころの出来事である。脚本家の内館牧子さんが地震関連のテレビ番組を見ていると、ある高校生のエピソードが紹介されていた。

  •  中東レバノンに逃亡中のカルロス・ゴーン被告が、日産自動車の再建に社長として取り組んでいた時、よく引き合いに出されたのが、米ゼネラル・エレクトリック(GE)のジャック・ウェルチ会長である。人員と部品の…

  •  江戸時代に天下無敵の強さを誇ったのが、二代目谷風梶之助である。通算成績258勝14敗、63連勝も記録している。「わしを土俵で倒すのは無理だから、風邪を引いたときに来い」と豪語したといわれる。ところが…

  •  マスクがいまだに手に入らない。仕事柄テレワーク(在宅勤務)というわけにもいかない。新型コロナウイルスに感染していなくても、通勤電車でせきやくしゃみが出てくることがある。エチケット通りに袖に口を当てて…

  •  汗と涙は、同じ塩の味がする。人が天から授かった味覚の中でも、この苦みほど大事な味はないと思うときがある。〈多くの多くのなやみのあとで、一つ地図がこころに残る/こころに残る私の地図よ、涙の塩の白い地図…

  •  政治家、なかんずくリーダーである首相に求められる第一の資質とは何か。複雑な利害やしがらみが絡み合い、白黒つけ難い問題を果断に処理する決断力だろう。竹下登元首相は就任が決まった際、周囲に漏らした。「5…

  •  斎藤茂吉は生涯で1万7千余の歌を残した。晩年の作品のなかには、思わず噴き出してしまうものも多い。<濃厚の関係にある面相に熱海の道をつれだち歩む>。たとえば戦後まもなく熱海で静養していた折に詠んだ、一…

  •  91歳で亡くなったエジプトの元大統領、ホスニ・ムバラク氏の姿を身近に見る機会が一度だけあった。1997年11月、南部ルクソールの観光地、ハトシェプスト女王葬祭殿で取材中のことだ。イスラム過激派の武装…

  •  「衛生」は、「新聞」や「生活」などとともに、明治時代から使われるようになった。明治8(1875)年に、国民の健康維持をつかさどる部局が内務省に設置される。初代局長となった長与専斎が世に出した。

  •  仁徳天皇も龍馬も泣いている。笑うのは中国か。「新しい歴史教科書をつくる会」が推進する中学校教科書(自由社)が文部科学省の検定で不合格となったことを同会が明らかにした。「生徒に理解しがたい」「誤解する…

  •  比較文化研究者、芳賀徹(はが・とおる)さんの代表作の一つ『絵画の領分』のきっかけとなったのは、恩師の一言だった。旧制高校以来師事する、ドイツ文学者の竹山道雄さんを囲む研究会が、昭和36年の夏、鎌倉で…

  •  相撲興行の起こりは室町時代との説がある。当時は「勧進相撲」と銘打っていた。神社や寺を建てるために寄付を募る、との名目である。これが江戸期になると、幕府から度々禁じられた。浪人が力士に加わり、けんか沙…

  •  小学校の低学年の頃、テレビの西部劇映画で、どう見ても外国人である登場人物たちが流暢(りゅうちょう)な日本語を話すのに感心したのを覚えている。恥ずかしい話だが「吹き替え」を知らず、日本語は世界で通用す…

  •  アガサ・クリスティの『ナイルに死す』をはじめクルーズ船を舞台にしたミステリー作品は数多い。「巨大な密室」が、作家たちの創作意欲を刺激するのだろう。

  •  5年生になってぼくはいじめられるようになり、未来のことだけを考えることにした。1年ごとの自分の目標を手紙に書き、その通りに生きていこうと決めた。

  •  20世紀初頭のニューヨーク。「あやしい余所(よそ)者が来た。冷たくて、人の目に見えず、医者には『肺炎』という名前を付けられる」。画家志望の若い女性が餌食となって、寝たきりとなる。

  •  明治中期から昭和にかけて東京市長などを歴任した後藤新平はもともと医師だった。政治家に転じるきっかけとなったのが、日清戦争である。

  •  きのうの本紙連載漫画「ひなちゃんの日常」ではかわいい主人公が、ちょきちょき、新聞を切り抜いていてうれしくなった。さらに、そこには「憲法改正」の文字が。ひなちゃんのパパならずとも抄子もどう展開するのか…

  •  紅灯の華やかな街で、酔漢同士の取っ組み合いを見たことがある。片方がもう一方の上になり、何かを相手の鼻面に投げつけた。自分の名刺らしい。律義なことに、社名と役職まで名乗ったご仁はさらに畳みかけた。「お…

  •  謝るべきなのは、立憲民主党の辻元清美幹事長代行の方ではないか。安倍晋三首相が12日の衆院予算委員会で辻元氏にヤジを飛ばしたことを口実に、13日の同委を流会させたのは筋が通らない。抄子が天邪鬼(あまの…

