産経抄産経抄 記事一覧会員向け記事

  •  オランダの船隊がインド洋に浮かぶ無人島に上陸したのは、1598年である。当時の皇太子マウリッツにちなんで名づけられた。モーリシャスとは、その英語表記である。

  •  著者の英文学者、外山滋比古(とやま・しげひこ)さんは、先月末に96歳で亡くなった。追悼の言葉とともに書店に平積みされていた『思考の整理学』(ちくま文庫)は、なんと累計250万部を突破している。

  •  「水をください」とうめく少年の脇を、青年は耳を塞いで通り過ぎた。手持ちの水はあげられない。閃光(せんこう)に倒れた瀕死(ひんし)の兄に飲ませるため-青年は後に、そう振り返っている。長崎で被爆した歌人…

  •  「(新聞は)そろって性悪でもないし、それほど深いたくらみを抱いているわけでもない」。米国の著名なジャーナリスト、リップマンは100年近く前の1922年刊行の著書『世論』でこう説いている。斯界(しかい…

  •  コロナ禍は、福島第1原発事故後の「低線量被ばく問題」と重なる部分がある。東京大学病院准教授の中川恵一さんが、日経新聞のコラムで指摘していた。放射性物質による影響は、予想以上に軽微だった。一方で避難生…

  •  こんな珍妙な出来事をほとんどの新聞はまだ取り上げていない。4日の記者会見での河野太郎防衛相と東京新聞記者とのかみ合わないやりとりである。

  •  上皇さまが譲位の意向を示された際、参考にすべき先行例の一つとなったのが、スペイン王室である。2014年にフアン・カルロス1世が生前退位して、フェリペ6世が王位を継承した。とはいえ日本の皇室とは、まっ…

  •  平成29年の春場所千秋楽。横綱稀勢の里は、横綱日馬富士との取組で肩を強打して左腕がほとんど使えない状態だった。単独トップの大関照ノ富士が、圧倒的に有利である。

  •  「静かに孤独な時間を過ごすことは、人としての強さにもつながると思うのです」。コロナ禍により萎縮を迫られる日々をどう乗り切るか。今年3月、小紙の記者が福島市在住の詩人、和合亮一さんにインタビューして、…

  •  寺内貫太郎は目方が人の倍もある石材店の主人、山盛りのざるを前に言う。

  •  台湾の李登輝元総統は日本にとって、「日台関係の礎を築いた」(安倍晋三首相)特別な存在だった。それとともに、中国と国内親中派の普段は目立たない策動を可視化する探照灯の役割も果たしていた。李氏が退任後、…

  •  世界では毎日、15億人あまりの人々が食事道具として箸を使っているそうだ。伝説によれば、最初に箸を常用したのは、中国最古の王朝、夏(か)の開祖とされる禹(う)だった。食事を早く済まそうと、小枝を折って…

  •  松尾芭蕉が山形県大石田町を訪れたのは、元禄2(1689)年の夏である。当地で詠んだ句は、「五月雨(さみだれ)を集めて涼し最上川」。『おくのほそ道』を編纂(へんさん)する際に「涼し」を「早し」に置き換…

  •  ドラマ『半沢直樹』(TBS系)の第2部が今月から始まった。平成25年に放映された第1部は、「倍返し」の流行語を生むなど人気を呼んだ。とりわけ反響の大きかったのは最終回、半沢の宿敵である大和田による土…

  •  作家で医師の久坂部羊(くさかべ・よう)さんのエッセー『ブラック・ジャックは遠かった』(新潮文庫)は、大阪大学での医学生時代を描いている。ブラック・ジャックとはもちろん、異端の天才外科医を主人公とする…

  •  ダラダラしているうちに4連休が終わってしまった、とお嘆きになっている皆さんも多いのではなかろうか。帝都の女帝サマに「不要不急の外出は控えるように」と命じられ、しぶしぶ従った忠良な都民である抄子もその…

  •  作家の遠藤周作は、言葉に対する美的感覚の鋭い人だった。「ぶざま」「死にざま」という言葉は許しても、「生きざま」が大手を振ることに不快感を隠そうとしなかった。「そんな言葉は美しくないからだ」と。

  •  「新たな専制国家」。ポンペオ米国務長官は23日の演説で中国をこう呼び、習近平国家主席を名指しで非難した。「破綻した全体主義思想を心から信じている」。自由主義陣営が団結し、不倶戴天(ふぐたいてん)の敵…

  •  日の丸をモチーフにした衣装を身に着けたダンサーは、ブラジルの日系移民を表現していた。リオデジャネイロ五輪の開会式が行われた2016年8月5日の夜である。

  •  「一九九九年七の月、空より来るだろう、恐怖の大王が、アンゴルモアの大王を甦(よみがえ)らせる…」。16世紀のフランスの占星術師、ノストラダムスの『予言書』にある有名な四行詩である。宗教研究家の竹下節…

  •  「東北(おくすけ)と関西(にしまえ)では、学生が自分の下駄(げた)ひとつ探すにも風儀が違っている。オクスケは黙って、じっと見て探している…ニシマエの特にせっかちな人と来ると、ろくに探しても見ないで『…

  •  「ヘッヘッヘ…うなとなぞは、あたくしまた久しくあれにはお目にかかりません…ぜひお供を」。たいこもちの一八がウナギをおごってもらうつもりが、反対に勘定を押し付けられる。落語の『鰻(うなぎ)の幇間(たい…

  •  同僚には推理小説(ミステリー)のファンが多い。仕事柄、謎を解く魅力は忘れ難くても、現実には解けない謎が多いからだろうか。そんな同僚から「これは本当に面白い」と薦められた。

  •  「ひふみん」こと将棋の加藤一二三九段が昔日の対局で長考した。序盤も序盤の6手目である。何をそんなに。相手は首を傾(かし)げた。加藤九段、後に真面目な顔で語ったという。「気力が充実するのを待っていた」…

  •  新型コロナウイルス感染拡大に関して、菅義偉(すが・よしひで)官房長官が11日の講演で用いた「東京問題」との言葉は、社会に瞬く間に浸透した。政府が観光支援事業「Go To トラベル」から、東京都発着の…

  •  本日の紙面は将棋の高校生棋士、藤井聡太新棋聖(17)のニュースで持ち切りであろう。なにしろ史上最年少でのタイトル獲得である。ただコラムではあえて「最高齢」を話題にしたい。

  •  16世紀末のロンドンは、ペストが大流行していた。映画「恋におちたシェイクスピア」は、12週間にわたる劇場閉鎖が解除された場面から始まる。

  •  1950年6月25日、北朝鮮の奇襲で朝鮮戦争は始まった。虚をつかれた韓国軍は、ひたすら敗走を続ける。ついには、釜山を要として南北120キロ、東西150キロの地域に立てこもった。いわゆる「釜山円陣」の…

  •  歌壇の大御所である岡井隆さんは、かつて寺山修司さんや塚本邦雄さんらとともに「前衛短歌運動の旗手」と呼ばれていた。前衛短歌は、写実を旨としてきた伝統的な短歌に対して、虚構を持ち込み政治や社会をも大胆に…

  •  雨や風のあるなしは、農村や漁村の暮らし向きを左右した。例えば、三重県には「節の西風、雨でそろ」のことわざがある。「節」は田植えの時期で、その頃に吹く西風は雨をもたらす使者として喜ばれたという。

  •  ジャーナリストの櫻井よしこさんが「異形の大国」と呼ぶ中国に、日本はどう向き合うべきか。8日は自民党外交部会が中国の習近平国家主席の国賓来日中止を求める対中非難決議を、10日には超党派の保守系議員によ…

  •  東京都大田区の1DKのマンションの一室は、出口がソファでふさがれ密室状態だった。3歳の梯稀華(かけはし・のあ)ちゃんは、脱水症状と飢えによって死亡したとみられる。意識が薄れるなかで、脳裏に浮かんだの…

  •  音楽をかけて軽口をたたきながら手術を行う。主人公のジャックは、陽気なエリート外科医だが、患者の気持ちに寄り添うタイプではない。ある日、声帯のがんを宣告され、自分の病院で治療を受けることになる。

  •  利根川の堤防の法面(のりめん)には、春になると黄色い菜の花が見事に咲き誇る。実は治水という面からいえば、大変な厄介者だという。

  •  小池百合子東京都知事(67)の名前が世間に知られるようになるのは、24歳の時である。エジプト大統領夫人の来日が決まり、そのエスコート役に決まったのだ。日本人女性として、初めてカイロ大卒業を果たした、…

  •  肥後熊本藩の初代藩主、加藤清正といえば、朝鮮半島でのトラ退治で知られ、勇猛果敢な武将のイメージが強い。もっとも、肥後に入国してからは、熊本城の築城のほか、領内各地の河川改修や新田開発に情熱を傾けた。…

  •  日清戦争に敗れた中国清朝は、下関条約の中で日本への台湾割譲を約した。その際、交渉の全権を担った李鴻章がこう言い捨てたとされる。「台湾は、鳥語らず、花香らず…瘴癘(しょうれい)(疫病)の地。割くも可な…