  •  若き日の野口英世がペスト菌の横浜上陸を阻止したエピソードを先週紹介した。野口の恩師である北里柴三郎は1894(明治27)年、最初にペストが大流行した香港に赴いて調査研究を行っている。

  •  日本人が外国映画を日本語の字幕で楽しむようになったのは、昭和6年に公開されたマレーネ・ディートリヒの『モロッコ』からである。現在では日本で公開される年間数百本の外国映画は、ほとんどすべて日本語字幕付…

  •  プロ野球界で、野村克也さんほど著書の多い人物はいない。ジャンルは大きく2つに分かれる。1つはもちろん、長い野球人生の経験を生かした本である。スター選手たちのエピソードから、組織論や人生論、今年のNH…

  •  韓国には、「建国記念日」がいくつもある。まず日本統治から解放された1945年8月15日を記念した光復節は、祝日となっている。「光復」は主権を取り戻すという意味だ。

  •  土俵上の力士にとって、独り相撲ほど悲しいものはない。的をめがけて頭からぶつかったはずが、相手にかわされもう止まれない。体は前にのめり、焼けた鉄板の上を渡るように、たたらを踏む場面をよく見かける。

  •  「痛恨の極みだ」。安倍晋三首相は6日、拉致被害者の有本恵子さんの母、嘉代子さんの訃報にこう悼んだ。父の晋太郎元外相の秘書官時代から、嘉代子さんと夫の明弘さんの訴えに耳を傾け拉致問題に取り組んできただ…

  •  ペストといえば、かつてヨーロッパの人口の3分の1に当たる死者を出した恐ろしい病気である。19世紀末にも、香港での大流行をきっかけにして世界に広がった。

  •  明治の美術界の先覚者、岡倉天心は日露戦争の最中、米国に滞在していた。羽織はかま姿で、街を歩いていると、現地の若者が無遠慮に話しかけてきた。

  •  令和元年の出生数は86万4千人で、過去最少を更新した。推計より2年も早く90万人割れとなる衝撃的な数字である。やはり東京オリンピックを翌年にひかえた昭和38(1963)年は、どうだったか。

  •  ドイツ文学者の池内紀(おさむ)さんが、『藤沢周平と豊島園』と題したエッセーを書いている。東京西部の練馬区にある遊園地「としまえん」近くの住宅街を訪ねると、生け垣がめぐらせてあった。その木は、ヒイラギ…

  •  先月29日夜、ブリュッセルの欧州議会に響き渡る歌声のメロディーは、日本人にはなじみ深いものだった。英国北部スコットランドの詩人、ロバート・バーンズが作詞した民謡の「オールド・ラング・サイン」である。

  •  空襲で焼け出された作家の内田百●(ひゃっけん)は戦後、東京の麹町に土地を買った。庭に池をこしらえ、母屋とは別に広さ3畳の離れも建てている。余人がよほど疎ましかったらしい。訪客お断りの歌を詠んで門柱に…

  •  何かと後手に回るのは、戦後日本の宿痾(しゅくあ)である。自民党政務調査会嘱託の田村重信氏の新著『ここが変だよ日本国憲法!』を読み、改めて得心した。田村氏は説く。「いままでの危機管理に関する法律は、実…

  •  医師は手術や診療の前に必ず手を消毒する。この当たり前の処置を最初に提唱したのが、ハンガリーの産科医、イグナーツ・ゼンメルワイスである。19世紀半ばのことだ。当時勤務していたオーストリア・ウィーンの総…

  •  半地下に暮らす全員が失業中のキム一家と、高台の豪邸に住むIT企業社長のパク一家。今話題の韓国映画『パラサイト』は、格差社会をグロテスクに描き出す。善良なパク家は、貧しい人たちの生活に無関心だった。そ…

  •  米プロバスケットボール(NBA)のスーパースター、コービー・ブライアントさんの名前の由来は、よく知られている。元NBAの選手だった父親が、米国内の和風ステーキ店で食べた神戸牛(KOBE BEEF)か…

  •  俳優の加藤雅也さんは、出身地の奈良市の観光特別大使を務めている。日曜日午前中のバラエティー番組に出演して、関西弁で面白おかしく奈良の魅力を語っていた。

  •  給料日の金曜夜、新橋で一杯引っかけ、ちょっと気が大きくなってタクシーに乗った。しばらくして真っ赤っ赤な東京タワーが目に飛び込んできた。あれ!? 酔っ払い過ぎてどこかの国に占領された近未来のTOKYO…

  •  戦場で極限状態に置かれた兵士が取る行動は、砲弾が地面に開けて間もない穴に身を隠すことという。

  •  日韓関係は今、戦後最悪の状態だといわれる。「日韓関係を早く元に戻す必要がある。そのために最大の努力をする」。こう述べる自民党の二階俊博幹事長は今夏、1000人規模の訪韓団を組織する考えだというが、な…