  •  民主主義国と、そうでない国との二極化が進行している。「世界がばらばらになっている間隙(かんげき)を縫って、中国が影響力を拡大している」。外務省幹部が語るように、新型コロナウイルス感染症の発生源である…

  •  「ヤー・チャイカ」。ラジオを通じて世界中に流れた。声の主は、世界初の女性宇宙飛行士、ワレンチナ・テレシコワさんである。ソ連の宇宙船、ボストーク6号は、1963年6月16日に打ち上げられた。

  •  養子先の家業を大いに盛り上げ、49歳で隠居して江戸に出た。伊能忠敬(ただたか)が第二の人生で挑んだのは、日本地図の作製である。55歳から17年にわたって全国を測量行脚して、約440種類のいわゆる伊能…

  •  英国統治時代の香港総督は代々外交官出身者が任命されてきた。ところが中国への返還を5年後に控えた1992年、英国はまったく違うタイプの人物を「最後の総督」に選んだ。

  •  作家の向田邦子さんが「勝負服」と題したエッセーを書いている。勝負服とは、競馬の騎手がレースで着用するものだ。締め切りが迫ると猛烈なスピードで原稿をこなす向田さんは、自らを騎手になぞらえていた。

  •  季節柄仕方ないとはいえ、鬱陶しい日々が続く。ことに今年は、いつもの曇り空が、より灰色にみえる。こういうときこそテレワークの出番である。と、書きたいところだが、家に閉じこもっていては一行も書けないのが…

  •  トイレットペーパーのロールを手で押して、形を三角に変えてみる。3分の1回転する度、手にはロールから心地よい振動が伝わってくる。元の形と比べて、紙の使用量は三角形の方が約3割も少なかったという。

  •  マスコミがしばしば使う言い回しに、「~となりそうだ」「~が予想される」の類いがある。事態の推移に関する見通しを示すものだが、自戒を込めていえば臆測や願望にすぎない場合も多い。6日付小欄で取り上げた麻…

  •  「こんにちは」。22歳で中国から来日した時、聞き取れた唯一の日本語だった。それから21年後の平成20年、楊逸(ヤン・イー)さんは芥川賞を受賞する。中国人として、いや日本語を母語としない作家で初めての…

  •  何でも望みをかなえよう。神様が申し出たらどうするか。トランプ米大統領だったら、迷うことなく秋の大統領選での再選を願うだろう。ギリシャ神話のミダス王は、欲にかられてとんでもない褒美を所望した。手の触れ…

  •  ホンダの創業者、本田宗一郎さんが、モータースポーツの最高峰であるF1レースへの参戦を発表したのは、昭和39(1964)年だった。当時のホンダはすでに二輪のレースでは、圧倒的な強さを誇っていた。ただ四…

  •  巻き寿司やバッテラ、マグロの握り…。大皿に盛られた寿司のカラー写真は、いかにも食欲を誘われる。「諸君は孤立され最早(もはや)援護補給の道はない。食料は大方なくなり、日々に餓死の運命に合ふのみである……

  •  書店の参考書コーナーをのぞくと、旺文社の大学受験雑誌「蛍雪時代」が並んでいた。7月号の特集は「合格する人 落ちる人の特徴」というストレートな見出しが目を引き、思わず購入してしまった。

  •  復員した健太郎は、投手としてプロ入りを目指している。入団テストの登板日に、鳴り物を持ち込み応援してもいいか。そう願い出る友人たちを、健太郎はやんわりと制した。「球場は静かな方がいいんです」。井上ひさ…

  •  公選法違反(買収)容疑で前法相夫妻が東京地検特捜部に逮捕されたことで、またぞろ安倍晋三首相の任命責任を問う声が出ているが、抄子はこの宮内庁による人選の方が解せない。兵庫県立大の五百旗頭(いおきべ)真…

  •  昭和の名棋士、藤沢秀行さんといえば、酒、ギャンブル、女性関係なんでもござれの豪快な生き方で知られた。囲碁を通じて政界にも交友関係を広げていた。なかでも親しかったのが、ロッキード事件で田中角栄元首相の…

  •  北朝鮮のいら立ちは一体どこへ向かうのだろう。開城(ケソン)にある南北共同連絡事務所を爆破して、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領による宥和(ゆうわ)政策を踏みにじった。経済協力の象徴だった開城工業…

  •  「竹槍(たけやり)では間に合はぬ 飛行機だ、海洋航空機だ」。昭和19年2月23日の毎日新聞1面に、こんな見出しの記事が載った。筆者は海軍省担当記者の新名丈夫(しんみょう・たけお)である。

  •  米南部の主要都市アトランタは、かつて南北戦争の激戦地となった。マーガレット・ミッチェルによる世界的ベストセラー『風と共に去りぬ』の舞台としても知られる。1939年に公開されたビビアン・リー主演の映画…

  •  神田明神下のけちな長屋に住む岡っ引き-といえば銭形平次である。四文銭を投げつけ、悪人を成敗する捕物帳シリーズは長短383編に及ぶ。その第1作『金色の処女(おとめ)』で平次が放った記念すべき第1投は、…

  •  「人は身体の内でも、外でも、共生と葛藤を繰り返しながら生きている」。作家、上橋菜穂子さんは獣が媒介する謎の感染症との戦いを描いた医療ファンタジー小説『鹿の王』のあとがきに、こう書いている。感染症は根…

  •  織田信長は人生の節目で梅雨に助けられてきた。桶狭間の戦いでは、豪雨に乗じて今川義元を倒した。長篠の一戦で武田勝頼の軍勢を打ち砕いたのは、梅雨の中休みだった。

  •  アルツハイマー病やパーキンソン病など、発見者の名前がついた病気は少なくない。全身の血管に炎症が起こり、主に乳幼児に発生する川崎病もその一つである。もっとも、川崎市の病気との誤解はなかなか解けなかった…

  •  「プッタネスカ」というイタリア料理がある。アンチョビーやオリーブの実などが入ったトマトソースのスパゲティだ。日本語にすると「娼婦(しょうふ)風」。ナポリの娼婦が客をもてなすために作っていた。日本の感…

  •  人類は感染症との戦いの歴史を生きてきた。新型コロナウイルスの大流行で改めて思い知る。東アフリカや中東でのバッタ大発生のニュースを聞くと、「バッタとの戦いの歴史」と言い換えたくなる。

  •  将棋界における数々の「史上初」の記録や「天才」の称号は、ヒューリック杯棋聖戦五番勝負に挑む藤井聡太七段(17)の専売特許ではない。待ち構える渡辺明棋聖(36)もまた、小学生時代から天才の呼び声が高か…

  •  言葉はときに甘い響きを人の胸に残し、ときに残酷な素顔をのぞかせては人を傷つける。「言葉には朝と夜とがある」。作家の寺山修司はこう記し、美しい響きを持つ朝の言葉として「希望」の2文字を賛美した。

  •  日本人が日本の特長を誇ることが、まるで恥ずかしいよくないことのように非難されるのも、戦後の悪弊だろう。麻生太郎財務相は4日の国会で、新型コロナウイルス感染症による死者が、欧米主要国に比べ日本で極端に…

  •  「2012年人類滅亡説」を覚えていらっしゃるだろうか。ハリウッド映画の「2012」では、地震や津波が世界各地を襲った。根拠とされたのは、中米で栄えた古代マヤ文明の暦である。マヤでは精密かつ複雑な暦が…

  •  アフリカ東部のルワンダで26年前に起きた大虐殺では、80万人以上が犠牲になった。少数派民族ツチが、多数派民族フツの民兵組織に襲われたのだ。暴力をエスカレートさせたのは、ラジオの放送だった。

  •  美術家のクリストさんと妻のジャンヌ・クロードさんは、第7回高松宮殿下記念世界文化賞を彫刻部門で受賞している。ただしその作品はすべて消滅させてきた。

  •  マーティン・ルーサー・キング牧師は、人種差別の撤廃を訴え続けた米国の黒人公民権運動の指導者である。「私には夢がある」の名セリフでも知られる。

  •  まあ、しゃあんめい。関西弁で言えば、しゃあない。標準語なら仕方がない。日本ダービーを制したコントレイルは、抄子のような「穴党」(高配当の馬券ばかり買って損をし続けている人々)を完黙させた。

  •  天皇の大臣任命式は歴史が古く、『徒然草』の第百一段にも描かれている。

  •  透き通った青空というキャンバスに、6筋の長い白線が描かれていく-。29日午後1時過ぎ、ふとフェイスブック(FB)を見ると、多くの人が航空自衛隊のアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」の画像を投稿…

  •  父親を殺した少年が警察に追われて、投身自殺を図る。警察は少年を裁判にかけるために、高名な外科医に手術を依頼した。もっとも実際に少年の命を救ったのは、天才外科医、ブラック・ジャックである。

  •  JR東日本やJR西日本が民間会社であることに誰も違和感を覚えない。もっとも、旧国鉄が分割・民営化に至るまでの道のりはすさまじいものだった。

  •  香港で中国の民主化支援の野外コンサートが行われたのは、1989年5月27日だった。約30万人がつめかけた。当時、香港を拠点に歌手活動をしていたテレサ・テンは、テレビの生中継を見ていて、いてもたっても…