  •  中欧の国チェコの首都プラハは、千年の歴史を持つ古都である。第一次、第二次世界大戦の被害を免れて、古い建築物が多数残り、「ヨーロッパの建築博物館の街」と呼ばれてきた。2年前からこの美しい街の市長である…

  •  ナチスの迫害から逃れて日本にやってきたドイツの建築家、ブルーノ・タウトが秋田県横手市を訪れたのは、昭和11(1936)年の冬だった。真っ白な雪を積み上げたかまくらが立ち並ぶ、幻想的な風景にタウトは魅…

  •  <寒き雨まれまれに降りはやりかぜ衰へぬ長崎の年暮れむとす>。大正8(1919)年、長崎医学専門学校の教授を務めていた斎藤茂吉が詠んだ歌である。

  •  ドイツの文豪ゲーテの小説『若きウェルテルの悩み』は、自らの失恋体験が基になっている。青年ウェルテルは、美しいシャルロッテに恋をするが、彼女は別の男性と結婚する。ウェルテルは自殺する。

  •  4年後から使われる一万円札には、実業家の渋沢栄一の肖像画が採用される。実は昭和38年から61年まで発行された千円札の肖像画を選考する際も、最終候補に残っていた。初代総理大臣の伊藤博文に決まった理由は…

  •  反米の革命政府を九州に打ち立て、日本から独立させる。朝鮮戦争が起こった1950年当時、日本の共産主義者は南進する北朝鮮軍と呼応して、九州の「赤化」を狙っていた(谷口智彦著『日本人のための現代史講義』…

  •  「朋(とも)有り遠方より来る」。亦(また)楽しからずやと続くよく知られた論語の言葉である。とはいえ、これを日本語でツイッターに書き込んだのが11日に再選を果たしたばかりの台湾の蔡英文(さい・えいぶん…

  •  「危機管理」という言葉が、広く認識されるきっかけとなったのは、25年前の今日発生した阪神大震災と直後の地下鉄サリン事件といわれている。震災の当日、貝原俊民・兵庫県知事の登庁は、大幅に遅れた。

  •  米大リーグ、カブスのダルビッシュ有投手にとって、2017年のワールドシリーズの記憶は、悪夢としかいいようがないだろう。当時、ドジャースに所属していたダルビッシュ投手は、アストロズとの第3戦に先発し、…

  •  ドラえもんのひみつ道具の一つに「サイオー馬(ば)」がある。「ろくでもない目にばかりあうのもういやだ」。ドラえもんは、泣きついてきたのび太のために、ポケットから馬のロボットを取り出す。「悪いことやいい…

  •  当初は、整備ミスが原因との見方もあった。1987年11月に大韓航空機がミャンマー近海で爆破された事件である。全員死亡した乗客の大半は、中東での出稼ぎから帰る途中の韓国人労働者だった。

  •  人前で話すのはからきし苦手だが、講演慣れした同僚によると、壇上に立って自分の意見を聞いてもらうのは、とても気持ちのいいものらしい。新聞記者は書くのが仕事だが、なぜか話す方がおもしろい人もいる。秘訣(…

  •  オーストラリアのアボリジニには、ユーカリの森や草原に火を放つ営みがある。「ブッシュファイア」という。落ち葉や下草を焼いた跡は新芽の育ちが促され、動物の餌場となる。そこに寄ってきた獲物を狩り、胃袋に収…

  •  論理が見事に逆立ちしている。立憲民主、国民民主、共産など主要野党は、情報収集強化を目的とする海上自衛隊の護衛艦と哨戒機の中東派遣に反対しているが、その理由を聞いてあぜんとした。米国とイランの軍事的な…

  •  エリザベス英女王は、ラテン語の「アナス・ホリビリス(ひどい年)」という言葉で、1992年を振り返った。この年、週末を過ごすウィンザー城が火災に見舞われ、チャールズ皇太子とダイアナ妃の別居が明らかにな…

  •  イランでは、被害者の視力を奪ったとして有罪判決を受けた犯人に対し、両目を失明させる刑が執行されることがある。「目には目を、歯には歯を」。古代メソポタミアの『ハムラビ法典』に書いてあると、世界史の授業…

  •  江戸時代、幕府は全国53カ所に関所を設けていた。とりわけ取り調べが厳しかったのが、箱根関所である。もっとも抜け穴はあったようだ。歴史家の金森敦子さんによると、「江戸の庶民はドキドキハラハラしながら、…

  •  安保闘争の最中、東京の銀座通りで見た光景を加藤日出男さんは忘れることができなかった。デモ行進のかたわらで、氷店の若い配達員がべそをかいていた。氷が溶けかかっているのに、学生たちは道をあけようとしない…