  •  女子プロレスラーの木村花さん(22)は、なぜ若い命を散らさなければならなかったのか。インターネット上の一つのコメントに目が留まった。「心が疲労困憊(こんぱい)して、ポキッと折れてしまったのか」。

  •  ページをめくると、微妙な凹凸がある。指先でたどれば、ニャロメやケムンパス、ウナギイヌなど、ギャグ漫画でおなじみのキャラクターの形がわかるようになっている。セリフは点字で意味を読み取る。

  •  あるものに関するクイズを一つ。高価なものは金や七色の石でできており、安価なものは1円の値打ちもない。『三国志』では、賊の手に落ちないよう都の女官がこれを抱いて井戸に身を投げ、後に呉の孫堅がこれを拾っ…

  •  韓国の慰安婦支援団体といえば、いつの間にか国家的英雄視されるようになった元慰安婦の威光を背に、半ば聖域のように扱われてきた。世論を動かす影響力は大きく、「日韓外交に関して事実上の拒否権を持っている」…

  •  2年前に直木賞候補となった『傍流の記者』(新潮社)は、全国紙の社会部が舞台になっている。いわゆる「夜討ち朝駆け」やスクープ合戦など、記者の実態がリアルに描かれている。著者の本城雅人さんは、小紙とサン…

  •  <久方のアメリカ人のはじめにしベースボールは見れど飽かぬかも>。作者の正岡子規は、大の野球好きだった。幼名の升(のぼる)にちなみ「野球(のぼーる)」を雅号にしたほどだ。もっとも、ベースボールを野球と…

  •  世界保健機関(WHO)は、1948年に米国と英国の主導により設立された。もっとも、世界的な組織をめざす米国に対して、英国は敗戦国の加盟に慎重だった。冷戦期に入ると、ソ連グループと他の連合国との立場の…

  •  中国文学者、井波律子さんの訃報が届いた。コラムのネタに困るたびに手に取ったのが、井波さんの著作である。中国の長い歴史は、英雄から大悪人まで多彩な人物を生み出してきた。井波さんは、彼らが残したエピソー…

  •  NHKに厳しい目は向けても、大河ドラマと朝ドラは楽しみという方は多いだろう。「麒麟がくる」と「エール」の一時休止が発表された。“中止”かと早合点した同僚、上司からは「濃姫(帰蝶)役の女優は気に入って…

  •  左手にはめた腕時計を、鏡の向こうの自分は右手にはめている。鏡に映った自分の姿が、左右逆さまに見えるのはなぜか。実は、知らず知らずのうちに行う視点の切り替えが、見え方にかかわっているのだという。

  •  検察官の定年を延長する検察庁法改正案をめぐる論議がかまびすしい。いわく「検察官の中立性、三権分立を損なう」(立憲民主党の枝野幸男代表)、「検察の中立性、独立性を著しく害する」(国民民主党の玉木雄一郎…

  •  作家の田辺聖子さんが91歳で亡くなったのは、昨年6月だった。当時のコラムで、田辺さんが残した箴言(しんげん)をいくつか紹介した。改めて田辺さんの言葉を集めた本を開くと、新型コロナウイルスに振り回され…

  •  自宅でゆっくり活字を追う人が増えたからだろうか。雑誌『正論』のバックナンバー、とりわけ「歴史戦2冊セット」の売れ行きがいいそうだ。韓国で始まった泥仕合が、その歴史戦に影響を与えるかもしれない。

  •  中学生の頃、高木彬光(あきみつ)さんの小説『検事霧島三郎』を読んで、検事にあこがれた。現在のお気に入りは、『検事の本懐』をはじめとする、柚月裕子(ゆづきゆうこ)さんの「佐方貞人(さかたさだと)シリー…

  •  4年前の東京都知事選で圧勝した小池百合子知事が掲げていた公約が、7つのゼロである。その一つが「満員電車ゼロ」だった。実現するためのアイデアとして話題になったのが、2階建て車両の導入である。

  •  大正中期に日本でも猛威を振るったスペイン風邪は、多くの著名人を巻き込んだ。歌人の与謝野晶子もその一人である。11人いた子供のうちの1人が小学校で感染して、家族全員に広がった。

  •  「六歌仙」の一人、在原業平に手紙が届いた。「急用」と称した母からの便りである。封を切ると文章はなく、そこには歌一首のみが書かれていた。〈老いぬればさらぬ別れのありといへば/いよいよ見まくほしき君かな…

  •  政府や安倍さん(晋三首相)批判のためのデマや偏向報道はやめませんか-。危機管理血液内科医の中村幸嗣さんは8日、自身のブログで呼び掛けた。それによると心臓外科医の渋谷泰介さんが7日に、テレビ朝日番組に…

  •  今月12日に生誕200年を迎えるフローレンス・ナイチンゲールといえば、日本では「白衣の天使」のイメージが強い。看護師として名声を得たのは19世紀半ば、クリミア戦争に従軍してからだ。英軍の野戦病院で献…

  •  今月14日は「種痘記念日」である。1796年のこの日に、英国の医学者、エドワード・ジェンナーが行った実験に由来する。当時、死亡率の高い天然痘は悪魔の病気として恐れられていた。ただし酪農の従事者だけは…

  •  本日は「こどもの日」、「端午の節句」である。数日前からスーパーで、この時期盛りを迎える菖蒲(しょうぶ)を見かけるようになった。風呂に入れて菖蒲湯にするためだ。

  •  連続ドラマなどで感動を呼ぶ回を「神回」というのだそう。再放送だが「傑作選」との宣伝文句についまたチャンネルを合わせてしまった。フジテレビ系番組だからではない。長澤まさみさん扮(ふん)する天才詐欺師が…

  •  巨人監督時代の長嶋茂雄さんが、何人かの米大リーグ監督と対談した。監督業の心得とは-。長嶋さんの問いに1人が答えた。先発する9人のうち「監督に従う者は3人、態度未定が3人、反抗する者が3人だ」。

  •  持病の潰瘍性大腸炎の悪化で、安倍晋三首相が第1次政権を手放したのは平成19年9月のことである。安倍首相は、その2年余り後に認可された新薬アサコールが画期的に効き、病は寛解(消失)状態となって復活を果…

  •  獣の一族と鳥の一族が戦争を始めた。「私は全身に毛が生えているから獣です」「私は羽があるから鳥です」。イソップ物語では、コウモリは獣と鳥両方にいい顔をしようとする。コウモリはれっきとした哺乳類である。

  •  レオナルド・ダビンチが残した「レスター手稿」と呼ばれるノートは、世界一高価な本として知られる。やはり世界一の富豪であるビル・ゲイツさんが1994年に約30億円で手に入れた。

  •  桜の花の舞い散る中で入学式が行われるのは日本の伝統、というわけではないらしい。欧米の教育制度を導入した明治のはじめ、9月入学が主流だった。

  •  月刊『Hanada』の編集長、花田紀凱(かずよし)さんも在宅勤務を余儀なくされている。雑誌編集者の仕事は、人との「濃厚接触」なしには成り立たない。時間が余った花田さんは、「1年1作家シリーズ」を再開…

  •  見慣れて違和感を覚えなくなってきた。テレビでもはや当たり前になった、タレントやコメンテーターのリモート出演である。背景には技術の進化があるのかもしれない。多少、音声が遅れることもあるが、ほぼ、無理な…

  •  家でぶらぶらしていると、いや、もとい。在宅勤務にいそしんでいると、ついつい再放送ばかりのテレビを見てしまう。「これが本当のテレワークだ」とつぶやいても、誰も聞いてはくれないが、たまにはためになる番組…

  •  人の死を表す言葉には、多くの婉曲(えんきょく)な言い回しがある。「逝去する」「他界する」「永眠する」「瞑目(めいもく)する」…。病気であれ、災害であれ、事件や事故であれ、新聞記者という仕事柄、人の死…

  •  中国外交について、老獪(ろうかい)だのしたたかだのと高く評価する人がいるのが、ずっと疑問だった。共産党一党独裁の国だから上意下達が徹底しているだけで、実は柔軟性に乏しく墓穴を掘ることも多いのではない…

  •  新聞の紙面は連日、新型コロナウイルス関連のニュースで埋まっている。例外の一つが昨日の都内版の記事だった。昨年、都内で起きた住宅火災の死者は83人に上る。そのうち4割超がたばこの不始末が原因だった。寝…

  •  千葉県鴨川市の公園に、ある医師の弔魂碑が建っている。全国にコレラが蔓延(まんえん)した明治10(1877)年に、この地で殉職した沼野玄昌(ぬまの・げんしょう)である。西洋医学を習得した玄昌は政府から…

  •  通産官僚だった故堺屋太一さんが生まれて初めて書いた小説は、100万部を超えるベストセラーとなった。『油断!』というタイトルもよかった。中東からの石油の輸入がもし途絶えたら、どうなるか。文字通り、油が…

  •  今年1月から2月にかけて開催されたテニスの四大タイトルの一つ、全豪オープンの男子シングルスに優勝したのは、セルビア出身のノバク・ジョコビッチ(32)だった。獲得した優勝賞金は、日本円にして約3億円で…

  •  幕末の思想家、吉田松陰の行動力には、かぶとを脱ぐ。20歳のときに九州に遊学したのを皮切りに、日本全国をひたすら歩き回った。行程をあわせると、1万3千キロにも及ぶ。旅の先々で、学者に教えを請い、多くの…

  •  英単語のつづりには、表記されていても声に出さない文字がある。「knife(ナイフ)」や「knock(ノック)」の頭につく「k」が、代表例としてよく知られている。これを「黙字」と呼ぶそうである。

  •  子曰(のたまわ)く、過ちては改むるにはばかることなかれ。中国・武漢市当局は17日、新型コロナウイルス感染による死者と感染者数を訂正し、これまでの発表より死者は1290人、感染者は325人多かったと明…

  •  酒でも飲まなきゃやってられない。終戦直後の日本には、そんな気分が蔓延(まんえん)していた。といっても、アルコールの絶対量が足りない。闇市には怪しげな密造酒が出回っていた。

  •  日本のプロ野球は、シーズン打率4割を達成した選手をまだ一人も出していない。かつて米大リーグは、4割を超える強打者を何人も輩出してきた。

  •  日本科学未来館の次期館長に決まった浅川智恵子さん(61)が失明したのは、中学2年の時だった。プールでの事故が原因である。

  •  先週82歳で亡くなった映画監督、大林宣彦さんの遺作となった「海辺の映画館-キネマの玉手箱」は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、公開が延期となっている。20年ぶりに故郷の広島県尾道市で撮影された…

  •  同じ車両に乗り合わせた人が隣で急に咳込んだ。気遣うより先にさっと場所を移ったものの、後味の悪さはぬぐえない。緊急事態宣言の出た都下で、電車に揺られる以上はお互いさまである。筆者のくさくさした気分は、…

  •  新型コロナウイルスの感染拡大は、国権の最高機関であり立法機関である国会の機能すら麻痺(まひ)させかねない。憲法56条は「総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない」と定め…

  •  真珠湾攻撃の後、強制収容所に送られた日系米国人は12万人に及ぶ。ハワイ出身の故ダニエル・イノウエ氏は、「敵国人」の汚名をそそぐために、陸軍に志願して欧州戦線で右腕を失う。戦後は下院、上院議員として政…

  •  安倍晋三首相が発令した緊急事態宣言に、海外のメディアは手厳しい。フランス紙フィガロは「現実には見せかけだけ」と決めつける。ロンドンに本社を置くロイター通信は「遅すぎる」と評した。

  •  昭和62年に73歳で亡くなった作家の富士正晴は、「竹林の隠者」と呼ばれていた。大阪府茨木市の小高い丘陵にある竹林の中に住み、ほとんどそこから出ることはなかった。近くのたばこ店に1、2度行ったきりとい…

  •  落語家の林家こん平さんの体に異変が起きたのは、人気番組「笑点」の生放送の直前だった。目まいがしてろれつが回らない。出演をなんとか終えて緊急入院した。

  •  日本の田舎暮らしにあこがれていたC・W・ニコルさんが、長野県信濃町に移住したのは昭和55年である。やがてバブル経済が始まった。天然林が次々に伐採され、産業廃棄物の不法投棄も横行するようになる。

  •  愛情や友情は数の世界にも成り立つらしい。例えば220という数である。

  •  新型コロナウイルスの感染者が、世界全体で100万人を超えた。死者も5万人以上に上るが、収束・終息の見通しは立たない。われわれは今、間違いなく歴史に残る災禍のただ中にいる。にもかかわらず国会の危機意識…

  •  日本人が外出時にマスクをするようになったのは、1910年代に世界中で猛威をふるったスペイン風邪がきっかけである。政府が予防のために着用を呼び掛けたからだ。実は欧米でも奨励されていた。

  •  よりによってこんな時に、と思わないでもない。全世界で急拡大が続く新型コロナウイルスだけでも手いっぱいだというのに、富士山の心配まで加わるとは。政府の中央防災会議作業部会が、先月末に公表した報告書のこ…

  •  新型コロナウイルスの感染者数増加の勢いが、世界中で止まらない。そのなかで、発生源の中国と海を隔てて向かい合っている台湾が、なんとか抑え込みに成功している。その台湾がなぜ、世界保健機関(WHO)に加盟…

  •  お笑いのプロフェッショナルは、実生活では寡黙な人が多い。平成元年にインタビューした志村けんさんも、例外ではなかった。

  •  長い夜を抜けると雪国であった。朝の底が白くなった。本当は、拙宅のある多摩地方で雪が積もりだしたのは夜が明けてからだいぶ経(た)ってのことだが、文豪の名文を拝借したくなるほどの降りっぷりであった。

  •  将棋の実力制第四代名人の升田幸三が、十四世名人の木村義雄と指した。一手の緩みで窮地に立った升田は、盤面でなく木村の息遣いに目を凝らしたという。「息を吐こうとした瞬間に、バシッと駒を打つ。すると木村さ…

  •  新型コロナウイルス克服後の世界情勢は、これまでとは一変していることだろう。「中国のメッキがはがれたのは大きい。しかも被害は、自分たちにも及ぶのだと欧州諸国も理解した」。外務省幹部が指摘するように、中…

  •  国内の労働者の3分の1が失業していた。F・ルーズベルトはそんな大恐慌の最中、米国の大統領に就任した。最初の仕事は、全国の銀行の「休業宣言」である。「友人のみなさん」。1週間後、大統領はラジオを通して…

  •  何度も書いてきたことだが、「従軍慰安婦」は戦後の造語である。慰安婦が従軍記者のように、直接軍の管理下にあったかのような誤解を与えてきた。このいかがわしい呼称が、中学校の歴史教科書で使われるようになっ…

  •  東京都世田谷区にある「駒沢オリンピック公園」は、昭和39(1964)年の東京五輪の第2会場の跡地にできた。「東洋の魔女」と呼ばれたバレーボール女子日本代表チームが、金メダルを獲得した舞台でもある。

  •  男女間の性の深淵を描き続けた作家、吉行淳之介さんの全集(新潮社)の最終巻に、人生のパートナーだった女優の宮城まり子さんに送った13通の手紙が収録されている。書かれたのは、昭和34年11月から翌年1月…

  •  新型コロナウイルスの発生地となった中国湖北省武漢市にある武漢大学は、桜の名所として知られる。キャンパス内の約千本の桜は、もともと1930年代に武漢を占領した旧日本軍により持ち込まれたのが始まりだ。

  •  人が3人寄れば社会が生まれ、人の口が3つ寄れば評判が立つ。「品」という字はよくできている。「しな」と読んでいろいろな物を、「ひん」と読んで物の等級や人柄を表す。物の値打ちも人柄の尊卑も決めるのは他人…

  •  政府は皇位継承順位1位の秋篠宮さまが、自らの立皇嗣(りっこうし)を国の内外に宣明される「立皇嗣の礼」の招待者を減らし、賓客と食事をともにする「宮中饗宴(きょうえん)の儀」は中止することを決めた。肺炎…

  •  地下鉄日比谷線で爆発事故があり、けが人が多数いるらしい。25年前の朝、東京消防庁から聖路加国際病院に入った最初の一報である。まもなく目の痛みや吐き気を訴える患者が、後から後から押し寄せてくる。

  •  黒を白と言いくるめる中国政府の論法に、国際社会は何度も悩まされてきた。さすがにこれは、無理筋というものだ。中国外務省の報道官は先週、新型コロナウイルスについて、「米軍が武漢市に持ち込んだかもしれない…

  •  関西電力の初代社長、太田垣士郎の名を高からしめたのは、黒部川第4発電所、通称黒四の建設である。戦後の関西の電力不足を解決する切り札となった。

  •  「障害者は死んだ方がいい」「ナチス・ドイツの考え方と同じだ」。相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で、職員だった植松聖被告は同僚とこんな会話をかわしたという。植松被告が入所者の男女19人を刺…

  •  ものの数え方はおもしろい。同じ花でも、花びらは「片(へん)」という単位を使って一片、二片と数え、花が開けばおなじみの「輪(りん)」と数える。〈梅一輪一りんほどのあたゝかさ〉。芭蕉門下の人、服部嵐雪の…

  •  路上や書店など至るところで、人々が新型コロナウイルスについてささやき合うのを耳にする。同僚からは「先週末、久しぶりにカミュの『ペスト』を読み返した」と聞いた。中世欧州で人口の3分の1以上の命を奪った…

  •  甲子園の土を最初に持ち帰ったのは誰か。その一人とされるのは、プロ野球巨人の監督として9連覇を成し遂げた川上哲治さんである。昭和12年夏の大会の決勝で敗れた熊本工業のエースだった。グラウンドの土を靴下…

  •  舞台には田舎道に木が一本立っているだけ。2人の浮浪者がゴドーという人物をひたすら待っている。ゴドーの正体は最後まで明かされない。

  •  「『ごめんね』っていうと 『ごめんね』っていう。」東日本大震災をきっかけにして、童謡詩人、金子みすゞの作品のファンになった人も少なくないだろう。9年前の発生直後から、多くの企業がテレビのCMを取りや…